私の場合ですが通院中に抗うつ薬、抗精神病薬、抗不安薬、睡眠導入剤など、一般的に精神科で処方されるような薬を使ったことは一度もありません。
たまに1,2種類の漢方薬を服用したことはあります。
なぜそういった薬を使わなかったのか。
私が単に薬に偏見を持っているとか、逆に薬について医師として正しい知識があったから、ということでもないと思っています。
今でも例えばアレルギー症状に対して抗アレルギー薬があるおかげで非常に助かっています。
当時の私は、「もうこの自分では生きていけない」と思い医療機関を訪ねました。
その時からなぜか直観的に、「これは薬でどうにかなる問題ではない」という認識がありました。
主治医も私に一般的な精神科で処方されるようなお薬を提案してきたことは一度もありませんでした。この点は非常にありがたかったと今でも感じています。
当事者として、サバイバーとして、医師として、今改めて感じていることを率直に書きたいと思います。
摂食障害について言えば、私は、薬物療法は対症療法の一つではあっても根本治療にはならないと考えています。
そしてそれは、摂食障害以外の多くの精神疾患(メンタル不調)にも共通しているのではないかと思います。
メンタル不調に対する薬物療法は風邪薬と一緒で、“症状”として出ているものを和らげたり抑えたりする効果はあったとしても、“病気そのものを治す”ものではないと考えています。
そして私自身について言えば、そういった薬を使わなかったおかげで「本来の私の課題」に取り組むことができたと感じています。
今振り返れば、これまで体験してきたことのすべてがリアルで、ユニークで、それらのピース一つひとつによって私の人生が彩られているように思います。
ただし薬物療法そのものを否定しているわけではありません。
今日は最後に解決志向アプローチの中心哲学を共有させていただきたいと思います。
① うまくいっているなら変えようとするな。
② もし一度やってうまくいったのなら、またそれをせよ。
③ もしうまくいっていないのであれば、何でもいいから違うことをせよ。
誰かがこう言っていた、本にはこう書いてある、ネットにはこんなことも書いてある…、など私たちの日常は様々な情報にあふれています。
この3つの非常にシンプルな考え方は、このような時代に生きる私たちが自分の人生に対する主体性を持ち続けながら何かを選択する手助けとなるような気がしています。