名画座マイト館
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 ショーケン、深作欣二監督という豪華なコンビによるアクション映画の傑作。



 神崎(萩原健一)、村井(石橋蓮司)、紫(千葉真一<現・JJサニー千葉>)の三人は世間を騒がせた銀行ギャングであった。
 しかし、その三人も、神崎は愛人の美里(多岐川裕美)を流産させ、柴は北海道に30歳年下の麻衣(荻野目慶子)と優雅に暮らし、村井に至っては妻(樹希樹林)がいて過去の事件の罪悪感で精神を患い精神病院で暮らす、冴えない生活をしていた。
 しかし、柴から仕事の話を持ち込まれた神崎は村井と美里を連れて北海道に行くのであった。

 柴は麻衣が通っているディスクのマネージャ角町(木村一八)から洞爺湖の高級ホテルが売上金の二億円を輸送している情報を得て、その強奪の計画を持ちかけたのであった。
 神崎は角町のガキっぽさが気に入らなかったが仕事を引き受けるのであった。そして、三人の連携プレイの上手さで売上金強奪は成功するのであった。
 しかし、ジュラルミンケースに入っていたのは五千万円であった。

 借金で苦しむ村井が銃を神崎らに向け一人占めにしよとするが、神崎らに説得されて落ち着く。しかし、自分の子飼いのバンドをメジャーデビューさせるためのライブハウスを作りたがっている角町が銃をぶっぱし金を持ちさるのであった。
 それで村井は死に、柴は重症をおい、神崎もケガをするのであった。

 角町は麻衣の所に行く。実は角町と麻衣は最初から組んでいたのであった。最初は麻衣を殺して独り占めにするつもりだった角町だが、麻衣は神崎から話を聞いていたので逆に角町から金を盗むのであった。

 一方、神崎は角町の建設中のライブハウスに行き、闇金融の金井(八名信夫)から金を借りているの聞き、金井の所に行く。しかし、角町は現れておらず、金井に金には手を出すなと脅し去っていく。その時、何か不気味な雰囲気を持つ野地(原田芳雄)と出会うのであった。

 一度、角町から逃げた麻衣だが気が変わって角町と組むことにする。そして、二人は神崎を誘い出し襲撃をするのであった。神崎は必死で逃げ海に飛び込み命びろいをするのであった。
 アジトに戻った神崎は柴の死をしり、角町らへの復讐の火を燃やすのであった。

 角町のライブハウスがオープンする日が来た。神崎は爆弾をしかる。それは宣戦布告でもあった。
 ハウスの近くまで来ていた角町はすぐに逃げるが神崎をそれを見つけすぐに追う。また、襲撃のことを知った金井と野地も追う。
 激しい追跡線。そして、狂ったように撃つまくる角町、死神のように襲ってくる野地と神崎は銃撃戦を行い、それはまさに地獄の絵のようであった。
 その中、野地の銃で麻衣は撃たれて死に、その野地は角町に撃たれるのであった。

 そして、神崎と角町の二人っきりとなった。二人はお互いを認め合いが、次の瞬間、ナイフで斬り合いをはじめる。一瞬の隙で神崎が勝つ。
 しかし、神崎は警察陣に包囲されていた。神崎は車を走らせ海に飛び込むのであった。



 『仁義なき戦い』で日本映画の巨匠になった深作欣二監督であったが、実は本格的なギャング映画を撮るのが目標であった。
 彼の初期のギャング映画は、そのための序章であった。しかし、所属していた東映がやくざ映画の方向にいき、その間に撮った映画が当らなかったため、監督させてもらう機会が減り、その鬱憤で非仁侠映画である『人斬り与太』シリーズ、『仁義なき戦い』がヒットしたため、ますます本格的アクション映画を撮る機会を遠くしてしまっていた。

 それだけに、この映画にかける深作監督の意気込みはそんじょそこらの監督とは全然違ったものであった。
 正直、話自体はB級アクションの筋である。でも、深作監督はパワフルな演出でA級アクション映画にまで引き上げたのであった。

 銃撃シーンは一切の油断が許されないほどの緊迫感と迫力。カーチェースも西部警察も真っ青になるくらいの激しさ。
 もう殺し合いをしている人間達にとって修羅場となっている。それくらい、アクションシーンが激しくのである。
 それが観ている方にも興奮させて、観ていることすら一瞬の隙を作らせないくらいのである。
 特に修学旅行生達が乗っているバスの所は第三者を交えているだけに余計地獄図的になっているのである。

 この時、深作欣二監督、歳は62。どうして、そんなご高齢でこんて激しいテンションの映画が作れるのか不思議である。しかも、このおじいちゃん(敢えて使わせていただきます)この八年後、自分の曾孫ぐらいの年齢の子供達と『仁義なき戦い』並みの激しさのあるアクション映画『バトルロワイアル』を撮るから、また凄いのである。

 また、この映画ではショーケンのような大人達の心情を描いているが、木村一八らの心情も理解をして、ただのガキの行動にしていないのがいい。
 木村の役はロック好きという設定もあるのだろうが、まさに木村と荻野目の行動はロックである。木村が金、命、女を得ようとするのも、荻野目が孤独な自分を捨てようと狂うのも、まさにロックなのである。

 だからといって、ショーケンの方が浪花節だとか、演歌の世界と言うわけではない。
 ショーケンは好きな女に子供を流産させ人並みの幸せを捨て、仕事に対してはハードさをギラギラさせる。そして、角町へは復讐のための狂気になる姿の強烈さ。
 特にショーケンは角町のライブハウスを爆発させた時の騒ぎの中、平然と立ち去る姿は事件を起こした人間ならこうするだろうというリアルさが漂いすぎていた。
 深作監督のパワフルさも凄いがショーケンのパワフルさも負けてはいない。おっさんであるが、長い間、修羅場で生きてきた人間が持つ狂気さ、おっさんなりに持つエネルギッシュさはピカレスクヒーローが待つ魅力を強く見せてくれたのである。

 そう、ショーケンの役も心魂はロックなのである。だから、この映画の主題歌がショーケンの『ラストダンスは私に』なのも当然なのである。

 そして、この映画の最大の魅力は、ショーケンと原田芳雄が本格的に共演している所である。よく考えれば、この二大狂気俳優、共演していそうでしていないのである。
 だから、二人が始めて出会い、見つめあうシーンは何が起きるのが当然と言う、緊張感が漂っていた。
 そして、案の定、原田がショーケンと木村の戦いに加わった時、もうターミネーターかと思わせるくらいに、二人を追い詰めていく。
 その上、深作監督は原田に爆走しているバスに捕まらせて乗せるというアクションをノースタントさせている。どうみても、この時の原田の年齢ではギリギリだろと思ってしまう。
 しかし、原田はそれをやったのである。いかにショーケンに負けたくないという役者根性が見せ付けられてしまった。

 この映画の製作当時はバブルが崩壊し、またアクション映画の撮影規制が強くなりだし、アクション映画が撮れにくくなってきて、もう作れないと思われる風潮があった。
 しかし、この映画のラストシーンで次々に銀行の看板が映されていく。それは何だかんだといっても、金はある所にはあり、それはギャング映画しいては、アクション映画はまだまだ作られ、神崎のような暴れられる場所は用意されているというのを感じるものがあった。

 それは深作監督をはじめ、日本映画界のアクション映画への意気込みでもあったのだ。


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