イソップ物語に「金の斧銀の斧」というのがあります。
正直であることが最善の策であるという教訓の物語で

欲張って嘘をつくと代償が大きいことを教えてくれます。

 

正直者のきこりはうっかり斧を川に落としてしまいましたが

神様が現れて都合3回も川に潜り、金の斧を拾ってきて

銀の斧を拾ってきて最後に本人の斧を拾ってきてくれます。

神様はきこりの正直さに感心して金の斧と銀の斧も与えます。

それを知った欲張りで嘘つきのきこりは斧をわざと川に落とし

金の斧を見て自分の斧だと嘘を答えます。神様は姿を消し

きこりは金の斧を手に入れるどころか自分の斧を失うことになった

というお話です。

 

そして僕がどうしてこの話を思い出したかというと

昨日NHK杯将棋の決勝を見たからです(棋王戦も見ました)。

 

藤井聡太八冠がなんと負けてしまいました。いや珍しい。

僕は相当ショックを受けましたがあとで意外と今年は

準優勝続きなんだと知りました。昨年度は一般棋戦で参加資格がある

4棋戦(NHK杯・JTプロ公式戦・銀河戦・朝日杯)で

史上初の完全制覇を果たしていましたが今年度は

銀河戦、朝日杯でどちらも準優勝だったそうです

(JTプロ公式戦は連覇)。

 

NHK杯決勝の対局相手は佐々木勇気八段。

2年連続の同一カードの決勝戦で昨年は藤井八冠が初優勝していた。
佐々木勇八段というと(佐々木大地七段がいるからね)

藤井少年がプロ入り後初敗戦した相手です。佐々木勇気がいなければ

藤井聡太の破竹の29連勝は30になったか40になったか

50になったかわかりません(タラレバは考えてもしょうがないが)。

 

「因縁の相手」という烙印は既に押されていますが

(多分本人たちは世間が思うほど気にしてない気もするが)

これでまたベッタリです。NHK杯連覇とかもそうですが

これで藤井八冠の年間最高勝率更新がなくなりました。

 

藤井八冠は昨日棋王戦で挑戦者の伊藤匠七段と対戦していましたが

もしNHK杯で優勝した上で棋王戦でも勝てば

47勝7敗(勝率.870)の成績で今年度を終了し

中原誠十六世名人が1967年度にマークした.855の歴代最高記録を

更新していたらしい。だが、NHK杯決勝で敗れたことで

中原十六世名人の記録には届かないことが確定した。惜しい。

あまりにも惜しい。それだけ8割5分5厘という壁が高いということか。

 

僕は素人ですから「ひょっとして」とかすぐ思うんで

次の興味は「3月17日は藤井聡太が一日で二度負けるという

滅多にない日になるのか?」とか思いましたが

棋王戦のほうは藤井棋王勝利でタイトル戦の連覇記録が21という

とんでもないことになった日にはなりました。

 

でも藤井八冠レヴェルだと勝ったことより負けたことのほうが

ニュースになります。絶対王者ってのも大変だなと思います。

 

金の斧も銀の斧もいっぱい持っているでしょうが

鉄の斧の気持ちをなくさないことこそ大事なんでしょうね。

 

お話に突っ込んでもしょうがないとは思うがそもそも

金の斧とか銀の斧とか貰えば嬉しいだろうけど

その後はどうするんでしょうねえ?飾っててもしょうがないし

転売するのかなあ?溶かして加工し直すのかなあ?

そんなことを考えると正直さを褒められて自分の斧が

返ってきたというのがいいことなのかなあとか思います。

自分の愚かさのために大事な商売道具を失うことは

勿論いいことではありません。

 

藤井八冠にしても佐々木勇気八段にしても佐々木大地七段にしても

伊藤匠七段にしても自分の斧を大事にしそうですね。

将棋の棋士はそんな気がするので好感が持てます。

中原誠十六世名人や大山康晴十五世名人や米長邦雄永世棋聖も

そうだったはずなんだけどなあ。昔の人は破天荒だったからなあ。