先日は、
にてクレヨンについて書きました。
日本では小学校に入ると図画工作があるので画材を使うことになりますが、幼稚園や保育園でもそういった物を使用します。絵については描きたいものを再現してみると言う部分からスタートするので 【 考えて再現する 】 という 【 指示書の内容を再現するのではない部分から始める 】 と 【 考えて作る 】 という最初のスタートラインが作れますが、多分、この状態だと 【 思った形にならない 】 と言う弊害が出ます。
その為、 【 思い描いたものを再現する術 】 として 【 画法 】 などの技術体系が存在しているわけです。小学校の図画工作でも 【 課題に対して何をすればいいのかを考えて目的となるものを用意してそれを完成させる 】 と言う 【 作る 】 と言う作業を行うわけですが、この際に 【 画材の面白い特性 】 を使った技法を体験します。
小学校の図画工作でも
■ デカルコマーニ
■ スクラッチ
■ バチック
と言った画材特性を使った表現方法を学習しますが、こうした技法によって単体の画材の特性や複数の画材の特性を使った描き方を学ぶことになります。
この中のデカル小マーにバチックは絵の具を使うので作業を始めるまでに少し準備が必要ですが、スクラッチの技法についてはクレヨンだけで始めることが出来るので、クレヨンで描ける紙とクレヨンがあれば試すことが出来ます。
そこで今回は、クレヨンを使ったスクラッチの技法について書こうかなと思います。
クレヨンは学童用の画材があるので比較的お求めやすい価格で流通していますが、製品に寄って特性が違うので、色ののりが違う場合があります。個人的には色数が多いほう物を選んだほうがいいような気がしますが、この理由は至って単純で 【 均一に塗る場合の色の選択肢が増える 】 ためです。
幼少期にクレヨンを使う場合、できるだけ 【 均一に塗る 】 と言う状態を体験して色ムラによる違いがわかる状態に鳴っておいたほうがいいので、単色で
■ 単色ではみ出さないように塗る
■ ムラなく綺麗にどの色でも塗れる
ようにしておくと、 【 色の影響を受けずに均一に塗れる 】 ようになります。これは、周波数成分の影響を受けずに均一に塗れるようになると、混色しても同じことが出来るようになります。その為、モノトーンも含めて色彩を扱う際には 【 均一に塗る能力 】 が必要になります。
この均一というのも 【 比較 】 と 【 等式の構築 】 になりますから、
■ 目的の状態 : A
■ 現在の状態 : A1
■ 処理そのもの : X
とした際に、AとA1を比較した際の過剰と不足の状態で判定を行って、処理そのものであるXを追加するものになり
ます。つまり、
■ A>A1 : +x
■ A<A1 : -x
と言う処理を行い、最終的に 【 A=A1 】 と言う状態にする作業を行います。この時の認識も色を扱っていくと違いが細かく判別できるようになるので、自然と均一に寄せることが出来るようになります。
こうした処理は 【 調整 】 になりますが、 【 決まった結果が用意されており、ソレに近づくように少しずつ変数の調整をする 】 ことになりますが、機械の制御だとこの制御方法は 【 フィードフォワード制御 】 になります。
こうした調整をする場合、どのように塗ればいいのか?を考える必要がありますが、バニッシュを使って濃く塗ると行うと基本的に均一に近い状態になりますが、この状態だと鉛筆や色鉛筆だと用紙との段差が出来たり消えにくくなるので、鉛筆の場合だと 【 薄い色を重ねて濃度を出して調整する 】 ことになります。
その為、基本的には 【 筆圧を下げて色をぬる 】 事で薄い色の層を作ってそれを積層することで濃度を上げていくことになります。
この 【 薄く塗る 】 と言う処理と 【 そうに寄って色を追加する 】 と言う方法は、
■ 鉛筆
■ 色鉛筆
■ クレヨン
で行えるのですが、この3つの画材でもバニッシュのように筆圧を上げて濃く塗ることも出来ます。鉛筆を使ったデッサンの場合、筆圧を書けないで描いていくことになりますが、これは濃度のコントロールをしやすくするための手段になります。そうすることで練ゴムで階調を調整したり、色の層を追加して濃度(もしくはハッチングの密度)を上げていくことになりますが、そうした 【 繊細な色の調整 】 を行う場合にはバニッシュのような技法を使うと修正が効かなくなるので問題が出てしまいます。そうならないようにするために 【 筆圧を落として塗る 】 と言う技法も描く上で覚えていくことになります。
クレヨンや鉛筆なおどの場合、折らないように注意しながら描く必要がありますが、
■ 筆圧を落として塗る
■ 筆圧を上げて塗る
と言う2つの方法があるので、この2つを使い分けれるようにする必要があります。
クレヨンもこの2つの技法で全く異なる表情になるので、塗ってみると結構印象が変わってくると思います。
実際に、
のような枠を作って塗り比べてみると
のような結果になります。筆圧を落として塗ると
のようになり、筆圧を上げると
のようになります。鉛筆などと同じで線の部分が残るように描く場合、向きで印象の操作を出来るので、ラインの方向をコントロールするとその向きに向かった形状の印象や質感を再現することが出来ます。
このように塗りの方向を変えると向きによる影響を受けるのですが、均一に塗る場合にはこの向きを揃えると平坦に塗ることが出来ます。
諸説ありますが、クレヨンは19世紀にフランスで生まれたとされていますが、アメリカでは1903年にビニー&スミスが「クレヨラ(英語版)」クレヨンを生産しています。その為、1世紀以上の歴史のある画材になります。
アメリカでは1903年にビニー&スミスが 【 クレヨラ 】 クレヨンの生産が行われています。日本でもクレヨンの歴史は古く、大正時代には現在の図画工作のように画材として使用されていました。
一般に流通している軟質のクレヨンは1957年以降に登場したものになりますから、サクラクレパスよりももっと後に現在のような軟質で塗りやすく面の表現がしやすいものに鳴っています。
海外ではチャコールやクレヨンの意味合いが違う場合もありますが、日本国内だと、
■ チャコール : 木炭
■ グラファイト : 黒鉛
■ クレヨン : クレヨン
という区分けに鳴っています。その為、チャコールペンシルと言うと鉛筆型の木炭デッサン用の製品で、グラファイトがシャープペンシルや鉛筆の芯として使用されている黒鉛になります。
クレヨンは元々硬質なものなので、線で表現するのを得意とした画材になりますが、軟質のクレヨンの前にパステルの使い勝手とクレヨンの伸びを両立させた製品が登場しています。
1925年にサクラクレパスは 【 クレパス 】 を製造しています。この製品ももうすぐ生誕100年になりますが、オイルパステルの発祥は日本になります。
学童用の低価格な製品として生まれたお手頃価格の製品ですが、絵画の世界でもオイルパステルの作品は存在しており、ピカソやセザンヌがオイルパステルを使った製品を使っています。この製品はセヌリエの製品になりますが、1949年にアンリ・ゲッツやパブロ・ピカソの要望に寄って作られた 【 専門家用のオイルパステル 】 になります。
ペンテルのパスや他社製品のオイルパステルもクレパスと同じような特性があるのですが、クレヨンはオイルパステルほど伸び無い特性があります。
その為、セザンヌやピカソが使用していた画材のルーツは日本にあり、子供でも事由に絵が描けるお手頃価格で購入できる便利な画材として誕生したものを画家が使える仕様の品質にしたものがオイルパステルになります。
現在は、このジャンルの製品も多く存在していますが、ピカソの時代からオイルパステルを作っているセヌリエの製品はもちろん現在もありますし、ホルベインやカランダッシュの製品もあります。
クレヨンは油脂成分があるので、しっかりと塗り込むと光沢が出ます。この特性から光沢感のある仕上がりになります。色鉛筆にも油脂成分があるので塗り込むと光沢感のある仕上がりにすることも出来ますが、光沢の恩恵は鉛筆画でも得られるので、木炭のようなマットな仕上がりのものと比較すると鉛筆ならではの質感が出るので、少し異なる仕上がりになります。また、色鉛筆も発色がいいのですが、学童用のクレヨンもバニッシュを使って色をしっかりと塗り込むと綺麗な色になるので、発色のいい仕上がりにしやすいと言う特性があります。
色鉛筆も
■ 薄く色を出したような淡い色での仕上げ方
■ 色をしっかりと色を出した仕上げ方
の2つがあります。この時のバニッシュの表現をする場合、ホルベインの色鉛筆などを使うとしっかリとした発色になりますが、低価格な製品だと少し様子が変わってきます。クレヨンだと学童用のものでも色鉛筆よりも発色がいいので、画材そのものの色をそのまま出せると言う利点があります。塗り比べてみると、数百円のクレヨンとクーピーペンシルを比較するとクレヨンのほうが発色がいいので、子ども用の製品でも綺麗な色を使えるという点ではクレヨンは優れた画材のように思います。
オイルパステルは汚れる場合があるので、注意しながら描いていく必要がありますが、伸びやすいと言う特性があります。
今回はクレヨンなので、オイルパステルについては別の機会に書こうかと思いますが、通常のクレヨンは太さのある物に鳴っていますから、
■ 角を使って線を引く
■ 側面などを使って面を塗る
と言う方法を使用します。この使い方は鉛筆での画法と全く同じですが、画材を使う場合の描き方の基本はこれになります、なので、筆の場合も
■ 先端を使って線を引く
■ 平らな部分で面を塗る
ので、丸筆だと傾けた状態で面を塗ることになりますが、この使い方は鉛筆と全く同じです。
絵の具の場合、面を塗る場合だと、平筆やフラッパーがあるので、そういった物を使いますが、もっと広い場合だと刷毛を使うことになります。流石に水彩画では使いませんが、更に広い場合だと、ローラーを使って塗ると言う方法もあります。
このように 【 広い面を塗る 】 場合には、筆で対応できない場合には違うものを使うこともありますが、アクリル画や油絵を描く時に使用するペインティングナイフも
■ 平らな部分で面を描く
■ 角でディテールを追加する
ような使い方をします。その為、画材の基本的な使い方は共通しています。
クレヨンだけで描く場合、
■ 角の部分を探して細い部分を描く
■ 平らな部分を探して面を塗る
ことになりますが、この描き方で画材をコントロールできるようになると、思った場所に色を乗せることが出来るようになります。
クレヨンは鉛筆と比較すると結構太いので、細かい表現をしようと思うと描く用紙のサイズを大きくする必要があります。どのあたりのディテール感にするのかにもよりますが、八つ切りとか四つ切りとかに描くと細かい部分も描き込む事が出来ます。
用紙のサイズだとB3以上を選ぶと描きやすいと思いますが、B4よりも大きいほうがディテールを追加しやすいと思います。描くものが多く情報量が多い場合だと四つ切りやA2のほうが描きやすい気がします。
用紙のサイズが小さくなるとどのようにディテールの再現をするのかを考える必要が出てきますが用紙のサイズが小さくなるとディテールの表現が難しくなるので、どのように絵を構成するのかを考える必要が出てきます。
用紙の種類ですが、クレヨンは凹凸がなくてもソフトパステルや木炭のように剥離しませんから凹凸のない上質紙にも描けます。その為、1枚の単価の安いコピー紙にも描けるのですが、凹凸のある用紙にも描けます。
用紙の場合凹凸が合ってその質感を使った描き方が出来るものもありますが、パステルや木炭の場合だと凹凸のある用紙を選ぶことになります。水彩用紙を見てみると名称が色々用意されていますが、この中には凹凸の種類を示したものもあるので、凹凸の質感をどうするのかも含めて選ぶことが出来ますが、平坦なものにも描けるので用途で用紙の選択が変わってきます。
ちなみに、パステル用のスケッチブックも販売されていますが、こうした製品だと裏写りをしないようにトレーシングペーパーと用紙の順番に配置されているものもあります。
絵を描く場合、 【 完成品を描く用紙を決めておいてその用紙で完成品を描きながら練習する 】 ことになりますが、コピー紙の場合、 【 500枚 】 単位で売っているのでかなり安価で枚数を導入できます。
コピー紙も上質紙ですが、トレース台を使って下絵を透かして使うと用紙の模様が透けて見えるのでケント紙のような使い方は出来ません。薄いので透けるのですが使いにくい条件も存在しています。
ちなみに、学習用のノートやルーズリーフも上質紙なので、クレヨンもごく当たり前に乗ります。
クレヨンの場合、
のように単色で塗ることも出来ますが、
のように用紙の中で色を重ねることで中間色を作ることが出来ます。
スクラッチの技法は、クレヨンのと膜がはがせる特性を使って、したに描いたものを剥がして使用する際に用いるものになります。その為、最初にクレヨンで模様を描いておいてその上に塗膜の層を作ることで下の色を遮蔽できるのですが、この時に上の層だけ除去すると下の色が出てきます。
この技法については、以前
の中でも行っていますが、
のように模様を描いて、その上を塗りつぶします。
その為、
のよう色を塗って部分的に剥がすと
のようになります。
透明水彩の場合、白の表現をする際にはマスキングで色を残したり、その場所に白を加筆することになりますが、クレヨンの場合だとスクラッチが使えるので、白い場所に白を塗っておいて上の色を剥がすことで白い部分を作ることが出来ます。その為、
■ 塗り残しておく
■ スクラッチで白色を表現する
という方法があります。
現在流通しているクレヨンは通常の硬さのものと子ども用で柔らかい物が用意されています。
クレヨンの場合、 【 明るい色で暗い色を伸ばすことが出来る 】 ので、系統色の明るい色を使うと色を伸ばすことが出来ます。
例えば、
のようなのを描いておいて明るい色で伸ばすと
のようになります。基本的に明るい色だと伸ばしやすいので茶色に対して
■ 橙色
■ 黄色
■ 茶色
で伸ばすと
のようになります。
混色については、色鉛筆のように
のような感じで混ぜる方法もありますが、
のようにバニッシュで塗った上から色を重ねることも出来ます。例えば、黄色の上に赤と青を乗せると
のようになります。使用しているクレヨンでは、青は混色になり、赤は遮蔽になりました。また、塗膜があるので、スクラッチの技法を用いることが出来ます。
ベースを赤にした場合だと、
のようになります。これを見てもらうと、青色は紫色になっていて上に色が乗っていますが、黄色は色を伸ばすような乗り方に鳴っています。
青色がベースの場合だと、
このように色は重ねた時の振る舞いが異なるので、使用する画材の特性を最初に確認しておく必要があります。この事例のように中間色は用紙の上での色の重ね合わせでのみ作ることが出来るので、
のように組みわせる色で色の方向性を変えることが出来ます。
今回使用したクレヨンは大昔の製品になりますが、
になります。
![TODAY'S](https://stat100.ameba.jp/ameblo/entry_designs/v1/sources/assets/limited023_heading.png)
クレヨンと技法
クレヨンはそのままでも塗ることが出来ますが、道具を使うと別の表現も出来ます。
ソフトパステルのように塗る
メーカーが用意しているクレヨンには子ども用の柔らかいものから専門家用の硬いものまで用意してありますが、柔らかいものだと伸びやすく、硬いものだと線を引くのに適しています。その為、画法が異なるのですが、クレヨンもクレパスやオイルパステルのように
のような感じでティッシュペーパーに多めに取って用紙に刷り込むと
のようにできるので、色を変えて塗り込んでいくと
のようにふんわりと減衰した表現をすることも出来ます。
反転したものを転写する
今回もコピー紙に描いており、Panasonic Lumuix DMC-TZ85で撮影しています。