こうして2日目の終盤、2月23日(土)の朝には事実上ほとんどが
チート対局という異常事態に陥っていった。
もはや正常な大会運営は不可能。「おいおい何を言っているんだ君は。
じゃあやる気のないって言われてるこっちの方が高い評価点を持っている
事実をどうやって説明するんだい?」と言いたくとも手練は多勢に無勢で
どうしようもなかったかもしれないが、運営には伝家の宝刀が残されていた。

 

つまり、大会を中止する。

 

何が起きているのかはログで把握していたし、ともすると開発用や
開発者自身の私有アカウントまであったかもしれない。ともかく、
運営側はプレイ環境が崩壊していることに気づくことは出来たはず。
そして規約にも「正常な運営ができなくなったら大会を中止したり、
以降の開催を見合わせることがある」と警告していた。何しろ、前身の
オンラインゲームで1回やっている。だから大会を中止してもよかった。
いやその後の通常運営まで考えたら、土曜日のデイリーメンテナンスで
大会中止の為の設定変更を行うべきだった。

 

ただし。
チート行為が皮肉な事態を引き起こしていたのもまた事実だった。

私の成績の動きが端的に表しているとも言える。

初日。スタートダッシュで一気にリーディングボードの一番上近くまで

駆け上がる-但し、その事実に気づいたのは金曜日の仕事を終えて

帰宅した後、デイリーメンテナンス時点で16位の中間成績を見た時だ-が、

正常な環境の元では後が続かず21,400目前で伸び悩む。2日目は

急に評価点が伸び始めることで-「今対戦相手がミスをしたな」程度の

認識はあったが-すっかりいい気になってしまうが、ある常連から

「ポイント低いの?」「やる気があるとは思えねえ~」などと言われるまで

デマが流布して、環境がおかしな事になっていることには気づかなかったのだ。

ちなみにこの時点での評価点。私の21,754に対して常連君は21,500台。

10時時点でその点数を出していたのは10人くらいしかいなかったが、

本当に点数が低いのはどっちだ、やる気がないのはどっちだ。

しかも「不当なプレイ」の結果、この試合で私の評価点は38点上積みされた。
結局の所、チートにかかわらずに真面目に打っていたプレイヤが上位を
突っ走る中、チートに積極的なプレイヤには物の見事に成績が頭打ちに
なり、何が起こっているのかさっぱりわからなくなるインガオホーが
待っていた。運営も環境が崩壊しているのは一時的な物で、トップ1%の
打ち方がまるで違うことに気づけば正常化すると、楽観視していたのかも
しれない。
ともかく、土曜日の10時。デイリーメンテナンス明けと同時に、大会は
再開してしまった。そして、勝利の方程式を信じ込んでいる常連がまた
チート行為に走る。もちろん、正常化なんてするわけない。
むしろ手練の方に気がかりな動きが出始めた。呆れて大会から足が
遠のいてしまった。
自浄能力の欠如も明らかになったのにも関わらず、日曜日のデイリーメンテナンス
でも大会の打ち切り処理は行われなかった。次々と手を引いていく手練。
そして、2月25日(月)の朝9時を迎えた。

 

史上最低の大会は、一見穏やかに終わってしまった。

 

もし「不正行為が酷くて目も当てられないので大会を中止する」
と言っていれば、常連が自分の姿勢を考え直すきっかけになった物を。
尤も、全く無策だったというわけでもなかった。この次の花札大会は
その場限りのペアを組む方式だった。これが意外にも有効で、環境が
「ほぼ」正常化する効果を得られた。あるいは対局数を25試合や40試合に
制限して、チートをやっている暇を与えなかった。しかし、運営の
発想で最も効果があったペア方式は1回限りだったし、そもそもチート行為に
対して甘い対応をしたことが間違いだったのである。