紫がかった黒っぽいスパンコールの衣装が、スタジオの照明を反射してキラキラと輝く。
「渚のシンドバッド」を「夜ヒット」で歌うのは3回目。1977年7月25日、この日のピンク・レディーは番組のトリを任された。歌い出しの♪アアアアアァのところで、一瞬ミーちゃんの声が聴こえず、あれっ?と思ったが、それもかえって生っぽくて味わいがある。
前回の出演から1か月の間に、芸能界では衝撃的な出来事があった。7月17日、キャンディーズが突然「普通の女の子に戻りたい」と解散を宣言した。この夏、キャンディーズがリリースしていたのは「暑中お見舞い申し上げます」。夏うたの名曲だが、オリコンチャートでは最高5位に留まり、「渚のシンドバッド」の勢いには及ばなかった。
そのシンドバッドにしても、6月末から3週間トップを維持するものの、7月18日にはジュリーの「勝手にしやがれ」に再び首位を奪われる。さらにここに百恵ちゃんも食い込んでくる。「イミテイション・ゴールド」だ。
7月25日付けのチャートでは、1位「勝手にしやがれ」、2位「イミテイション・ゴールド」、3位「渚のシンドバッド」となっている。ジュリー、百恵、ピンクの三つ巴の構図は、この年の賞レース、さらに翌年まで続く熾烈で華麗なる戦いの始まりだった。今思えば、なんと贅沢な時代だったことか!
さて、この日「夜ヒット」に出演したピンク・レディーは、翌26日、田園コロシアムで「サマー・ファイア'77」と銘打ち、野外コンサートを行った。「夜ヒット」で着ていた衣装は、実はこのコンサートのオープニングで着るものだった。(と番組でケイちゃんが言っていた)
1万人を超えるファンが集まり、ミーちゃんケイちゃんに熱い声援を送った。当時のスポニチの記事によれば、女の子のファンが増えたという。4月のコンサートでは圧倒的に男性ファンが占めていたが、この時は4割方が女性だった。記者は「着実にファン層を伸ばしている証拠であろう」と書いている。
「渚のシンドバッド」は8月15日のチャートでジュリーから首位を奪い返し、そのまま5週間キープ。ミリオン・セラーとなり、この年の年間売り上げでも1位に輝いた。