2024/08/03

立川談春「赤めだか」。なんで買ったのか覚えてないけど、そこそこ長い間本棚に並ばず、積んであった。師匠の立川談志との逸話を中心に、談春さんが真打ちにあがるまでの修業時代を描く。

落語はまったくわからない。聞いたことはほぼない。今回、この本を読む中で、志らくさんの落語を聞いてみた。楽しめた、けど、その落語の出来はそれほどではなかったのかな、という印象。もっと聞けば、楽しめそうな気はする。

個人的には、師匠と弟子の関係が気になる。私のいる学問の世界も、師匠・弟子の関係があるから。談春さんの師匠・談志さんへの思いは強い。他の世界では、なかなか見られない結びつきのように見える。

二つ目とか、真打ちとかの落語家の昇進は、立川流では、師匠が決める。自身の将来は師匠次第。しかし、師匠・談志の基準はぶれる。それにいかに寄り添って、師匠を納得させて昇進するか。その攻防が本の読みどころになっている。

学問の世界はどうか。准教授や教授への昇進は、大学内部の話なので、師匠が同じ大学でない限り関係はしない。また、研究者仲間での評価は、どの程度のジャーナルに論文が載ったかで決まるところが多く、論文や本が学会などで賞をとったりすると、さらに箔がつく感じ。総じて、学者の評価に師匠が関わることは少ない。

だからなのか、落語の世界のような師匠への想いは、学問の世界には少ないと思う。もちろん、師匠は尊敬してるし、その自分への評価は気になるし、敬意をもって接している。ただ、談春さんの師匠・談志への想いには及ばない気がする。

本を読み終わって、なんだか師匠への敬意が足りないような気がして、最近きたメールに、普段はしないような返信をした笑。師匠あっての私であることは間違いないのだし、もっと敬意をもって接しなければ、というような気になった。思いもよらぬ感慨だった。