今年も人間ドックの日がやってきた。息子が勤務する会社の近くにある病院を選んでいるのは、年に一度、この日だけは、息子の出勤時間に合わせて病院へ向かうためだ。エンジンをかけ、息子の車を追いかける。

 

君は来春、転職して、一人暮らしをする予定だから、こんな風に車を走らせるのも、今日で最後なのかな・・・

 

車窓を流れる景色は、あの日と変わらないはずなのに、私の心は、まるでタイムスリップしたかのように、色とりどりの思い出で満たされていく。

「ママ、早く!」 「これ買って!」 「おばあちゃんのお家、もうすぐ?」

小さかった息子の声が、車内で響き渡る。買い物へ行く道、おばあちゃんの家へ向かう道、友達の家に送り届ける道、そして、汗を流して練習に励む野球場への道。助手席に座っていた小さな手、時には後ろでぐずっていた声。そのすべてが、鮮明によみがえってくる。

 

あんなに小さかった君は、いつの間に、こんなに大きく、頼もしくなったのだろう。いつの間に、自分で車を運転し、仕事へと向かうようになったのだろう。いつの間に、私が君の車を追いかけるようになったのだろう。

 

温かい喜びと、波打つような寂しさが、胸の中でせめぎ合う。どんな時も隣にいた君に、今はもう追いつけないような、そんな距離を感じてしまう。

 

会社への交差点。息子の車は、左折して職場へ。私は、そのまま直進して病院へ。 ふと、涙が頬を伝う。

 

でも、この涙は、悲しみだけではない。 君の成長を、こんなにも近くで見守り、感じられたことへの感謝。そして、これからも、それぞれの道を歩みながら、見守り続ける決意の涙。

ねえ、君。子育ては卒業しても、母として、君を応援する気持ちは、いつまでも変わらないよ。 今日は、快晴!さあ、新しい季節に向かって、アクセルを踏んで行こうか!