ユング派の臨床心理学を日本で築いた、言わずと知れた河合隼雄さんの著書、『宗教と科学の接点』を昨日一日中読んでいました。

 

少し硬い本ですが、トランスパーソナル心理学、共時性、死について、意識とはなどなどすごく面白い本でした。全体を通しての感想は、ニセ科学的に読まれないことを、河合隼雄さんは注意して書かれているなぁと。

 

まずこの本における宗教とは、西洋的キリスト教と東洋思想との区別をつけることを目的とされていて、特定の儀式や修行、祈りとは直接関係なさそうです。

 

トランスパーソナル心理学という自己を越えた普遍的な意識を対象とした学問では、いろいろと胡散臭い怪しい人もたくさんいながらも、たましいの問題は外せないようですね。

 

共時性については、意味のある偶然の一致を共時性と呼ぶのですが(たとえば夢の中で甲虫が出て来た時に、起きたら甲虫が部屋の中に入ろうと飛んできたなど)、それらの背景に元型の存在があって、コンステレートされている全体を把握して(もちろん完全に全体を把握するのは自我としては不可能ですが)その状況が置かれている共時的な意味にコミットメントすることが自己を生きるという事ではないだろうかと書かれていました。(僕個人の意見を述べるなら、統合失調症はコミットメントしすぎるのが病気だと思いますが)

 

死については、アメリカの精神科医レイモンド・ムーディが臨死体験者の体験をまとめて共通点がある事を示しているのと、あの有名なキューブラ・ロスが死の間際にいる人を研究対象にしてまとめたことを挙げています。そして僕が面白いと感じたのは、河合隼雄さんがあの宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』は臨死体験の観点から相当一致するのではないかと書かれていたことです。宮沢賢治は最愛の妹、トシが亡くなった際に相当近くまで死の旅を寄り添ったのではないかと。いくつか本文中の具体例を挙げて書かれています。これは大変に興味深いですね。また死後生を確信することがターミナルケアの精神的支柱ではないかと引用されていました。

他にも意識の事についてLSDの神秘体験やスーフィーズムの意識の捉え方など、盛りだくさんの内容で僕の文章力ではとても全容は書けないのですが、このような不思議なことに理性的に興味深く思われた方は、一度読んでみてはいかがでしょうか。