ある一人の青年は恋をした。
退屈な人生を、自ら終えようとしていた時、出逢った女性に。
彼女の笑顔は真夏の向日葵のように眩しく輝き、青年の荒んだ心に一筋の光を差しこんでくれた。
そう、青年の命は彼女に救われたのだった。
青年は、これからの人生を彼女の為にも頑張って生きてみよう、そう固く決意した。
青年が『愛してる。』と言うと、彼女は微笑み、嬉しそうに『ありがとう。』と答えた。朝も昼も夜もずっと。そういう幸せな日々が続いていた。
青年は彼女の誕生日はもちろん、クリスマスやホワイトデーなどの恋人のためのイベント時には必ず高価なプレゼントを贈ったし、出逢った記念日には必ず彼女の写真を飾り、高級なレストランを貸しきったりもした。
喜んでくれていると思った。
数年後、青年は思いきって彼女にプロポーズをしようとしていた。だから高価な指輪も手に入れた。
……―。
ある朝、僕がコーヒーを飲んでいたら、彼女がとんでもないことを口にしたんだ。
――――他の男と結婚する?
相手が、僕と正反対の男だという事実を一方的に延々と聞かされ、僕は絶望した。
僕が、僕が、僕が、、、、、僕が君を幸せにするはずだった―――…。
しばしの沈黙の後、青年は再び言葉を発した。
ならば、、、せめて僕が死ぬところを見てくれるかい…?
青年は顔に微笑みを携えながら、肉切り包丁で自らの腹部をえぐり、そのまま首を切り裂いた。
―大量の【鮮血】が撒き散らされた。
目の前の彼女は微動だにしていなかった。
いつもの、あのいつもの笑顔のままだった。ニッコリと微笑み、青年を見ていた。
薄れていく意識の中で、青年は思う。
"君は、こんな時にまで僕に微笑みかけてくれるんだね………。"
【END】
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