地震大国・日本において
火山活動や津波の予報は重大な意味を持つ。
そのデータに何か隠されているとしたら?
『震源』 真保裕一 講談社文庫
地震で発生した津波のデータを読み違え
誤報を流すミスが発生。
担当者は責任を取り異動となる。
数ヶ月後、同僚が彼の元を訪ねると
彼は退職し姿を消していた。
同じ頃、同窓の大学教授も地震観測のデータを
持ったまま失踪した事が判明。
果たしてそのデータに隠された陰謀とは⁉
いやぁ、なかなかの読み応えでした。
ずっしりした感触。
国家的陰謀をめぐるサスペンス部分と
同僚の行方を追ううちにその陰謀に巻き込まれる
地震火山研究官・江坂の行動も
ハラハラドキドキですが、
そのストーリーを支える地震観測や火山活動、
津波に関するあれこれがとても興味深いです。
真保さんは他の作品でも
こういった特殊な、馴染みの薄い職業についた
人物の描写に定評がありますね。
今回も全く知らなかった地震観測に関する知識が
物語の雰囲気を盛り上げます。
地震と火山に関する部分は楽しめましたが、
国家的陰謀に関しては少々尻切れとんぼかも。
登場人物が多いせいかもしれませんが、
主人公である江坂以外の印象が薄いんですね。
陰謀を阻止するために動いてるグループの
印象が散漫で薄いのが残念。
誰が裏切り者なのか、黒幕は誰なのか、
その目的は、とグイグイ引っ張られるんですが
結末がちょっと拍子抜け。
警察関係者にも感情移入して読んでいただけに
残念でした。
視点を江坂に固定していた方がわかりやすいんですが、
それだと迫力不足になるのかな?
初出が1993年ですから約20年前ですね。
阪神大震災よりも前に書かれています。
当時と現在との違いを感じる場面も多かったです。
携帯電話がなかったり、Eメールを使わず
FAXが情報伝達の中心だったり、
CDRではなくフロッピーディスクが登場したり。
あの頃はそうだったなぁ、と懐かしく
思い返す場面も多かったですね。
技術的な進歩はかなりあったようですが、
地震観測や予測の困難さは今も変わりないでしょう。
気象庁や専門家、研究者のハードワークも。
こういうエンターテイメントで描かれると
雰囲気がよく伝わります。
これからも多くの人が
作中の江坂やその同僚たちのように
必死で仕事をしている。
その事を忘れないようにしたいと思います。