プライベートなことですが先日祖母が亡くなりました。

身内が亡くなるときには肉体的、精神的に大変辛いですが、同時に経済的にも大きな負担がでてきます。
入院、介護、葬式など突然やってくる問題で家計が大変なことになることもよく聞く話ですので正しい知識をつけて備えておくことが大切です。

というわけで今回はその中の入院に関して触れてみたいと思います。

まず日本の健康保険はとても手厚く、治療などに大きなお金がかかっても高額療養費制度によって自己負担はそこまで大きくならないようになっています。

この高額療養費とはどういうものかといいますと、ひと月の医療費が下表の計算で出た自己負担限度額を超えた場合あとで返金を受けることができる制度です。



例えば40歳年収500万円の方が1ヶ月の総治療費100万円かかった場合、窓口での負担は3割の30万円ですが高額療養費制度を活用すると
80,100円+(1,000,000円-267,000円)×1%=87,430円
が最終的な自己負担になります。

高額療養費制度は申請をしなければもらえませんので自分が加入している健康保険窓口に申請するのを忘れないようにしましょう。

ちなみに申請には
①一度病院窓口で3割負担の医療費を支払い、後日申請をして返金を受ける方法
②事前に健康保険窓口で『限度額適用認定証』をもらっておき、病院窓口で自己負担限度額を支払う方法
の2パターンがあります。

さらに健康保険組合によっては独自に付加給付を行っているところもあります。
大手の会社ではひと月に25,000円を超えた部分は健康保険組合が負担してくれたりするところもあるのですが、その会社に勤めていても大半の方が知らないことが多いです。
一度自分の勤め先の健康保険組合のホームページなどで調べたりすることをおすすめします。

付加給付まである会社の方の場合医療保険はほとんどいらないので保険の整理をして家計を改善できるケースも多いです。

さてこのように素晴らしい高額療養費制度ですが、実は次のようなものは対象外となり、全額自己負担になります。

・入院時の食事代
・差額ベッド代
・先進医療代
・日用品代
・出産
・保険適用外の治療


食事代に関しては今まで一食につき260円だったものがちょうど今年平成28年4月から一食につき360円に変わりました。さらに平成30年4月からは460円になります。

差額ベッド代は入院費を大きく左右するケースも多いのですが、正しく理解していない人がほとんどですので少し細く説明しようと思います。

まず差額ベッド代とは特別療養環境室というより良い環境で治療を受けるための部屋を希望したときに特別にかかる料金のことです。

厚生労働省によると特別療養環境室の条件は

① 特別の療養環境に係る一の病室の病床数は4床以下であること。
② 病室の面積は1人当たり6.4平方メートル以上であること。
③ 病床ごとのプライバシーの確保を図るための設備を備えていること。
④ 少なくとも下記の設備を有すること。
ア 個人用の私物の収納設備 イ 個人用の照明 ウ 小机等及び椅子

とあります。
簡単にいえば個室や少人数部屋のことです。

そして1日あたりにかかる差額ベッド代の平均は

一人部屋:7,558円
二人部屋:3,158円
三人部屋:2,774円
四人部屋:2,485円
全体での平均:5,829円

とのことです。

ちなみに上記はあくまで平均であって、病院によってかなり金額差はあります。
高い病院だと1日あたり30万円を超すようなところもあります。
うちの祖母のケースでも差額ベッド代によって大きく入院費が上がったようです。

しかし実はこの差額ベッド代、必ず払わなければならないかというとそうではありません。

厚生労働省によると

『特別の療養環境の提供は、患者への十分な情報提供を行い、患者の自由な選択と同意に基 づいて行われる必要があり、患者の意に反して特別療養環境室に入院させられることのない ようにしなければならない』

『特別療養環境室へ入院させた場合においては、次の事項を履行するものであること。
① 保険医療機関内の見やすい場所、例えば、受付窓口、待合室等に特別療養環境室の各々 についてそのベッド数、特別療養環境室の場所及び料金を患者にとって分かりやすく掲示しておくこと。
② 特別療養環境室への入院を希望する患者に対しては、特別療養環境室の設備構造、料金 等について明確かつ懇切丁寧に説明し、患者側の同意を確認のうえ入院させること。
③ この同意の確認は、料金等を明示した文書に患者側の署名を受けることにより行うもの であること。なお、この文書は、当該保険医療機関が保存し、必要に応じ提示できるよう にしておくこと』

『患者に特別療養環境室に係る特別の料金を求めてはならない場合としては、具体的には以 下の例が挙げられる。
同意書による同意の確認を行っていない場合(当該同意書が、室料の記載がない、患者 側の署名がない等内容が不十分である場合を含む。)
② 患者本人の「治療上の必要」により特別療養環境室へ入院させる場合
病棟管理の必要性等から特別療養環境室に入院させた場合であって、実質的に患者の選 択によらない場合』

とのことです。

つまり自ら個室を希望して同意書にサインをしなければ本来は差額ベッド代を求められないのです。

とはいえ病院も経営上当然差額ベッド代をできる限り払ってもらいたいため当然のように同意書のサインを求めてきます。

ここで断固としてサインの拒否をすると病院との関係が悪くなったり、別の病院をあたってくれと言われることもあるようなので、経済的に苦しい場合は
経済的に支払いが困難なので大部屋を希望します
ということを相談したり同意書に書いて、病院の対応を見ながら柔軟に対応していくことがベストであると思います。

このように高額療養費や差額ベッド代など正しく知っているかどうかでかなり経済的な差がでてきますので上手に活用していってください。