高校生らしきバンドマン3人が立たされたまま、店員さんにお説教されているような姿が。
ん?と聞き耳を立て、話を盗み聞きしてみると、高校生が店員さんに楽器のことを質問したのをきっかけに、そこからどうやら音楽への取り組み方があまいという内容にまで話が変わっていってしまったようだ。
見た目、50歳くらいの長髪ハードロック店員は「シールドだけいくら良いものを使ってもライブハウスのアンプなんて壊れてるんだから、良い自分のアンプを買わなきゃ意味ないよ!」「俺、色んなバイトで怒られてきたけど、そいつに俺は心の中でお前、ギター弾けねーだろ。俺はギターが弾けるから、俺はお前よりすげーんだよっていつも思って、人として強くなれたんだよ。」などと雄弁に語り、気持ち良さそうだった。
高校生は何となく真面目に聞いていた。
ようやく話が一段落し、高校生の1人が「すいません、そのアンプとギター、試奏させてもらえますか?」
店員はガッテンだ!とばかりに満面の笑みでギターを手に取り、自分の耳でチューニングし始めたのだが、なかなか手こずっている。3分、5分…。いつまでたってもチューニングが合わない。
高校生の表情があれ?って顔になり、明らかに3人からは疑いの目が店員さんに向けられている。
もうダメだ、初心者の高校生にならわかんねーだろetc、何を考えていたかはわからないが、じんわり汗ばんできた店員は中途半端なままギターを高校生に渡した。
ギターを受け取り、慣れた手つきでチューニングし直し、初心者だと思われていた高校生はイングヴェイ?スティーヴ・ヴァイ?ばりに早弾きフレーズを弾きまくった。
僕は店員さんの顔を見る事が出来なかった。鬼ヶ島で成敗される鬼にも鬼なりの悲しみがあるんじゃないかと色々考えさせられた。
僕はボソっと「すいません」と声をかけ、適当なシールドを持ってレジへ。案の定、店員さんにはガッテンだ!の表情はなかった。
心の中で僕はブルーハーツの「人にやさしく」を歌いかけたが、やめておいた。
気が狂いそう やさしい歌が好きで
ああ あなたにも聞かせたい
このまま僕は 汗をかいて生きよう
ああ いつまでもこのままさ
僕はいつでも 歌を歌う時は
マイクロフォンの中から
ガンバレって言っている
聞こえてほしい あなたにも
ガンバレ!
ああ あなたにも聞かせたい
このまま僕は 汗をかいて生きよう
ああ いつまでもこのままさ
僕はいつでも 歌を歌う時は
マイクロフォンの中から
ガンバレって言っている
聞こえてほしい あなたにも
ガンバレ!