昨日5月24日に確定拠出年金法の改正案が成立し、2017年1月から適用されることになりました。


まず確定拠出年金DC401Kと略されることもある)というのは一定の掛金を加入者が拠出・運用をし、その運用結果によって将来の年金額が決まる私的年金のひとつです。

国が行っている公的年金は給付額を引き下げたり、給付年齢が繰り下げられる方向にあります。
また退職金制度がある企業の割合や給付額もどんどん減ってきたり、確定給付年金DBと略される。DCと違い将来の給付額を確定させて企業が運用をするタイプの年金)で企業に管理・運用をすべて任せることも今の情勢では厳しくなっています。

こういった背景があるため国や企業では将来の生活を保障しきれず、自助努力が求められるようになりました。そこで自己責任で自分の老後資産を管理する確定拠出年金が注目されており、今回さらなる普及・拡大を図って法改正がされました。



◼︎個人に関係してくる今回の大きな改正点は

①加入可能範囲の拡大
②拠出限度額の年単位化
③企業年金等のポータビリティ拡充


です。

①今までは自営業者や企業年金のないサラリーマンしか加入資格がなかったのですが、今回の改正により公務員や主婦、企業年金のあるサラリーマンも加入資格を得ることになったので現役世代は誰でも加入可能になりました。

②今までは月単位での掛金拠出であったため限度額の使い残しを繰り越したりできなかったが、今回の改正により年単位での掛金拠出になったためボーナス時に使い残し分の一括拠出等の柔軟な拠出が可能となりました。

ポータビリティとは転職時などに資産を持ち運べる制度で、今までは転職先に企業年金制度はあるが確定拠出年金制度がなかった場合は掛金の拠出はできず運用の指図しかできませんでしたが、今回の改正により確定給付年金へのポータビリティも可能になりました。

その他もいくつか改正点はありますが、個人にとって特に重要になってくるのはこのあたりかと思いますので下の表にまとめてみました。







◼︎そもそも確定拠出年金のメリットとは

確定拠出年金は自助努力を促すために大きなメリットが用意されていますので説明します。

①掛金が全額所得控除となる
②運用益が非課税
③受取時の税制優遇がある
④受給権が保護されている

①確定拠出年金の掛金は全額所得控除となるため、それに対応した所得税住民税が減ります。
課税所得200万円の人が年間24万円拠出した場合、所得税10%と住民税10%で年間48000円が節税されます。
住民税は一律10%ですが、所得税は年収が高い人ほど税率が高くなるのでより節税効果が大きくなります。

通常の預金や投資信託などでは利息や売却益、分配金などに対して20.315%の税金が課されますが、確定拠出年金の場合それら運用益がすべて非課税となります。
例えば上記条件で30年間3%で運用しながら積み立てた場合、一般の金融商品の場合税金が引かれて10,370,360円で確定拠出年金の場合11,418,100円となるため、1,047,740円もの差が生まれます。

③受取時にも税制の優遇がされており、一括で受け取る場合には退職所得控除、分割で受け取る場合には公的年金等控除の対象となります。
退職所得控除は20年以下の場合は年数×40万円、20年超の場合は800万円+70万円×(年数-20年)となるので例えば30歳から加入して60歳時に一括で受け取った場合、1500万円までは非課税となり、それを上回った部分についても課税所得は2分の1になります。

上記例で①~③までの税制面のメリットを合わせると
確定拠出年金を使った場合:約1286万円
となり、
一般の投資信託などの場合:約1037万円
銀行預金の場合:約720万円

と比べてかなりの差になります。

④確定拠出年金は転職をしても、万が一企業が倒産しても、金融機関が破綻しても、公的年金の受給額が減ってもそれまでに積み立ててきたお金は100%もらえるようにきちんと保護されていますので老後の資金としてとても安心です。



◼︎デメリットはないのか

確定拠出年金はかなり大きなメリットがあることはわかっていただけたかと思いますが、デメリットも存在しますので書いておきます。

①原則60歳までは解約不可
②手数料がある
③すべて自己責任


①確定拠出年金は老後資産を形成するための制度ですので60歳までは途中で引き出したりできません。ですので無理のない拠出額にしておくことが大切です。
途中で拠出が厳しい状況になった場合は一時ストップ年に1回拠出額の変更ができます。
デメリットとして載せましたがプラスに捉えると60歳まで引き出せないので貯蓄の苦手な人でも確実に老後資金が貯まります。

②初回には口座開設手数料が2777円(一部の金融機関はもう少し高い)かかったり、運用時にも月に数百円(金融機関によって差がある)ずつ費用がかかります。
また確定拠出年金で投資信託を選んだ場合は資産残高に対して信託報酬などがかかります。
運用時の手数料は金融機関によって、信託報酬は商品ごとで結構差がありますので比較サイトなどで調べてみると良いと思います。手数料はできる限り安い方がその分有利に資産形成できます。

③確定拠出年金には元本保証型の商品や色々な投資信託型の商品などがあります。
それらをどう組み合わせるかによって将来貰える金額が変わります
リスク商品に投資した場合元本割れするケースもありえます。
元本保証型も名目金額は保証されてますがインフレなどによって実質的に目減りするケースもありえます。
ですので各自が自分の年齢やリスクの許容度、経済の動向などを考慮しつつ商品の選択をしていく必要があります。
現在の自分の運用状況はPCやケータイでもいつでも確認したり、内容の変更もできるので状況に合わせて上手に運用していきましょう。



◼︎まとめ

一通り改正点やメリット、デメリットの要点を説明しましたが、老後のための資産形成の方法としては最強と言っても過言でないほど魅力的な制度です。
今回を機にきちんとライフプランを考え、利用を検討してみてはいかがでしょうか。