現場から学ぶ | 社会保障を考える

社会保障を考える

社会保障法の実現を目指して共同の可能性を考えたい

 

201911日西日本新聞の対談「評論家 荻上チキさん 社会学者 上野千鶴子さん」からです。

 

「上野

人は強い人の足は踏めません。介護施設で働く友人が「施設の職員は年寄りをコントロールしたくなる」と話していました。 親も子どもを思うままにしたがります。自分が意のままにできる弱者は子どもと老人です。圧倒的な権力の非対称のもとで、弱者を思い通りにしたい権力の行使や抑制し続けるプロセスがケアです。私は、ケアの経験は非暴力を学ぶ実践だと思っています。権力は行使するよりも、行使を抑制する方がはるかに努力が必要です。女は子どもを育てながら、非暴力を学んできた。その経験に男も参加してほしい。

 かつて強者として自分に立ちはだかった父親が老いて弱者になる。それを自分の意のままにしないでありのままに受け入れる経験を積めば、男も変わるでしょう。明日はわが身、ですから。ようやく今、親を介護する息子たちが登場し、介護離職などの問題が起などの問題起きているわけですが。

 

荻上

例えば被災地で取材すると、NPOの人たちが孤立問題を解消するために、さまざまな集いい場を設けるのですが、特に高齢男性がなかなか来ないので苦労するという話をよく聞きます。それでもこつこつ、出番や役割を提供したりすることで、男性たちの意識が変わっていくと。介護ノウハウも、男性の当事者互助会をつくる動きが始まっていますが、つながりのつくり方をデザインするところから関われているのだと思います。」

 

 

介護施設だけに限らず、精神科病院や障害者施設などでも弱者をコントロールしたりすることはあると思います。そこには、低賃金で人の入れ替わりが激しい職場の困難さも見ていく必要があると思います。職員が意のままにならない時にどのように対応するのか。経験が長い職員に学ぶことや技術を身につけることも必要だと思います。だが、膨大な仕事ゆえにそれをお互いにチェックする機能が弱まっています。外部の指摘は当然ですが、現場の実態を知ることも大切だと思います。