中央銀行が金利を引き上げ、国債を売却してバランスシートを縮小するというのは並大抵のことではなく、FRBが4%程度(10年債)の金利引き上げで、1兆ドル以上のマネーを回収したことは、むしろ高く評価してよいだろう。

しかしながら、量的緩和策というのはマネーを市場に大量供給する政策であり、その副作用は大きい。

本当の意味で金融政策を正常化するためには、少なくとも相応の金利を当面の間、維持し、さらに市場から資金を回収する必要があることは、マクロ経済の理屈を知る人にとっては当然のシナリオといえるだろう。
 

だが、この当たり前の経済学的な知見が市場で十分に共有されているとはいえない。

FRBは、株価の上昇や景気拡大を望む市場関係者や産業界からの強い緩和圧力に常にさらされている。今のところFRBがこうした声に流されてはいないものの、市場が都合のよい解釈を行い、FRBの意図と市場の期待に乖離が生じているのは確かである。

こうしたズレが、年末から年始にかけての市場の乱高下につながっている。

市場関係者や産業界の一部は、世界的に顕著となっているインフレについて、原油価格や食料価格の上昇による単純なコストプッシュ・インフレであると主張している。

だがそれは、そうあって欲しいという「願望」であって、現実は異なる。