苦いからこその味わい | 木蓮日記

木蓮日記

いにしえの都から各地を流れて現在は東北での生活。ぼちぼち更新していきましょう。

三軒茶屋にひっそりと佇む
ビアバー・香菜里屋。
今夜もほろ苦い謎をマスターが
静かに紐解いていきます。

『桜宵』 北森鴻
講談社文庫

三軒茶屋のビアバー・香菜里屋。
マスターが供する絶妙な肴と
ちょっとした謎解きが
この店の名物。
離れて久しい故郷の店の
開店15周年記念に招かれた男が
感じた違和感、
滅多に家を空けることのなかった妻が
何故かこの店に託したプレゼント、
『黄金色のカクテル』を求めて
都内のバーを訪ね歩く男。
そして10年ぶりに約束の店で
再会した男女が秘める思いとは。
それぞれの謎をマスターが
静かに解き明かします。

『花の下にて春の死なむ』の
続編となる短編集です。
前巻と同じくバーでの会話から
マスター・工藤が謎を解く構成。
派手な場面はないけれど
静かに苦く心に残ります。
特に表題作の『桜宵』のなんとも
やるせない切なさと
巻末の1編のどうしようもない
すれ違いの悲しさは
ほろ苦いというしかないのかも。

解き明かされた謎の結末は
ほろ苦くて重いですが、
物語全体のトーンは
ちょうど良いくらいのほの明るさ。
バーでの会話がなんとも楽しそうで
ホッとします。
そして工藤さんの料理の
美味しそうなこと!
「ちょっと作ってみようかな?」とは
思えないのが難点ですが、
常連さんが料理目当てなのも納得。
こういうお店があるのって羨ましい。
また続きを読みたくなりますね。