コーラが歯を溶かす話を前回しましたが、Nikkei Medical（日経メディカル）という雑誌に“私の秘密兵器”と題して、コーラで胃石を柔らかくして取り除いたケースレポートが載っていました。
胃石とは胃の中にできる石のような固まりで、食べかすや髪の毛などが固まってできます。胃の不快感を訴える患者さんのなかにまれに胃石が原因のことがあり、小さかったり柔らかければ内視鏡で取り除くことができますが、大きいものになると腸で詰まって腸閉塞を引き起こすこともあるので、硬くて細かく出来ない時は手術も考えなければいけません。（下の写真は胃の中の胃石です）
最近、治療に苦労した胃石をコーラ（なぜかコカ・コーラ）で溶解・除去したとの事例が学会や論文で報告されているそうですがEur J Gastroenterol Hepatol. 2002 Jul;14(7):801-3.Korean J Intern Med. 2007 December; 22(4): 300–303.
Cases J. 2008; 1: 385. 神戸百年記念病院の前川透先生は４年前に４cm大の硬い胃石の治療にコーラ療法を試みたそうです。
前川先生はまずコーラの炭酸が効くのではないかと考え、まず炭酸水を使ってみましたが効果がなく、コーラを試してみることにしたそうです。それまではコカ・コーラとコカ・コーラライトを使った論文しかなかったので、銘柄を変えてみたかったのと、患者が糖尿病だったので、糖分ゼロのダイエットペプシを選んだそうです。おちゃめな先生ですね。
寝る前と翌朝に計２リットル患者に飲ませ、昼に内視鏡で観察すると、胃石は柔らかくなっており、内視鏡を使って割ることができたそうです。さらに２リットル追加で飲ませたところ、翌朝には内視鏡で細かく砕くことができ、無事取り除くことができたそうです。
「胃石がコーラで軟化したり、炭酸水では効かない理由はわかっていない。今度機会があれば炭酸の抜けたコーラで試したい」とまたまたおちゃめなことを前川先生は話してますが、この前のお話を読まれた皆さんなら理由はわかりますよね。
コーラは歯も溶かすのですから胃石も溶かしてしまうのでしょう。炭酸水はさまざまですが、弱酸性からアルカリ性ですのでpHはコーラほど低くありません。おそらく気の抜けたコーラで試しても胃石は溶けるのではないでしょうか。
でもまてよ、胃の中はコーラよりもっとpHは低いはずなのになぜ胃液で溶けずにコーラで溶けたんでしょう。やっぱり分かりません。
ちなみにこの患者さんは80歳代だそうです。80歳のおじいさんにコーラ2リットルですか。
余談ですが、胃石は恐竜やアザラシ、アシカ、鳥類にもみられ、これらは胃の中で消化を助ける働きをしています。