1977年の4月、ケイちゃんがNHKの番組のリハーサル中にステージから落ち、右脚を強打。腫れ上がった患部の膿を出す切開手術を受けるため、数日仕事を休むのだが、その休みに入る前日、ピンク・レディーの2人はテレビ収録を終えてから、深夜に新曲のレコーディングを行った。それが4枚目のシングル「渚のシンドバッド」だった。(近代映画社「ピンク・レディー メモリアルブック」に収録された「近代映画」の当時の記事による)
まさか、あの底抜けに明るい曲が、そんな状況で痛みに耐えつつ録音されていたとは驚きである。ほんとうによく頑張っていたんだね。
「夜ヒット」では、約2か月後の6月6日、発売日より一足早いお披露目となった。濃いブルーの衣装に身を包んだ2人。肌は少し小麦色に焼けている。海外へ行ってきたらしい。司会者から休暇だったの?と聞かれ、ミーちゃんがちょっと悲しそうに笑って首を振る。ハワイで雑誌の撮影があったようだ。

ご存知「渚のシンドバッド」は、夏にぴったりのノリノリで陽気な曲。さあ、わたしたちと一緒に踊って歌って、この夏を思い切り楽しもうよ!ピンクらしい「夏うた」に、日本中が「待ってました!」と盛り上がった気がする。振り付けも、女の子が可愛く踊るのに打ってつけ。あのイントロが流れてくると、もうじっとしてはいられない!
それにしても、ここまでを振り返ると、強烈なインパクトの「ペッパー警部」、親しみやすい「S・O・S」、ちょっとヘビーな「カルメン'77」、そしてみんなで乗れる「渚のシンドバッド」と、1曲ごとに違うタイプの曲を緩急をつけてリリースしているところがすごいなあと思う。阿久・都倉コンビもすごいし、土居センセイもすごいけど、まだデビューして1年も経っていないのに、どんな楽曲でも振り付けでも、しっかり自分たちのものにしていたミーちゃん、ケイちゃんはやっぱりすごい!
この年の夏、ついにピンク旋風は最大風速に達し、日本列島を席巻する社会現象にもなっていく。そして、歌謡曲の歴史において伝説となる、最も熾烈な戦いが繰り広げられた暑い夏となった