本当の敵は? | 木蓮日記

木蓮日記

いにしえの都から各地を流れて現在は東北での生活。ぼちぼち更新していきましょう。


入れ替わりを素材にした作品は数あれど
その中でも緊急度合いはピカイチ。
それもそのはず、入れ替わったのは何と⁉︎

『民王』 池井戸潤 講談社文庫

ある日いきなり中身が入れ替わった
現職総理大臣とそのドラ息子。
息子は親父として国会へ、
父親は息子として大学、そして就職活動へ。
それぞれの場で今まで知らなかった互いの
一面を知り、
様々な世の理不尽に立ち向かう二人。
果たしてこの入れ替わりに仕掛けられた陰謀とは⁉︎

いや~。池井戸さんにしては珍しくコメディタッチな
作品でした。
それでもしっかり勧善懲悪だし
考えさせられる池井戸節は健在。
入れ替わりの原理など
ツッコミ所は数々ありますが、
なかなか楽しく読めました。

とにかく、モデルが明白なのも
楽しめる一因でしょうね。
そして、政治家や国会の抱える問題点、
あるいは若者たちが直面している問題点なども
ステレオタイプにわかりやすい。
気になったのはドラ息子、バカ息子として
登場する翔が
真剣に将来を考えてる事が早々に判る点でしょうか。
バカ息子っぷりは最初の部分だけだもんね。
(いやまぁ、相当なバカっぷりですが)
陰謀の黒幕もかなり早くから見抜けるので
ミステリー的なハラハラ感は薄いかもしれません。
それでも後半からはグイグイ惹きつけられて
目が離せない展開です。

息子として過ごし、
国会で答弁する翔の言葉を聞いて
初心を思い出す総理大臣。
なぜあの頃の気持ちのまま政治が出来なくなったのか。
慣習や利権、党内外の権力闘争、
そして揚げ足取りのマスコミ。
様々な理由が語られ、何ともやるせない気持ちに
なります。
ただ選ぶ側、国民にも原因はありますよね。
投票率の低下など政治に関する無関心などもそうだし。

こういう時に思い出すのは旦那の故郷で。
元首相の地元なんですね。北陸の某県。
おまけに母方の伯父さんが後援会長を務めてたという
関係の深さ。
前回の政権交代とその後のドタバタの時に
「◯さんだったからこの地域も発展したんだし
道路も次々に作ってくれたんだ。
×党なんかになったらもう道路もなんも作ってもらえん。
どうするんだ、そんな事になったら」的な会話が
普通に交わされてるんですよね。あちこちで。
これを聞いて
「あぁ、本当にまだまだ”オラが村の先生様”って
感覚なんだなぁ」と思いました。
だってね、総理大臣なんですよ?一国の。
それなのに国際社会での対応どころか
日本全体を考えるでもなく
あくまで【地元の発展】だけを期待してるわけです。
それを期待して後援する、投票するんだ…。
もちろんそれだけ、ではないとは思いますけれど。

そう考えると支援をもらうためには
地元優先にならざるを得ない。
それも何だかなぁ、と思っちゃいますね。
県会議員でも「国会議員の◯◯先生との繋がりがあるから
△△の認可などで有利だ」ってのが
演説で出てくるんですもん。
これはまぁ田舎特有かもしれませんけどね。
私も一ヶ所だけしか見てない訳ですから。
ただこの感覚だと。
「日本全体を考えての政策」を実行して
それが地元に不利益をもたらす場合。
一気に支援を受けられなくなっちゃいますよね。
こういう点も日本の政治の問題点なんじゃないかな?

なんて事を思いつつも。
物語は楽しく読めました。
池井戸作品にしてはかなり軽めなので
気楽に読めるのも良いかもしれません。