名画座マイト館


 東映ポルノの女王、池玲子の主演第二作作品。



 東京の聖南女子学園に在籍している尾野寺由紀(池玲子)は寮の先輩の先輩(杉本美樹)とレズ関係を持っていた。
 由紀には、京都でバーを経営する母絹枝(三原葉子)の淫放蕩な血が流れ、それは男子と会うことがない女子学園であるため同姓にそれを求めてしまっていた。

 由紀は学園の休みを利用して、絹枝の元に帰ってくる。絹枝はプロボウラーである安川(藤木孝)を情夫にしていた。しかし、ある夜、由紀は安川に犯されてしまうのであった。
 由紀だけはまともな生活をさせたいと望んでいた絹枝は怒り、安川の腕をナイフで刺してします。

 このことから、由紀は学校を辞め東京のゴーゴー喫茶で踊る生活をする。そこでチンピラに絡まれた由紀を、やくざ組織の幹部大場(小池朝雄)に助けられる。それから、由紀は大場と一緒に暮らすようになり、彼の口利きで高級クラブで働くのであった。

 しかし、大場が組の抗争でケガをしてしまい、それが原因で性的不能となってしまい、由紀にはつらい夜が続いてしまい、大場と別れるのであった。
 由紀は高級クラブで出会った梶村仁(小島慶四郎)の愛人となるのであった。しかし、梶村とのセックスも満足することができず由紀は彼の元を逃げ出すのであった。

 由紀は気が付けば大場の元に戻っていた。梶村は大場に脅されたので、大場がかっていた組に助けを求めるのであった。大場はかっての弟分(川谷拓三、志賀勝)と乱闘となり、殺されてしまうのであった。

 由紀は命からがら逃げ出し、若手建築家本間洋一郎(宮内洋)の車に逃げ込むのであった。由紀はひどく酔ってもいたので洋一郎の家に泊まっていく。
 何も手を出さなかった洋一郎のやさしさに由紀は惚れるのであった。

 そんな時、絹枝が上京し戸間口(北村英三)のパトロンとなって、銀座で店を出していた。そんな由紀に戸間口のバックである金融業の松村権一郎(遠藤辰雄<現・遠藤多津郎>)は惚れてしまい、何とか物にしようとするのであった。

 洋一郎のことが忘れられない由紀は彼が京都にいることを知って追いかけていく。しかし、そこには洋一郎がフランス留学中に恋に落ちたサンドラ(サンドラ・ジュリアン)が来ていた。
 最初は恋の火花を散らす二人であったが、体を交わしあったことでお互いを許すようになり、サンドラは洋一郎のことを諦め、フランスに帰るのであった。

 洋一郎は由紀との結婚を決意する。それを父に報告に行く。彼の父は権一郎であった。由紀を欲する権一郎は二人の結婚に反対をするのであった。
 しかも、権一郎は由紀を自分の物にするために、娘婿の明人(渡辺文雄)と戸間口を使い由紀を犯してしまうのであった。その上、絹枝も彼らの手によって殺される。

 母への復讐を誓った由紀は松村の秘書となり、彼に近づくのであった。しかし、それは洋一郎との愛を終わらせる結果にもなったのであった。
 由紀は明人の嫁、綾乃(女屋実和子)が戸間口と不倫関係なのを知り、明人に伝えるのであった。怒りに燃えた明人は綾乃と戸間口を毒殺するのであった。

 更に、由紀は明人に誘惑するのであった。そして、わざと情事にふけているところを松村に見せるのであった。
 松村は怒り猟銃で明人を撃つ。しかし、弾は外れる。明人は松村家を乗っ取る計画をしていたので、正当防衛を理由に松村を殺すのであった。

 そして、秘密を知った由紀も殺そうとする。しかし、そこに真相を知った洋一郎が現れ、明人を撃ち殺してしまうのであった。



 この映画はまず題名が凄い。『現代ポルノ伝 先天性淫婦』である。正直、場末か裏通りにある日陰な成人映画館で上映されそうな映画の題名である。
 そんな題名を大手の映画会社の東映が使っているのである。このどきっつさは、当時、東映社長であった岡田茂社長のタイトルだけでインパクトを出すという商法だから付けられたのである。

 他にも、岡田茂氏は、『大奥物語』を『大奥㊙物語』にしたり、文芸作舞台であった『あかさたな』を『ど助平一代』、『将軍と二十一人の愛妾』を『エロ将軍と二十一人の愛妾』にしたりして、観客の興味をそそる題名にしてしまう人である。

 で、この映画、東映が本格的和製ポルノ女優の池玲子を売り出す二作目の映画である。監督は彼女のデビュー作の『温泉みみず芸者』を撮った鈴木則文監督である。
 『みみず芸者』はコメディ映画であったが、本作はシリアスな映画である。最初、この映画の内容を、淫蕩な性格の女性の性を求めていく映画としか前情報を仕入れていなかったので、娯楽映画の巨匠の則文監督がどう演出するのだろうかと思った。
 まさか、ほとんどのシーンを池玲子のセックスシーンで埋めていくのかと思った。

 しかし、蓋を開ければ、自分の淫蕩な性癖に悩み苦しみ女の話。そして、普通の男性と愛することができのだが、結ばれることができない悲劇の愛の物語。
 更に後半は母を殺した男達への復讐劇と、泣かせるのとサスペンスのドラマにしていき、水準の高いドラマに仕上げている。

 それにプラスして、ポルノ女優の池玲子の見せ場もしっかりと作っている。
 最初は、杉本美樹とのレズシーンで始まり、藤木孝に犯され、小池朝雄とは激しいセックスをする。やたらと豊満なバストをさらした裸体を惜しげもなく見せている。
 ただ、遠く離れた恋人の声を電話で聞きながら、オナニーをするのはギャグになってしまっているが。

 そして、池のポルノ性を高めるために、東映は当時洋物ポルノで日本でも人気のあったサンドラ・ジュリアンを出演させている。
 で、このサンドラも池のように淫蕩の血があるのか、恋する洋一郎への性欲が抑えられず夢の中で刺青男達に犯されるは、池が学園でやったように彼女とレズ行為をしたりして、観客のスケベ心を癒してくれるわけである。

 でも、このサンドラという女優、洋一郎に案内されて京都の名所を歩いていくのだが、古い和風の街並と外国の女性という組み合わせは何か不思議な調和をあり、ヌード以上にサンドラという女優さんの存在感を強くしていた。

 で、先程、サンドラが夢の中で刺青男達に犯されると書いたのだが、そのメンバーが名和宏、汐路章、岩尾正隆の三人なのである。
 本来、タイトルで名前が出てもおかしくない名和なのに、なぜかノークレジットだったので、いきなり名和の顔を見た時、あれと思ったものである。
 しかし、西洋の女性が刺青をした日本の男性に犯されるというのもおかしな画である。こういった、奇妙さも鈴木則文監督の良さなのかもしれない。

 裸で勝負の女優陣に対しては、男優陣はもう腹黒合戦である。そもそも、遠藤と渡辺の身内同士が争っているのである。
 これが、この映画の重い部分を盛り上げている。特に、裏で義父の座を狙う渡辺文雄は敵役であった。彼がいるだけで男優陣の悪の強さが溢れ出ている

 そして、それに対抗し、純な男を演じるのは宮内洋である。彼が仮面ライダーV3になるのは二年後だが、池を愛する熱い心はまさに持ちのヒーロー物と同じ熱い心を感じた物である。

 でも、はやりこの映画がいいのは、池玲子の演技である。デビュー作の『温泉みみず芸者』はコメディであったから、女優という魅力を出すことはなかった。
 しかし、本作では、自分の淫蕩に悩みつつもそれを受け入れていく女。心から愛することができるようになった姿。復讐に燃えるようになってからの殺気さある演技。
 これらを池は見事に演じてくれた。多分、則文監督にしごかれたこそであろう。それが良かったのか、これ以降の作品でも空虚な演技を見せることがなく、さらには東映やくざ映画に出演していき、その演技を深めていくのであった。

 当初はどんな作品なのか、想像できなかったが、なかなかいい水準のドラマであった。鈴木則文監督の娯楽映画を撮る幅の広さを感じた。


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