名画座マイト館

 禁酒時代のシカゴ。
 サックス演奏者のジョー(トニー・カーチス)とベース演奏者のジュリー(ジャック・レモン)は新しい仕事場に行くために車を借りるためにガレージを訪れていた。すると、そこでギャングの大ボス、スッパツ・コロンボ(ジョージ・ラフト)が仲間を引きれて、殺人を行っている場に遭遇してしまうのであった。
 顔を見られたジョーとジュリーはスッパツから逃げるために、女装をし女性だけの楽団に潜りこんでシカゴを逃げるのであった。

 マイアミに向かう途中、ジョーとジュリーは楽団のヴォーカル兼ウクレレ演奏者のシュガー(マリリン・モンロー)と仲良くなるのであった。
 シュガーはサックス演奏者と六回の恋愛をしひどいふられ方をし、金持ちと結婚するのを狙っていた。
 ジョーは男であるのを言えないのと、シュガーがサックス演奏者嫌いということで、彼女になかなか告白ができなかった。

 しかし、マイアミに着いたら、ジョーは女装を解き男装をし、金持ちと偽ってシュガーの気を引くことに成功するのであった。
 一方のジュリーは大金持ちの御曹司オスグッド3世(ジョージ・E・ブラウン)に惚れられ求婚をされるのであった。

 ところがマイアミに、ギャングの集会でスッパツが現れるのであった。そして、ジョーとジュリーは正体がばれるのであった。
 二人は逃げることにした。でも、ジョーはシュガーを諦めない気持ちがあり、彼女に正体をばらして別れるのであった。
 そして、二人はスッパツ達から逃げるのであった。そして、その後をシュガーが追いかけてくるのであった。



 しゃれたセンスのコメディを撮るビリー・ワイルダー監督の作品である。
 男が女装をし恋をするという奇妙奇天烈な設定が、実にコメディ映画として成功させている。
 男性であるため女性の中に入ったら、性的な食い違いが起きたり、好きな女性を口説けない姿、そして金持ちという理由で求婚されてしまったりと、女性になったことで起きてくる笑いが上手くできている。

 また、マイアミのホテルでのエレベーターを上手く使ったギャグがあったりと、こうゆう正統なギャグでも上手く笑いを入れているのはビリー・ワイルダー監督のコメディのセンスの良さを感じられる。

 そして、カーチスとレモンがマイアミでギャングに追われ始まるところからラストまでのテンポの良さはクライマックスのテンションを綺麗に盛り上げて、観ていて気持ち良さを感じるのであった。

 この映画、ジャック・レモンが脇役なので、実にのびのびとした演技と笑いで楽しませてくれている。
 オスグッドとのダンスのシーンでのやけくそまみれのダンス、彼に求婚されて金があまりにも頭の中で大きく占めているために女装をしているのを忘れ喜ぶ姿。そのくせ、ラスト近くでオスグッド迫られて困っている姿。
 これらが実に印象深く、かつ笑いを起こしている。それは本来はトニー・カーチスとマリリン・モンローの恋の行方でひきつけなければならいのに、その印象を薄くしてしまっているほどである。
 それで、レモンとオスグッドのダンスシーンは、トニーとモンローの清らかなラブシーンを交互の編集で見せられ、その二組の姿が対立でさらにおかしさを強くしていた。

 ただ、モンローに関しては、いつもセクシー演技やメイクを控えめにして、幼さがあるかわいい女性で演技をしているところがいい。
 セクシーさの印象があるモンローだが、それがないことでとても違った印象を持つことができた。
 そして、マイアミに向かう電車の中で歌って踊るところも、ノリノリでいい衝動で動いているのがわかり、そのシーンを活き活きさせているのも忘れられない。

 ノリノリの印象のある映画であるが、冒頭のギャングと警察の追跡シーンの緊迫感、ガレージでの殺人シーンの迫力。
 これらはギャング映画としても成立できるものがあった。これができるのも、エンターティナーの才能豊かなワイルダー監督の力である。

 ちなみに、この映画、当初はカラー映画で作られる予定であったが、カーチスとレモンのメイクがあまりにもケバ過ぎたので、白黒に変更された。
 正直、白黒でもゲバ過ぎるくらいであったので、白黒にして正解であった。