イタリアはユネスコの世界遺産の登録数が58と世界で最も多い国です。

その豊かな文化遺産と自然遺産は、古代ローマ帝国の遺跡からルネサンスの芸術作品、そして美しい自然景観に至るまで、多岐にわたります。

 

シチリア島には世界遺産が7つあり、イタリアの中で4番目に世界遺産の数が多く、ロンバルディア州(10)、トスカーナ州及びべネト州(8)の次に多い州になります。

 

 

シチリア島は地中海にある島であることから、イタリアの本土とはまた異なる民族と時代の影響を受けた建築と文化遺産が融合しています。

今回は2015年にユネスコの世界遺産に登録されたシチリア島の7つの世界遺産のうちの1つパレルモの「アラブ・ノルマン様式の建造物群」である9つの世界遺産の変遷とその歴史についてそれぞれ深堀し、詳しく解説してまいります。

 

パレルモの世界遺産の変遷と歴史

1. ノルマン宮殿とパラティーナ礼拝堂(Palazzo dei Normanni e Cappella Palatina)
ノルマン宮殿は9世紀にアラブ人によって建てられた城砦が基となっています。 1072年にノルマン人によって征服され、ノルマン宮殿は1130年に完成。12世紀に宮殿は、ノルマン王国の政治的な中心地として機能し、王室の住居として使用されました。この時代に多くの美術品や装飾が追加され、宮殿はその壮麗さで知られるようになりました。ルッジェーロ2世の時代に大規模な改築が行われ、現在の形に近い姿になりました。 その後スペイン統治時代(16世紀から18世紀)にも改築が行われ、バロック様式の要素が加えられました。 宮殿の外観は、堂々とした石造りの建物で、尖ったアーチや塔が特徴です。内部は豪華な装飾が施されており、特に美しいモザイクや壁画が見どころです。また、王の部屋や謁見の間など、当時の生活を偲ぶことができる部屋もあります。 ノルマン宮殿の最も重要な部分の一つは、サラ・ノルマンナ(Sala Normanna)と呼ばれる部屋です。この部屋は、アラブ・ノルマン建築の最高傑作の一つとされ、美しいモザイクで飾られています。  


パラティーナ礼拝堂は1130年ルッジェーロ2世の命によって建設が開始され、1143年に完成。 ノルマン王国ルッジェーロ2世が、宮殿内の礼拝堂として建設しました。 ノルマン、ビザンチン、アラブの要素が融合した典型的なシチリア・ロマネスク建築です。 ビザンチン様式の豪華なモザイクが施されており、アラブの影響を受けた木彫りの天井が見どころで、複雑で精巧な幾何学模様が特徴です。 カラフルな大理石が使用された幾何学模様の床も魅力的です。 聖堂内のモザイクの中でも、キリストの荘厳な姿が特に注目されるべき点です。 非常に珍しいアラブのムカルナス装飾は、礼拝堂の特徴的な要素です。 モザイク、大理石、木彫りなど、豪華絢爛な内装が訪れる人々を魅了します。












2. パレルモ大聖堂(Cattedrale di Palermo)
パレルモ大聖堂は1185年に建てられました。元は4世紀に建てられたキリスト教の教会が7世紀にヴァンダル人によって再建され、9世紀にはアラブ人のモスクとして改装、使用されていましたが、ノルマン人の征服後にキリスト教の大聖堂に改修されました。 12世紀後半再び再建され、ロマネスク様式が取り入れられました。 15世紀から16世紀にかけてゴシック、ルネサンス様式の要素が加わり、18世紀にはバロック様式の改修が行われました。 多様な建築様式が混在し、特にノルマン、ゴシック、バロックの要素が顕著です。 大聖堂には4つの塔があり、そのうちの1つは時計塔として使用されています。 大聖堂内には、ノルマン王朝の王族の墓があります。特に有名なのは、神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世の墓です。 大聖堂には、聖アガタの遺物を含む多くの聖遺物が収められており、他にも宗教的な宝物や芸術作品を展示する宝物室があります。特に金や銀の工芸品が目を引きます。







3. サン・ジョヴァンニ・デッリ・エレミティ教会(San Giovanni degli Eremiti)
6世紀に最初に建てられ、当初はグレゴリオス派修道院として使用されていました。 1136年、ノルマン王ルッジェーロ2世によってベネディクト修道会のために現在の形に再建されました。
16世紀にスペインの影響を受け、更なる改修が行われた後、19世紀には大規模な修復が実施され教会はその歴史的価値を再評価されました。 サン・ジョヴァンニ・デッリ・エレミティ教会は、アラブ・ノルマン建築様式の典型的な例です。その特徴的な外観として、クーポラと呼ばれる丸い赤い屋根が5つ並んでいることが挙げられます。またシンプルな四角形の鐘楼があり、そのデザインはノルマン風です。 内部は比較的シンプルで、アーチ型の天井や柱が特徴です。ノルマン時代の建築要素が色濃く残っています。 教会に隣接する美しい庭園は、かつて修道院の庭として使用されていました。

4. サンタ・マリア・デッラ・アミラグリオ教会(Santa Maria dell´Ammiraglio/La Martorana)
1143年に海軍提督の聖母マリア教会として、シチリア王国の宰相であったジョルジョ・ダンティオキアによって、彼の母親であるアンナに捧げるために建設された別名マルトラーナ教会は ノルマン王国の支配下で、教会は多くの改修や装飾が施され、その後、スペイン支配時代にも拡張が続けられました。 教会は歴史の中で何度か名前が変わりましたが、19世紀に現在の名称である「サンタ・マリア・デッラ・アミラグリオ」に定着しました。 サンタ・マリア・デッラ・アミラグリオ教会は、アラブ、ビザンチン、ノルマン、ロマネスクなど、さまざまな建築様式の影響を受けた複合的な建築物です。 教会の外観はシンプルで控えめですが、アラブ様式の影響が見られ、内部は非常に豪華で、モザイクやフレスコ画が壁や天井を飾っています。特にビザンチン様式の美しいモザイクが有名で、イエス・キリストや聖母マリア、聖人たちの描写が見られます。 教会の中心的なモザイクは、ビザンチン芸術の最高傑作の1つとされ、キリストの受難と復活、聖母マリア、聖人たちの生涯が描かれています。 また屋根の装飾はアラブの影響を受けています。









5. サン・カタルド教会(Chiesa di San Cataldo)
12世紀初頭にアラブ人の支配下で建設された説では、建設の年代は約1160年と推定されています。 教会は、建設者であるアラブ人の地元の支配者、マフムード・アル・カタリ(Mahmud al-Katalani)に因んで名付けられました。もう一説では1154年ころからノルマン王国2代目国王グリエルモ1世の宰相 マイオ・ディ・バリ(Majo di Bari)により指揮されたとも言われています。 18世紀にはバロック様式の改修が行われましたが、その後19世紀には元のアラブ・ノルマン様式に回帰する修復が行われました。 教会の外観は、石造りの平坦な壁、最も特徴的な要素の1つは、屋根の3つ並んだクーポラと呼ばれる赤い円錐形のドームです。これは、イスラム建築の特徴であり、シチリアの文化的多様性を象徴しています。 教会の内部には、アラブ・ノルマン様式のアーチや幾何学的な装飾が見られ、その美しさは訪れる人々を魅了します。

6. ジーザ宮殿(Palazzo della Zisa)
アラブ人によって9世紀に建設された城塞を基にしたジーザ宮殿の名前の由来はアラビア語で「アル・アジーザ」=「素晴らしいもの」という意味があります。11世紀後半、ノルマン王国の3代目国王グリエルも2世により1175年に完成しました。この時代に多くの美術品や装飾が追加され、宮殿はその壮麗さで知られるようになりました。 この宮殿は外観はノルマン様式のシンプルなデザインですが、内部はアラブ風のデザインと庭園を持つ夏の居館として建てられました。

7. アンミラリオの橋(Ponte dell´Ammiraglio)
12世紀 シチリア王ルッジェーロ2世の臣下 ノルマンの海軍提督ジョルジョ・アンティオキアにちなんで名付けられた橋はカルサ川を渡るために建設され、当時の主要な交通路の一部でした。橋は石造りの全長150mの12のアーチから成り立っており、それぞれのアーチは対称的に配置されています。このアーチ構造により、橋は耐久性と美しさを兼ね備えています。

8. チェファル大聖堂(Cattedrale di Cefalù)
12世紀初頭にノルマン王ルッジェーロ2世の命によって建設されました。 建設は紀元前1131年に始まり、数十年にわたって建設が続けられ、1240年代にようやく完成しました。 伝説によれば、ルッジェーロ2世が嵐に遭遇し、奇跡的にチェファルの海岸にたどり着いたことに感謝してこの大聖堂の建設を誓ったと言われています。 また同時に、ルッジェーロ2世がパレルモからキリスト教を伝えるためにシチリア北部の支配を拡大したことの一環として建設が行われました。 チェファル大聖堂の建築スタイルはノルマン、ビザンチン、アラブの影響を受けています。 大聖堂の外観は、堂々とした石造りの建物で、特徴的な塔やアーチが見られます。大聖堂の正面には2つの堂々とした塔がそびえ立っており、中央には華やかなポータルが設置されています。 ファサードには美しいバシリカル式のデザインが施されており、内部は美しいモザイクやフレスコ画で装飾されています。東側の祭壇のある後部には、イエス・キリストの壮大なモザイクが施されており、金色の背景にキリストが描かれています。このモザイクはビザンチン様式の影響を受けており、その美しさと保存状態の良さが評価されています。





9. モンレアーレ大聖堂(Cattedrale di Monreale)
モンレアーレ大聖堂は、ノルマン人の王ウィリアム2世によって1174年から1189年にかけて建設されました。建設の背景には、ウィリアム2世がパレルモの大司教との対立から、自らの権威を示すために大聖堂を建てることを決意したという説があります。また、彼はローマ教皇と良好な関係を築くために、聖職者の養成を目的としたベネディクト会修道院も併設しました。 ノルマン王ウィリアム二世によって建設されたこの大聖堂は、内部のモザイクと広大な回廊で知られています。 大聖堂の外観は、堂々とした石造りの建物で、大聖堂のファサードには、豪華なブロンズの扉があり、これには聖書の物語が浮き彫りにされています。 内部は、多くの美しいアーチや柱があり、美しい大理石の象眼細工が施されています。これらはアラブの職人によって作られたもので、幾何学模様や植物のモチーフが特徴です。 内部の天井は木製の梁で装飾されており、壁には一面に美しいモザイクが施されていて、これはビザンチン様式の影響を強く受けています。 総面積約6,500平方メートルに及ぶモザイクは、新約聖書と旧約聖書の物語を描いています。特に、中央の祭壇後部に描かれた「全能のキリスト」は、その圧倒的なスケールと精緻な表現で訪れる者を魅了します。



パレルモの世界遺産はアラブ、ノルマン、ビザンティン、ローマ、ゴシックの様式が融合したユニークな建築遺産であり、シチリア島の豊かな歴史と文化を象徴しています。訪れることで、中世のシチリアにおける異文化融合の歴史を感じることができます。

パレルモを訪れる際は、これらの世界遺産を巡りながら、その歴史と魅力に浸ってみてください。

 

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