お久しぶりです!

本業の忙しさにかまけて、ブログをずいぶんサボってしまい申し訳ありません。

これからはガンガン更新していきたいと思っているので、あらためてどうぞよろしく。

 

さて、今回の記事は収納代行というものについて。

収納代行サービスが、新たに資金移動業として規制の対象になるかも?と、CtoC (消費者間取引、個人間取引)業界などがザワついているのだ。

 

(外部リンク:日本ビジネス 電子版

「金融庁資料にシェアリングエコノミー業界激震の文字」(2019/6/7))

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00002/060700426/

 

今回はこのトピックをとりあげて、

「収納代行って何?」

「どんなことがあって、そんなにザワついてるの?」

などについて見ていこうと思う。

 

まずは、そもそも収納代行と比較されている「資金移動業」とは何なのか、というところから始めますね。

 

●資金移動業って?

 

日本では送金サービスは「為替取引」とも呼ばれていて、従来は銀行だけしかすることができなかった。

ところが平成21年(2009年)に『資金決済に関する法律』(資金決済法)ができて、1回あたり100万円以下の送金に限り、「資金移動業者」という銀行以外の会社にも解禁されたんだ。

条件付きなのは気になるけど、選択肢が増えたっていうのは、ぼくたち善良でか弱い国民にとっては喜ばしいこと。

でも、この資金移動業、送金額100万円以下という他にも、いくつかの規制がかけられちゃっているのだ。

 

●資金移動業の法規制にはどんなものがあるの?

 

まずは、資産保全義務

これは、送金の途中でお客さんからいったん預かっているお金について、その金額の100%以上は絶対キープしとけよ、というもの。

これ自体は素晴らしいというか、当たり前というかだけど、これには最低1,000万円、というラインが設定されてる。

例えば事業を始めたばっかりとかで、お客さんから預かっている金額が全然なくても、1,000万円はキープしなきゃならない。

資金移動業者にはたいへんなルールだけど、裏を返せば、これをクリアしているということは、それだけしっかりした会社ってことがいえるのかもね。

 

そして、本人確認義務

銀行と同様に、資金移動業者でも、10万円を超える送金のときは本人確認をちゃんとしろよ、というもの。

少し話はそれるけど、何十年も昔の銀行とか郵便局では、ペットの名義とか架空の名義とかでも平気で口座を作れたんだとか。

(当時の窓口の職員さんたちは、「鈴木ボチ様~」「佐藤タマ様~」なんて言っていたのだろうか・・・?)

それはそれで確認がユル過ぎるだろ、とは思うけど、逆に本人確認がきびし過ぎるのもどうなのかなあ、と思ったりもします。

 

ちなみに外国の送金サービスをみてみると、アメリカ・EU・オーストラリアなどでは送金額に上限はなくて、本人確認についても日本ほど規制は厳しくないみたい。

 

●収納代行って?

 

ここでいよいよ、収納代行の登場。

収納代行も送金サービスの一種なんだけど、資金移動業とはスキームが少し違う。

 

1:(商品やサービスの)売り手が(収納代行の)事業者に、代金を代理で受け取る権限を与える

 ↓

2:(その商品やサービスの)買い手が事業者に、代金を支払う。

(決済はこの時点で成立する)

 ↓

3:事業者が売り手に、代理で受け取った代金から手数料を差し引いた金額を渡す。

(ここでの支払は、売り手・事業者間の委託関係を精算しているに過ぎない)

 

資金移動業と異なるのは、2の時点で決済が成立している、ということ。

これによって、買い手の二重払いというリスクが発生することはない、とされたため、収納代行は資金決済法の規制の対象外になったのだ。

資産保全義務とか本人確認義務とかの規制を気にする必要がない、というのは、新しく事業をはじめるスタートアップにとってはとても魅力的なことだよね。

特にCtoC業界では、収納代行スキームを活用しているケースがたくさんあるようだ。

 

●収納代行の法規制って?

 

ところが、初めに書いた通り、この収納代行がこれから規制の対象になるかも?と話題になっているのだ。

これは、今年5/29から開催された、金融庁の金融制度スタディ・グループがまとめた報告書案の中に、次のような文章があったから。

債権者が一般消費者である場合については、一般消費者が「収納代行」業者の信用リスクを負担することとなる。そのため、こうした「収納代行」については、利用者保護等の観点から、資金移動業として規制の対象とすることが適当であると考えられる。」

(出典:金融審議会「金融制度スタディ・グループ」

「「決済」法制及び金融サービス仲介法制に係る制度整備についての報告≪基本的な考え方≫(案)」(2019年5月29日))(強調は筆者)

債権者、つまり商品・サービスの提供者も一般消費者であるCtoCは、この内容にガッツリ該当してしまう。

もしこの通りに法規制の範囲が広がってしまうと、現在CtoCサービスを扱っている会社が事業から手を引いてしまったり、新たなスタートアップ企業が計画を断念してしまったり、というケースがたくさん出てくるんじゃないか、という懸念も当然のこと。

 

この後、6/10の報告書案では規制強化のトーンがやや弱くなっているので、少し安心感も広まっているみたいだけど、資金決済法の改正とCtoC業界の動向にはこれからも注目していきたいね。

 

最後に、最近読んだ本の一文を引用して、この記事を終わりますね。

「禁止は一時的には最良の策であっても、長期的には生産的な結果をもたらさない。」

(出典:ケヴィン・ケリー著、服部桂訳『〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則』(NHK出版、2016年))