DVDボックス「ピンク・レディー IN 夜のヒットスタジオ」には、彼女たちが番組に出演し、持ち歌を披露した37回の放送が収録されている。(それ以外に1980年10月6日放送の特集「サヨナラ山口百恵」の回にもゲスト出演しているのだが、残念ながらDVDには収録されていない。)通算37回目、最後の出演となったのは、解散前日の81年3月30日。特集「サヨナラ ピンク・レディー」として放送された。


前にも書いたが、キャンディーズの解散や百恵ちゃんの引退に比べて、ピンク・レディーの解散はムーブメントとしてなかなか盛り上がらなかった。それでも解散が間近に迫った3月後半ともなると、テレビ番組への出演が増え、ニュースやワイドショーなどでも集中的に取り上げられるようになる。当時の新聞ラテ欄などで、放送が確認できたものを列記してみる。ラテ欄に内容に関する記述があったものは、番組名(局名)の後ろに記した。


19(木) 19:45〜20:00

スター千一夜(フジ)<注1>

「今、別れの前に」ピンク・レディー


22(日) 11:00〜11:55

スター誕生!(日テレ)<注2>


23(月) 07:00〜08:30

ズームイン朝(日テレ)

さよならピンクレディー


23(月) 08:30〜10:00

奥さま8時半です(TBS)

未公開テープ聞かせますP・レディー


23(月) 13:15〜13:30

おしゃれ(日テレ)


24(火) 13:15〜13:30

おしゃれ(日テレ)

Pレディー着物艶姿


25(水) 21:00〜21:54

欽ちゃんのどこまでやるの!(テレ朝)<注3>

特別企画・新しい出発!!明日に咲こう花二輪…ピンク・レディー


26(木) 21:00〜21:55

ザ・ベストテン(TBS)<注4>


29(日) 11:00〜11:55

スター誕生!(日テレ)<注5>

500回記念大会①武道館に同窓生大集合


30(月)20:00〜20:54

【新】ザ・トップテン(日テレ)<注6>


30(月) 22:00〜22:54

夜のヒットスタジオ(フジ)<注7>

さよならピンクレディー


31(月) 07:00〜08:30

ズームイン朝(日テレ)

さよならピンクレディー


31(火) 15:00〜17:00

特別生中継!!さよならピンクレディー!(日テレ)<注8>

「熱狂と涙の50000人大フィナーレ」後楽園球場より完全生中継


31(火) 18:30〜19:00

ニュースレポート6・30(フジ)

ピンクレディー解散


<注1>

DVD「ピンク・レディー IN 夜のヒットスタジオ」にも「フジテレビ秘蔵映像」の一つとして収録されている。司会は坂本九氏。奇しくもアメリカ・ビルボードのシングルチャートトップ40にランクインした、ただ2組の日本人歌手が、司会とゲストという立場で顔を合わせたことになる。ここで内容に触れる余裕はないが、この時期のミーちゃんケイちゃんがそれぞれの思いを肉声で語った映像として、貴重である。


<注2>

言うまでもなく、彼女たちはこの番組からデビューした縁がある。また解散に際して、番組の池田文雄プロデューサーが何かと相談に乗っていた経緯もあり、解散直前のこの時期、2週にわたって出演し、最後のシングル「OH!」を歌った。映像は「Singles Premium」ディスク24(DVD)に収録されている。


<注3>

「スター誕生!」の司会者として、デビュー前から彼女たちを見てきた欽ちゃんこと萩本欽一氏が「明るく送り出してやろう」と企画。最後は「萩本家」に泊まる設定で、2人が布団に入ると「これからも頑張ってください」などと会場の観客たちが録音したメッセージが次々と流れ、ミーちゃんケイちゃんは思わず泣き崩れたという。


<注4>

ベストテンにランクインした訳ではなく、話題曲を紹介する「今週のスポットライト」コーナーに出演。「OH!」を歌う。


<注5>

放送500回記念で、番組からデビューした「同窓生」たちが集合。ピンク・レディーは前週に続いて出演した。やはり「OH!」を歌うシーンが「Singles Premium」ディスク24に収録されている。


<注6>

69年から放送されていた「紅白歌のベストテン」が前週で終了、新番組「ザ・トップテン」にリニューアルされる。ピンク・レディーは翌日のファイナルコンサートの会場、後楽園球場から中継で出演した。この時の映像も「Singles Premium」ディスク24に収録されている。(DVDのキャプションには「紅白歌のベストテン」とあるが、正しくは「ザ・トップテン」である)


<注7>

この後、詳述する。


<注8>

後楽園球場でのファイナル(解散)コンサートを生中継。次回以降に触れたい。



さて、ピンク・レディーとして最後の出演となる「夜ヒット」、2人は可憐な純白のドレスで登場。番組冒頭で、司会の芳村真理女史とこんなやりとりがあった。

芳村:何か思い出がありますか、「ヒットスタジオ」で?


 ケイ:あまりリハーサルできなくていつも本番飛び込みでね、いろんな先輩たちに迷惑をおかけして・・・


(そんな迷惑かかりませんでしたよ、と井上順氏)


 ミー:キャンディーズさんと共演したのが思い出に残っています


 芳村:この間百恵ちゃんのサヨナラの時に、あなたたちが目を真っ赤にして歌っていたのが、私、ものすごい印象的だった。でも、もうあなたたちが解散なのね


ミーちゃんが思い出だというキャンディーズとの共演は、77年6月6日のことだろう。残念ながら、DVDには収録されていないが、動画サイトに2組が交互に持ち歌をメドレーで歌っているシーンがアップされている。「夜ヒット」に限らず、当時はいろいろな番組で「キャンディーズVSピンク・レディー」と銘打ち、2組を共演させる企画が見られた。両者は宿敵のように言われることもあるが、実際には数多くの共演を通じて仲良くなり、ミーちゃんケイちゃんは、相談にも乗ってもらえる先輩、お姉さん的な存在としてキャンディーズを慕っていたようだ。


ところで、芳村女史が言及した「サヨナラ山口百恵」の回は、これ以上ないくらい豪華な出演者が集まったことで、伝説の回と言われている。


主役の百恵ちゃんにとっては「花の中3トリオ」時代からの盟友である森昌子さん、桜田淳子さんをはじめ、所属事務所の先輩・和田アキ子さん、親友のアン・ルイスさん、太田裕美さん、岩崎宏美さん、高田みづえさん、小柳ルミ子さん、新御三家の西城秀樹さん、野口五郎さん、郷ひろみさん、さらにジュリーこと沢田研二さん、五木ひろしさんも登場。そしてピンク・レディーの2人も百恵ちゃんを囲んで「絶体絶命」を歌った。


とにかく百恵ちゃんと同じ時代を走り、盛り上げてきたスターたちが勢揃いして、彼女との別れを惜しんだのである。それはある意味、スーパースター山口百恵の退場とともに、70年代歌謡曲黄金時代が終焉を迎えたことを象徴する光景だったのかもしれない。


では「サヨナラ ピンク・レディー」は、どうだったのか?DVDには収録されていないが、百恵ちゃんの時と同様、この日の出演者たちが、ピンクのヒット曲をメドレーで、2人と一緒に歌っているシーンが動画サイトにアップされている。曲目と歌手は次の通り。(敬称略)


「ペッパー警部」田原俊彦

「S・O・S」森昌子

「カルメン'77」杉村尚美

「渚のシンドバッド」近藤真彦

「ウォンテッド 」雅夢

「サウスポー」郷ひろみ

「UFO」全出演者(この曲だけ、一部の出演者の顔をぼかしてDVDに収録されている)


ピンク・レディーを送り出す特集にしては、ちょっと微妙な人選だったと言わざるを得ない。ピンクの全盛期に一緒に仕事をして彼女たちを良く知っていたのは、昌子さんと郷さんくらいだろう。


80年に歌手デビューしたトシちゃんとマッチは、ピンクとは同じアイドルでも世代が入れ替わっていて、接点もほとんど無かったはずだ。雅夢は同じく80年に「愛はかげろう」でデビューしたフォークデュオ。畑違いでもあり、やはり共演の機会はあまりなかっただろう。この頃、人気ドラマの主題歌「サンセット・メモリー」のヒットで注目されていた杉村尚美さんも、元々は「日暮し」というフォークグループ出身。2人に挟まれ「カルメ〜ン」と歌いながら、明らかに居心地が悪そうだ。


おそらく番組サイドとしては、ピンクとの関係性よりも、このとき旬だったり、数字(視聴率)が取れそうな出演者をキャスティングすることに重きを置いたと思われる。しかしその結果、今見ても違和感は否めず、2人が主役なのに置き去りにされている感じすらして、なんだか切ない。


メドレーの後、この日のクライマックス、「夜ヒット」でのピンク・レディー最後の歌唱シーンを迎える。歌は、22枚目のシングルとして3月5日にリリースした「OH!」。デビュー以来、数々のメガヒットを手がけてきた阿久悠・都倉俊一コンビが、最後の最後に帰ってきた!この曲についても書き出すと話がどんどん長くなるので、今日はひとまずこの辺で。次回に続く。