職場や仕事から離れて療養し始めると、割と速やかに状態が快方に向かう方もいらっしゃる一方で、少なからずそうではない方もいらっしゃいます。

私自身も2度の休職歴がありますが、私の場合はまさに後者でした。
私の場合はこれまでの記事にも書いてきたように、仕事や職場の中だけの課題というよりは、自分自身の人生や生き方といった課題が非常に大きかったために仕事から離れるだけでは目に見えるような改善にはつながらなかったのだろうと振り返っています。

産業医として休職や復職に関わる相談を受けることは多いのですが、冒頭でも触れたように仕事から離れてもあまり状態が変化しない方は、そうでない方たちと比べてどのような違いがあると思いますか?

もちろん押しなべてこうだということは言い難いのですが、私が感じている一つの傾向として、仕事から離れても状態があまり変化しない方たちの多くに「自責感の強さ」があるような気がしています。

自責の強い方たちは、仕事から離れて療養を開始されても「○○に申し訳ない、迷惑をかけてしまった」、「△△からこう思われているのではないか」、「自分は怠けているのではないか」、「このくらいのことで休んでよかったのだろうか」など自分を苦しめる考えがぐるぐると頭の中で駆け巡り、最後は決まって「自分はダメだ」という結論にたどり着く。仕事をしていないので身体的な疲労感は少ないものの、起きている間中このような感じで頭ばかりが動いているので休んでいる感じはしないし、仕事をしていなくても気分は最悪…というような話は決して珍しくありません。

私はこのような方にはこんなふうにお伝えしています。
「今は、仕事から離れて療養に専念することが○○さんのお仕事です。」と。
仕事をしていないのではなく、仕事の内容が変わったのだということです。
そして、療養中の仕事とは具体的にはどういうものか。
動けない状態のときはしっかり休むことが仕事です。
動けるようになってきたら、次は普段(休日)の日常生活をこれまでのように送れるようになることが仕事です。
日常生活が支障なく送れるようになったら、そこからが具体的な復職準備の始まりです。

リワークに通う、通勤訓練を始める、仕事関連の勉強をするなどがありますが、それらを行いながら、休職に至った経緯、同じような状況になったら今度はどんなふうにするとよりうまくいきそうか、について振り返ることがとても重要だと考えています。

休職したことで自分を責めるのではなく、休職したことで自分はどのような気づきを得たのか、どうやって回復してきたのか、そして復職後はその経験をどのように活かせそうか。
休職された方々のお話を伺いながらいつも感じるのは、休職したという経験もその人の強みや力、リソースの一つなのだということです。
現在休職中の方、メンタル不調により休職を考えていらっしゃる方の中にはそんなふうには思えないという方もいらっしゃるでしょう。それでも私は、自分自身の経験も含めてそう信じています。

もう一つ、自責の念で苦しんでいる方にお伝えしたいことがります。

あなたは自分が休職したことで周りに迷惑をかけていると思っているかもしれませんが、あなたが今療養という仕事に専念していることがすでに誰かの役に立っています。

そしてあなたが回復し、今まで以上にあなたらしくご自分の力を発揮されれば、それによって助けられる人はもっとたくさんいます。

ですから、どうかこれ以上ご自分を苦しめずに、今できることに専念してほしいと願っています。


あなた自身が未来のあなたを救うのです。