学校教育をアップデートせよ~その3

【20190615菊池道場北海道札幌支部勉強会報告】

今回は7月20日(土)に予定している拡大勉強会(菊池道場の情宣の一つでもあり、現職研修としての学びの場を提供する趣旨もある)の内容検討をメインとして開催した。その中でシリーズ3回目で最終回となる。元は、3月23日(土)に開催された私の退職セミナー<蝦夷の教育文化フェスティバル~大谷和明「耳順」セミナー>での私の講座がベースとなっているもので、さらに肉付けをして札幌支部メンバーに向けてレクチャーしたものである。

4月5月6月と月例の勉強会のお楽しみにしてもらえたかな・・と思う。

月例会ではコアメンバーとメンバーが引き連れて来てくれた職場の若手同僚もおり、これからの学校教育をアップデートするための観点やポイントを示すものとなっている。

 

今回の提言3も3つの観点とファーストアクションをそれぞれに付帯させてある。

 

(1)個別指導の最適化をせよ

1クラスにおける児童・生徒の数は20人程度であることが望ましいと感じているが、現状の日本での制度では40人学級である。1年生は小1プロブレム対応で35人とあり、市区町村の自治体レベルでは2年生以上でも適用しているところがある。札幌では小学校2年生に適用となっているため、小学校3年生からは40人学級である。

私の職場は小学校1年が28人なので、はじめから1学級であり、学年担任一人で切り盛りすることになるので大変である。そのため、外部人材リソースとして学びのサポーターをできるだけ配置するようにしているところである。

 

それはともかく、一斉指導の体制の中で個別指導の時間を生み出し、かつ個別対応をとっていくことは、相応の力量や経験を持たないと厳しいものがある。向山洋一氏が提唱している「授業の腕を上げる法則」に10の原則が挙げられており、私は中でも空白禁止の原則を特に重要と考えている。

 

要は、一斉に学習作業をさせている間に、内容把握が不足している児童生徒のもとへ個別指導しに行くのであるが、簡単な問題・課題には速やかに終了する子どもが教師のもとへ回答に向かうため、ある程度のハードルを上げるなり、回答評価にかける時間を短くするなりの工夫が必要となる。

例えば、1時間授業でのドリル問題が10問あるとしたら5問できたら持って来させることで、回答スピードを上げることができる。

その際、回答1つ1つを親切に丸付けする教師がいるのだが(ほとんどがそうだろう)、私の場合はそうしない。5問全問正解で大きな○を一つつけて、次の回答に向かわせる。一つでも間違いがあれば、そのままノートなりプリントを突き返すのである。もちろん、どこが間違いなのかは指摘してあげない。あくまでも自分で考えるのである。3~5問くらい(数と計算領域ならなおさら)なら一見して即座に評価できるわけだ。回答評価の隙間時間を寄せ集めるだけでも結構な時間を生み出すことができ、かつ個別指導の時間を確保もできるというわけだ。

 

そこにもってきて、昨今の時代背景としてデジタルデバイスを取り入れたドリルで個別対応を促進させれば、更に時間の捻出を促すことが可能であり、クラウドでのデータ保管もできるので、個別にテーラーメイドの設問提示もできるというのが、これからの教室現場である。

授業がへったくそな教師が対応するよりも、よっぽど気の利いた対応を機械がしてくれるのが、これからの教室だということだ。

積極的にデジタルデバイスを活用していこうじゃないかという提案である。

 

(2)コミュニケーション力を高める手立てを考えよ

「授業は討論に憧れる」とは、先の向山氏の言葉であるが、子どもたち同志の討論とは、学習の質を高めることにも繋がる。アクティブ・ラーニングの言葉は聞かれなくなってしまったが、これの本質は「子どもの脳みそをどれだけ働かせることができるか」という命題に直結することなのだ。

その点では、過去の名だたる実践家はすべからくAL実践者であると言える。何も、ここ数年の流行り半纏ということではないのである。このことを教師は自覚しておく必要がある。

そうはいえ、一斉指導一斉授業から抜けられない教師の授業は、教師が話す時間が圧倒的!に多い。45分の半分以上は教師が喋っていることすらある。子どもは聞かさせるだけである。

聴く値のある価値ある内容であるならまだしも、言葉を選んで短く話す意識・自覚のない教師の話を聞かされて、どこがアクティブ・ラーニングになるのか?!といいたい。

試みとして、ボイスレコーダーを使って自分の授業録音を再生してみればよい。以下にダラダラと無内容(ちょっと言いすぎか)で思いつき発言が多いかということに気づくはずである。

教材研究を経ていない「とりあえず発問」で授業するくらいなら、自由読書に当てる方がよほどましである。

 

学習指導要領が能力・資質開発重視に舵を切っているわけだから、コンピテンシーと呼ばれる能力開発をどのような教材や課題で授業デザインするかを本気に追究していかないとならないのである。

 

(3)コミュニティ「学校」を発動せよ

もうだいぶ以前から「開かれた学校」が言われ、とりわけ総合的な学習の時間が創設されて以来、外部人材を学校に取り入れるようになってきたが、ホンモノから学ぶことの効果というものを共通認識する必要があるだろう。

日本でもコミュニティスクールが出てきてはいるが、諸外国でみられるものとは別物で、ホンモノであれば人事権にまで及び自治運営することをもってコミュニティスクールと言えるわけだ。

大学卒業のままの人材教師だけでなく、学び直しで現場復帰してきた教師もゴロゴロといるような学校が今後増えてくることだろう。

官制研修だけでなく、リカレント教育を受けた厚みのある教師とともに充実した校内研修を進めていくことで、子どもの学力形成という教育の本来目的を果たすのが、今後の公教育の使命となっていくものと思う。