ユニークな楽曲とミニの衣装、奇抜な振付、そしてミーちゃんケイちゃんの唯一無二の歌声と溌溂としたキャラクターで、日本中を虜にしたピンク・レディー。年に300本もの番組に出演するなど、テレビと歌謡曲の全盛期を象徴するスターだった。現在DVDなどで観ることができる当時の出演映像の中から、2人の活躍を振り返っている。今回は、昭和のアイドルが当たり前にこなしていた水着での歌唱映像をピックアップする。


「Singles Premium」DVDより引用(以下の画像も同じ)



今回も前回と同じく、2011年にリリースされたピンク・レディーのCD+DVDボックス「Singles Premium」から「NTV紅白歌のベストテン」の映像を取り上げる。クレジットでは、1977年6月20日放送分となっている。


前回も書いたように「紅白歌の…」は日本テレビ系列で月曜夜8時から放送されていた人気の歌番組だった。渋谷公会堂からの生放送が基本だったが、この回は「赤プリ」の通称で有名な東京・千代田区の赤坂プリンスホテル(2011年に閉館)のロイヤルプールからの生中継。毎年夏の恒例のスペシャル企画だったようだ。上の俯瞰の映像は、ホテルの上層階にカメラを設置して撮影されたと思われるが、プールサイドにかなり大がかりなセットを組んでいるのがわかる。ちなみに画面左上の灯りは、首都高を走る車のヘッドライトである。「赤プリ」のロイヤルプールは、都心の一等地にある屋外プールとして知られ、テレビ番組でもよく使われていた。


ピンク・レディーは青紫と白の爽やかなビキニで、6月10日にリリースしたばかりの新曲「渚のシンドバッド」を歌っている。オリコン週間チャートでは、20日付で初登場4位、27日付で早くも1位を獲得。放送時点で最もホットな1曲だったことは間違いない。夏に向けて、ピンク旋風がさらにエスカレートしていった頃である。



公開放送なので、ステージセットだけでなく、反対側には客席も仮設されていた。男性ファンたちからプール越しに「ミーちゃん」「ケイちゃん」の大声援が飛ぶ。




「渚のシンドバッド」の衣装は、髪に羽飾りをつけるのがお決まりだった。この時は水着だが、2人はしっかり羽飾りを着用している。曲のイメージを定着させるねらいだったのだろう。ピンク・レディーの羽飾りは、女の子たちにも人気があったように思う。



ステージセットの上段では、ポリネシアンダンスのダンサーたちが松明を手にして踊っている。あくまでも歌手がメインなので、これだけの人数を動員してもテレビではちょっとしか映らないのだが、当時の歌番組はそんなことはお構いなしである。今見ると演出過多にも思えるが、番組を盛り上げるためには何でもやってやろうという当時のテレビマンたちのエネルギーを感じる。


「Singles Premium」のDVDには、例によって2人が歌っている部分だけしか収録されていないが、某動画投稿サイトに、この回の放送をほぼ全編録画した動画*がアップされていた。70年代のテレビでは、アイドルなど芸能人の水泳大会が定期的に放送され人気を博していたが、この回も歌番組ながら、ゲームなどの水泳大会的な要素を取り入れ、盛りだくさんの内容になっている。


*動画のタイトルは放送日を「6月27日」としている。DVDのキャプションとどちらが正しいかは未確認。

(追記)当時の新聞テレビ欄で確認したが、6月20日が正しい。


ピンク・レディーは、前半ではプールに浮かべた発泡スチロールの特大ボードに乗って水上モグラ叩きゲームに挑戦。かと思えば、桂由美ブライダルサロン提供のウェディングドレスを着たミーちゃんケイちゃんが、それぞれ男性歌手とペアを組んで登場し「ハワイアン・ウェディング・ソング」(Hawaiian Wedding Song)を英語で歌うコーナーもあった。さらに中盤のゲームコーナーでは、悪ノリした白組キャプテン、マチャアキ(堺正章さん)がパイを投げ、ミーちゃんの背中と髪にクリームがべったりくっついてしまうハプニングも。この後まだ大事な歌の出番が控えているというのに、とんでもない司会者である。そして最後は全出演歌手のトリとして「渚のシンドバッド」を披露したピンク・レディー。たった1時間の中で、彼女たちの登場シーンがこれだけ用意されていたのは、もちろん視聴率アップが期待できたからに他ならない。



♪ビキニがとってもお似合い>な、<♪セクシ〜>ポーズのミーちゃんケイちゃん。まさにこの夜の「赤プリ」の主役であった。



曲の終わりに差し掛かるところで、美術さんがステージに沿って仕込んだ噴水が派手に噴き出した。おい、やりすぎだって!主役が見えなくなっちゃったよ。