今夜はちょっぴり(Live曲)
風間健二&ジュ・テーム
作詞/作曲・風間健二
バンド解散後、ピアノ/エレクトーンでの弾き語りになり
事務所は変わらずに継続して仕事を貰っていた
翌月の月契約の演奏場所を探して頂いている時に…
事務所の社長が、六本木のロアビルの『ViVi』で、
一昨日からテストをしているのだけれど
『ViVi』の希望が女性の弾き手で…
１日１０人の女性のプレイヤーが、２日続けてテストをしたが全員受からず
『ViVi』は女性を希望しているのだけれど、明日ViViに行って
テストを受けてくれないかと言われたので取り敢えず行くことになった
当日、女性プレイヤーが８人来ていて、
それよりなにより・・・エレクトーンを見てびっくり！
今までに見たことのないグラスファイバーでできたYAMAHA『GX-1』
聞くと、この機種は日本に数える位しかないというではないか
真っ先に『NHK』に搬入されたらしいけど…
後に聞いた話で、キースエマーソンやスティービーワンダー達が
ドリームマシンと称賛したエレクトーンだった
ベース鍵盤はフルスケールで音色も自然に近い音がでて、
独特なのはシンセサイザー36台分の音源が入っていて
他のエレクトーンでは表現できない色んな音が出せる…
今のエレクトーンは、技術が進歩した為、GX-1はおもちゃみたいになってしまったが
その時には、画期的な、もの凄いマシーンだった
現在はベース鍵盤がフルスケールの、最上機種・ELS-02X・・・欲しいーーーっ
さて、テストが始まる時間になった
２日間で落ちた女性プレイヤー２０人の内、半数がYAMAHAの５級、４級だったらしいけど
YAMAHAの講師資格は５級からなので一応の腕は有るだろうけど
このマシーンは弾きこなせないと感じた
今回も８人の内、４人がYAMAHAの５級、４級の方が含まれていた
1人、２人・・・と順番にテストを受け始めた…
聴いていると、ほとんどマシーンを扱えない…
マシーンに振り回されていて感情も出ず、弾くのがやっと…
という感じでプロのテストにしては最悪の状態
テストに連れられてきた同じ事務所のエレクトーン奏者も
YAMAHAの４級を持っているが全然聴けたものじゃない
女性全員落ちた
事務所の社長がViViの部長に
女性プレイヤーを希望したけど・・・使えないでしょう…
と言う
一度、男性のを聞いてみて下さい・・・と言うと
私に合図がきた
ステージに上がり、じゃじゃ馬のようなエレクトーンにまたがった
レバーを調整し、いざっ・・・
一発目の音が出た時に途轍もない、今までには感じた事のない生に近い音色に感動
鍵盤の感触・・・まるで女性の身体を指で探っているような・・・
自分の指が、一つ一つの鍵盤を陶酔させているように
思い通りの指運びができる
素晴らしい・・・
感動と陶酔で数曲が弾き終わった…
エレクトーンのボディが、愛し終わった女性の身体のように見え、
愛おしささえ覚えた・・・全てが美しい…
そこには私の指に支配された陶酔しきったボディが有る…
・・・
・・・
・・・
気が付くと、静寂さでシーンとしている…
すると、その場にいた全ての方が拍手をし始めた…
その拍手に、私は我に返った
出演は１カ月契約だったけれど、六本木『ViVi』には半年間お世話になった
私が辞めた後、直ぐに木枠の普通のエレクトーンに変わった…
と噂で聞いた…
それを聞いた時には、
愛した女性がサヨナラも言わずに
私の前から立ち去ってしまったような
寂しい気持ちにさせられた…
良い楽器はプレイヤーの実力以上の力を引き出してくれる…
あのエレクトーンを女性に例え、
私の想いを表現すると…
もう一度逢って、私の指を思うがままに這わせ
あの美しいボディから愛されていると感じる歓びの声を出させたい…
滅多に出会えない、素晴らしい楽器に対し
生涯に残る大きな感動を頂いた事に感謝です
