幸太郎は今日があたしの誕生日だという事を覚えているだろうか?
去年も、一昨年も、付き合い始めた最初の年でさえも、私は誕生日を忘れられていた。
女の子にとって、記念日がどれだけ大切な日か、幸太郎は全くわかってない。この事で別れる別れないの大喧嘩をしたこともある。
親友のトヨちゃんの彼氏はとってもマメで、部屋を風船だらけにしたり、朝からバラの花束を届けてくれたり、いつもトヨちゃんを驚かせてくれるそうだ。
のりちゃんはディズニーシーに行ったって言ってたし、ちえちゃんなんか、夜景のきれいなレストランでティファニーの指輪をプレゼントされたとの事。
みんな「いーなーいーなー」って言いながら、「あたしはね~」って幸せ自慢しちゃってさ。
どれだけ自分が幸せで、どれだけ自分が愛されているか、みんなに言いたくてうずうずしてる。
それなのにあたしは、プレゼントどころか、記念日さえ覚えてもらってない。
幸太郎は仕事仕事で、あたしのことなんかどーでもいーんだ。
昨日だって電話ぜんぜん繋がんないし、もしかしたら浮気してるとか?
なんで誕生日なのにこんな嫌な思いしなきゃいけないの!?仕事もぜんぜん身が入らない!
今日は、5時ぴったりにタイムカードを押して退社。
外は雨。どんよりとした梅雨の空も幸太郎と同じで、私を憂うつにさせる。
携帯をチェックするが、留守電もメールも入ってない。怒りはピークに達し、ヤツの携帯に電話する。
もちろん留守電。“ピー”という発信音の後、私は周りの目も気にせず怒鳴りちらした。
「今日がなんの日か知ってるの?あたし誕生日なんだよ!それなのにひどいよ…あたしの事もう好きじゃないの?あたしはいっつも…」“プープー”思いを半分も伝えられないままTime out。
そのまま駅までとぼとぼ歩いた。駅に着く途中で幸太郎からの電話が鳴った。
「もしもし...」
でもその声は、ガラガラとしたまるで別人のような声だった。
「どうしたのその声?」
「あーちょっと風邪ひいた。最近忙しくて、ずっと会社に泊まり込みでさぁ~。それより誕生日おめでとう。」
私は待ってましたと、今夜の予定を提案する
「ありがとう!でね、今日の夜、」
言った瞬間、彼もあたしの話を食い止める
「ダメなんだ。今夜はどうしても、抜けられないんだよ。来週になれば落ち着くから…」
わたしはむかついて携帯を切った。彼はあたしより仕事が大事なのだ。あたしの誕生日は来週じゃない。今日なんだよ。今日ぐらい、好きな人と一緒にいたいじゃん。どうしてわかってくれないの?
泣きながら改札を通ると、彼からまた電話が掛かってきた。私は聞こえないふりをして、自宅に向かう電車に乗り込んだ。地元の駅に着くと、彼からメールが届いていた。
「さっきはごめん。今日、10時頃、お前の家の近所のファミレスに行くから待っててくれ。」
ファミレスって・・・。誕生日なのになんでファミレス?
約束の時間、わたしは歩いて10分くらいのファミレスで彼をまっていた。しかし彼は現れない。20分、30分時間だけが過ぎていく。携帯に電話しても留守電にもならない。とりあえず幸太郎の会社に電話をしてみる。電話に出たのは幸太郎の同僚の杉山さんだった。
「こんばんは、杉山さん、お久しぶりですね。絵里子です」
軽く挨拶をしたとたん、杉山さんのほうから言葉が飛び出してきた。
「幸太郎が大変なんだ!」
電話を切り表にでると、私は車の確認もせず道路に飛び出しタクシーを止めた。杉山さんに教えてもらった病院の住所を告げると、後はもう何も考えられなった。
大きなプロジェクトを初めてまかされた幸太郎は3日3晩、ほとんど寝ずに仕事をしていたそうだ。それがさっき急に
「どうしても行かなきゃいけないところがあるから、1時間だけ出てくる。」って杉山さんのバイクを借りて表に出た途端、会社の前で転倒し、そのまま救急車で運ばれたらしい。
杉山さんの話では、この仕事がうまくいけば自分にも自信がつくし、そしたら来週彼女にプロポーズしようと思ってるってうれしそうに話していたそうだ。
だから、プレゼントの指輪も、今日は誕生日を忘れていた事にして、来週渡そうと思ってたって。あなたはわたしとの未来の為にお仕事がんばってくれていたのに、私は「仕事とあたし、どっちが大事なの?!」なんて、しょっちゅうくだらないことであなたを困らせてた。
くだらない見栄張るために、記念日、記念日って大騒ぎして。
神様お願いです。指輪もディナーもいりません!会えなくても文句は言いません!だから彼を助けて下さい!記念日に何かもらったり、出掛けたりする事がほんとの幸せなんじゃない。自分が思う人が思ってくれるだけで毎日が大切な日になるんだ。お願い!神様!彼を連れていかないで!!
1m先も涙で曇ってみえないまま、私は病院の廊下を全力で駆け抜けた。4Fの角部屋。1つだけ明かりのついた病室が見える。すごい勢いで飛び込むと、彼がベットから起き上がって目をまんまるにしている。
「びっくりしたー」
びっくりしたのはこっちである。
「意識不明って…事故って…」
文法が出てこない。
「いや、会社の前で猫が飛び出して来てさー。転んだとこまでは覚えてんだけど、起きたらここだよ。3日くらい寝てなかったから、ぐっすり寝た気がする。」
体全身の力がぬけてしまい、わたしはその場にしゃがみこんだ。とりあえず骨折などはしておらず、今日は泊まって明日検査が済めば昼には退院出来るそうだ。看護婦さんが説明を終え出て行くと、彼はわざとらしく話を切り出した。
「そうそう、お前今日誕生日だよな。すっかり忘れてて、何も用意してないんだよ。だから来週改めてということで…」
泣き出すか?ブチ切れるか?覚悟は出来てるといった彼の表情を見て、私はただ
「ありがとう。来週楽しみにしてるね」とやさしくほほ笑んだ。
拍子抜した彼は怪訝なな顔をしてる。そんな彼に私は
「今日が何の日か忘れたの?いつまでも子供じゃないよ。」と余裕のVサインをして見せた。
 5月




845分に出社。


9時から12時までひたすらかかってくる“芸能人御用達!ふるさといいもの
便”の電話注文受付とクレームの応対に追われる。


休憩は一時間。そこそこ仲のいい派遣仲間と食堂でご飯を食べ、昨日観たド
ラマの話と、芸能人の別れ話でお茶を濁す。



1
から
5
まで、また同じことの繰り返し。残業は許されないこのご時勢。
1645分にはお客様応対は終了させ、注文票の確認をし、5のチャイムとともに
“お疲れ様でした”と挨拶をして、用もないのにイソイソ帰る。






氏いない暦
3年。
女だらけの職場で出会いがある訳でもなく、趣味もなく、この生活も気づけば
2年半。半年毎の契約更新を繰り返し、次の契約更新をすればまた半
年、同じ事を繰り返す事になる。


確か半年前も、1年前も、同じ事を考えていた気がする・・・





 




『今、
ヘッドハンティンッグの話が来ていて悩んでいます。給料もポジションも今より確実に上がります。でも、今の職場はみんないい人ばかり
で、裏切るなんてとても出来ません。どうすればいーのかな・・・』





 




『麗子さんはいい人ですね。前にも同じような誘いが来た時、大きなプロジェクトを任されているのに途中でほっぽる訳にはいかないと断った
事がありましたね。


とても責任感の強い、勇気のある人だと感心しました。


でもね、麗子さん。チャンスは限られた人にしか来ないと僕
は思います。


前にも言ったように、僕はモデルのオーデションを受けては落ち、受けては落ちを繰り返し、やっと掴んだチャン
スがスーパーのチラシモデルです。


人を大切にする事ももちろん大事です。でも、麗子さんの才能を生かせる場所があるなら、自分の可能性も大切にしてほしいと僕は思います。


あっ、偉そうな事言ってスミマセン。。。』





 




JINくん、返信ありがとう。JINくんの言う通り、
回のお話は前向きに考えたいと思います。そろそろ飛行機の時間が迫っています。また、日本に戻ったらメールしますね。お仕事、がん
ばって!』





 




PCを閉じて、TVをつける。見たことのないお笑い芸人が、笑えないネタを惜しげもなく披露して審査員からハナマルの評価をもらっている。





“才
能ないくせに
...





スー
パーで割引になった惣菜をつつき、缶ビールを飲みながら
TV
向かって意見する。これも日課になっている。





 





も、
PC
中の“麗子”は違った。





彼女は世界を飛び回り、次々に企画を成功させ、仲間からの信頼もあつい素敵な女性。





大富豪からのプロポーズを断り、大会社からのオファーを断り、いつか独立して自分の会社を持ちたいという野望を持っている。それがもう
一人のあたし、麗子。








半年くらい前のことだった。ヒマつぶしに、出会い系サイトを見ていると、ブルーグレーの目のアップの写真が目についた。





自己紹介の欄を見ると


JIN;
デル、彼女募集中、年上好き》 と書いてあった。






う見ても、おばさんを騙すホストの文章だったけど、おもしろ半分で自己紹介文を返信した。それが
JINとの出会いだった。



子という偽名を使い、適当に仕事の話をでっち上げ、自分の人生を語るのはなかなか気分がいい。





JINは自称モデルの25歳。父がドイ
ツ人、母が日本人のハーフで、両親の離婚後、日本の祖母の家で暮らしていたらしい。今はバイトをしながら、モデルになる為の修行中だそうだ。





あたしはネットの出会いは信用してない。自分がこうだから、相手に期待はしていない。どうせJINの正体なんてどっかの頭の禿げた腹のでたオヤジか、
きこもりのオタク男かなんかに決まってる。それでもあたしは構わない。会う気もないし、相手の現実に興味もない。





ただ、自分の乾いた生活にちょこっと水分が欲しいだけ。





たしが悩んでいるのは、麗子のように大企業に行くかどうかじゃない。


派遣を半年更新するかどうかだ。ここであたしが辞める
と言っても、引き止められる訳じゃない。あたしの代わりなんていくらでもいる。






際あたしは悩んだ振りしてるだけで、来週の月曜日には躊躇いもなく更新の書類にサインをしてるんだろうな。





これから学校に行って資格取るとか、正社員の面接受けるなんて...ムリムリ。今更そんな気力も体力もございません。





 





の日の朝、
JIN
らメールが来ていた。





『麗
子さん、やったよ!ずっと狙ってたブランドの専属モデルのオーディションに受かったよ!それで急遽、フランスで行なわれる
大きなショーに出られる事になったんだ。夢みたいだ。これもみんな麗子さんのおかげだよ。あきらめかけた事もあったけ
ど、いつも麗子さんのすごい話を聞かせてもらって、僕だっていつかは!って思えるようになったんだ。






して僕は決めていた。自分に自信がついたら麗子さんに会いたいって。






日の夕方、パリへ経ちます。もし、少しの時間でも空いていたらぜひ一度会ってもらえませんか?明日の
12時、前に麗子さんが散歩の途中でよく休憩するっていってた東京駅のそばの噴水の前で待っています。





明日は麗子さんの誕生日ですよね。僕の目印は麗子さんに似合う赤いバラの花を手に持っていきます。来てくれる事を願っています。』





 




あり得ない。どうせ、メール書くのが面倒になってきたから、最後にどんな女か見てやろうって魂胆でしょ?その手には乗らないって。





だいたい散歩で東京駅行ける距離になんか住んでないから。




明日が誕生日なのはホントだけど、いくら予定がないからって笑われに行くほど暇じゃない。





なんて思ってたはずなのに、来てしまった...
だって万が一、万が一相手が来てたら?





どんな顔して“僕、モデルです”なんて言ってたか見てみたいじゃない。






しかして相手に彼女がいないのは本当で“嘘はお互い様”なんて言って飲み友達くらいにはなるかもしれないし、少なくとも誕生日を一人
で過ごさなくてすむかもしれない。






待はぜんぜんしてないけど、でも興味はある。




さすがに指定の場所には行けず、噴水の目の前にあるオープンカフェで待機した。





そろそろ12時になる。ここは待ち合わせとして使う人が多い。その中でもめぼしいのが二人。一人はサングラスに黒いハンチング。黒いス
カーフをしたモデル風の男。もう一人は背が
180cm
くらいある、ジーンズにシャツというラフな格好の男。どちらも、キョロキョロしながら立っている。しばらくすると、ジーン
ズの方には彼女らしき女が現れ、二人で去っていった。ハンチングの方を見ると、いつのまにか、男同士で手を握って楽しそうに談笑して
...
人ともパートナーがいたって事で・・・はずれか。






し奥の方を見ると、おしゃれな街には似つかわしくない風貌の男を発見。よれたトレンチコート、ぐしゃぐしゃな髪、黒縁眼鏡にニキビ
面。手には紙袋と
...
ラを一本持っていた。





“くっ
くっ
...
思わず笑っちゃったよ。現実と、何かを期待していた自分に。





まぁ、
わかってはいたけどね。こんなもんだよね。




時間はもうすぐ1時。
彼は帰ろうとしない。このまま帰ってもよかったけど、恥を忍んで来てくれた彼の勇気を称え挨拶だけはすることにした。






りのコーヒーを飲み干し、店を出ようとした時、息を切らせながら走ってくる男性に気がづいた。





栗毛色の髪、ブルーグレーの瞳。すらっと伸びた手には大きなバラの花束を持っている。“麗子さん!麗子さんはいませんか!!”
水の前は一時騒然となった。





そんな事は気にせず“すみません。腰までの黒い髪で、身長が165cmくらいの女性をみませんでしたか?”と近くの人に聞いて回っている。その男性は私が以前JIN
言った麗子の特徴をそのまま言っていた。間違いない、
JINだ。






は席に座り直し、花束を担いだまま座り込む
JIN
うつむきながらチラチラ見ていた。






れから1時間経ち、
2
間経ち、
4
を回ったところで私は決心した。






も低く、パーマがとれかかってパサパサの枝毛だらけの髪だけど。名前も麗子じゃないけど、彼に一言“がんばって”ってどう
しても言いたかった。店を出てゆっくり彼に近づく。






を掛けようとした時、彼から声をかけてきた。




“あ
の、すみません。僕、ここで人と待ち合わせをしていて。でも、渋滞で一時間も遅刻しちゃって。もし、あなたがここで人を待っている間
に黒髪の、麗子さんて言うんですけど、女性が来たらこの花を渡してほしいんです。僕もう飛行機の時間で行かなきゃ行けなく
て、すみません、お願いします!!”






ごい勢いでしゃべりまくって、花束を私に預けると、すごい勢いでタクシーを捕まえて行ってしまった彼。






ンとにギリギリまで待ってくれてたんだろうな。





たしは100本以上のばらを抱きしめながら一気に力が抜けてその場で座り込んでしまった。バラの花言葉は『真実の愛』。それなのに、
私は何一つ、
JIN
真実を伝えていなかった。情けなさと申し訳なさと、切ない気持ちが込み上げてきてヒックヒックしながら泣いた。






としきり涙を流したら、こんな事してる場合じゃないって気がついた。





明日、派遣の契約を断ろう。それから美容院に行って髪切って、職安に行こう。


社員の仕事探しながら通信で資格を取ろう。きっと出来る。
そして自信がついたら
JIN
会いに行こう。麗子に負けないくらい赤いバラが似合う女になって。





誕生日の決心を100本のばらに誓い、来た時とは違う自分になったような新しい気持ちで家路についた。





4月





いつもの日曜日。


いつもの駅で降りると、いつも彼は先に着いていて、そして目の前の大きな時計台を見つめていた。





“ポ
ン”っと肩を叩くと驚いた顔を見せる彼。


またぼーっとして!どうせミニスカートの子でも探してたんでしょ!”


そんなたわ
いもないケンカからいつもデートは始まった。





 駅から続
く長い遊歩道。この季節は桜がきれい。花びらがひらひらと舞い落ちて、まるでピンクの絨毯のよう。





その上を、手をつないでブラブラ歩く。





日は彼のおうちにお邪魔することにしたので、彼のお母さんが大好きなたい焼きを買っていくことにした。





 角を曲が
ると、甘いあんこの香りが漂ってくる。


彼の唯一苦手な食べ物、それがあんこ。


小さい時、たい焼きのあんこが喉に詰まって死ぬ思いを
したそうだ。





 それ以
来、たい焼きはあんこではなくカスタードを選び、食べる時は必ず二つに割って確認してから食べるようになったらしい。






い焼き屋のおばちゃんに、つぶあん2個とこしあん1個、それからカスタード1個を注文する。学校帰りの買い食いは、だいたい、たい焼
きとコーラだった。






きたてのたい焼きを手に店を出ると、いつもそこに彼の姿はない。






かいにある靴屋をのぞくと、彼は決まって、キラキラした目をしながら、しゃがみ込んでスニーカーを物色していた。


そして私に気づく
と、彼はいつもいたずらがばれた子供のように持っていた靴をそーっと売り場に戻すのだ。


私には、似たような靴をいっぱい
持ってるくせに、また新しい靴を買おうとしてる彼の気が知れなかった。





 川岸を歩
くと、夕焼に彩られた空が一面に広がっていた。


うちの高校の野球部が野太い声を上げてランニングしているのが見える。


公園を横切れば彼の家が見えてく
る。





そういえば、ここに来るのはずいぶん久しぶりかもしれない。




“ご
めんください”


声をかけると、少し年をとった彼のお母さんが顔をだした。





 私の顔を
見るなり、おばさんの目からは涙が溢れ出す。それから


お父さん、みっちゃんが...みっちゃんが来てくれたわよ!”と居間に向かって叫んだ。





 中から出
てきたお父さんの髪は白くなっていて、2年の月日が経っている事を思い知らされる。





“よ
く来てくれたね。シンのヤツも喜ぶよ。”




 力なく微
笑むおじさん。





“あ
の、たいやき買ってきました。おばさん好きですよね?”




言葉をだすのはここまでが精一杯だった。




 





年前の今日、しんちゃんは事故で死んだ。




 私の誕生
日、デートの待ち合わせに向かう途中に飲酒運転の車に跳ねられ
...即死だったらしい。





あれから2年。


未だに彼の死を受け入れられない私は、毎週日曜日、彼と過ごした散歩道を一人で歩き、思い出の中の彼と変わらない生活を
過ごした。





 でも、そ
れもそろそろ卒業しないといけない。





 彼の遺影
18才の
あどけない笑顔のまま。





 私は今日
で二十歳になった。お線香に火をつけ、手を合わせる。





 そして彼


“今日から私は大人の女になるんだからね” と宣言した。





 線香の煙
の向こうで、彼の顔が“なに言ってんだか
...
と、呆れ顔になっているようだった。


それからお土産で買ってきたたい焼きを二つに割って中身を確認してから、彼の仏壇にお供えし、もう一度手を合わせて立ち上がった。






の時“誕生日おめでとう!”って声が聞こえた気がして振り返ると、そこには無邪気に笑うしんちゃんの写真があった。



私は少し大人っぽく微笑んで、彼の部屋を後にした。
少し前の今日と言う日に、あなたは命という名の初めてのプレゼントを抱き締め生まれてきました。

その日から、毎年やってくるあなたの記念日。


少し記憶をたどって見て下さい。

その日、あなただけに起きた、なにか特別な出来事が

ありませんでしたか?


人の温かさを感じたり、大事な決心がついたり、


しい1歩が踏み出せたり。


そんな素敵なプレゼントが届く特別な日。

ささやかですが、あなたにこの本を送ります。

今日があなたにとって最高の記念日になりま
すように。
 





         Happy Birth day to you!!