リズムについて その4 | a day in my life

リズムについて その4

前回はリズムの基本「(直進する)2拍子」と「(回転する)3拍子」についての(勝手な)私論を述べたが、今回はその展開形を少し。


 西洋クラシック音楽は、ハーモニーや対位法においてはかなり高度な次元にたどり着いたが、ことリズムに関しては「2つ(4つ)」か「3つ」しか数えない不思議な低空飛行を続けてきた(ような気がする)。

 アンサンブルの最高峰たる〈オーケストラ〉ですら、リズム・セクションは数百年にわたってティンパニとシンバルどまり。
 そもそも「管弦楽」というくらいで「打楽器」に関しては二の次三の次。「和声法」や「対位法」に関する研究は膨大に成されているものの、「リズム」に関しての探求はほとんど聞いたことがない。

 確かに「クラシック音楽」というのは(教会オルガニスト出身のバッハが「音楽の父」と呼ばれるように)お堅い「教会音楽」から派生したもの。
 お祭り空間で演奏される「世俗音楽」などと違って、「リズムのノリ」などという下俗な(下半身的な)ものには関心がなかったのか、それとも意識的に避けてきたのだろうか。

 それでも、四分音符あるいは八分音符だけで(アンサンブル命の)音楽を作るのは、さすがに面白くないと感じていたクラシックの作曲家(例えばベートーヴェン!)もいたに違いない。


 やがて(五線譜の上に)「付点」のリズムが登場することになる。


ちなみに、「付点リズム」とは、1拍を「2:2」に等分するのではなく、「3:1」に分けるリズム。

これは、そもそもは「リズム」として生まれたのではなく、対位法主題を書くときの記譜上の約束事にすぎなかったように思える。
賛美歌などでスローテンポで歌われる限り、単なる3拍と1拍の音符の経過に過ぎないからだ。

しかし、アップテンポで繰り返すと、そこにある種の呪術的な「ノリ」(グルーヴ感)が発生する。
裏拍を「3:1」というバランスでずらすため、リズム拍の重心が後ろに移動する。このことが、スキップするような効果を生み出すわけである。


これを最大限に利用したのが(おそらく)ベートーヴェンだ。
 

最初はピアノの即興演奏でのバリエーション(変奏)のひとつとして取り込んだものだったのが、やがてこの付点リズムによる「ビート感」の表現に没頭するようになる。


ベートーヴェンの音楽が、その先輩筋にあたるハイドンやモーツァルトと決定的に違うのは、この付点リズムによるビート感・グルーヴ感を純音楽に導入したことが大きいことは間違いない。


それによって、ベートーヴェンの音楽は現代にも通じる「ビート音楽」のテイストを持つことになったわけだ。