放送大学の社会心理学の授業から。リチャード・ニスベットより。

 

心の仕組みというのは文化の東西を問わず、人間として共通のものだと考えられている。とくにニスベットは著作の『人間の推論』を通してその考えを強く持つ一人だった。だが後に、ニスベット自身が逆説を打ち出すことになる。それがこの『木を見る西洋人、森を見る東洋人』であった。

 

ニスベットによれば西洋の思考様式は「分析的(analytic)」であり、東洋は「包括的(holistic)」であるという。

 

すなわち、木を見る場合でも西洋人は「大木を見つめる」のに対して、東洋人は「森全体を見渡す」という事である。これは実験によってある程度裏付けられた。

 

本当にそう?と疑われる方のために簡単な問題を出そう。

 

鶏と牧草と牛の中から仲間はずれを1つ選ぶとしたら、あなたはどれを選ぶだろうか。

 

アメリカの子どもは鶏と牛を仲間とし、牧草を仲間はずれと考えるのに対して、中国人の子どもは牧草と牛を仲間とし、鶏を仲間はずれと考えることが多いという。

 

これが分析的思考と包括的思考の例である。

 

さいごに、大きく西洋と東洋と2つに分けたが、実際はもっと複雑で例外も多いことをニスベット自身認識しているだろう。だが、のちに文化心理学という分野にまで発展した、大変大きな影響を持つ考え方となったのは確かだ。