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ある一人の青年は恋をした。

退屈な人生を、自ら終えようとしていた時、出逢った女性に。

彼女の笑顔は真夏の向日葵のように眩しく輝き、青年の荒んだ心に一筋の光を差しこんでくれた。

そう、青年の命は彼女に救われたのだった。

青年は、これからの人生を彼女の為にも頑張って生きてみよう、そう固く決意した。




青年が『愛してる。』と言うと、彼女は微笑み、嬉しそうに『ありがとう。』と答えた。朝も昼も夜もずっと。そういう幸せな日々が続いていた。


青年は彼女の誕生日はもちろん、クリスマスやホワイトデーなどの恋人のためのイベント時には必ず高価なプレゼントを贈ったし、出逢った記念日には必ず彼女の写真を飾り、高級なレストランを貸しきったりもした。

喜んでくれていると思った。


数年後、青年は思いきって彼女にプロポーズをしようとしていた。だから高価な指輪も手に入れた。


……―。


ある朝、僕がコーヒーを飲んでいたら、彼女がとんでもないことを口にしたんだ。




――――他の男と結婚する?


相手が、僕と正反対の男だという事実を一方的に延々と聞かされ、僕は絶望した。



僕が、僕が、僕が、、、、、僕が君を幸せにするはずだった―――…。


しばしの沈黙の後、青年は再び言葉を発した。


ならば、、、せめて僕が死ぬところを見てくれるかい…?


青年は顔に微笑みを携えながら、肉切り包丁で自らの腹部をえぐり、そのまま首を切り裂いた。



―大量の【鮮血】が撒き散らされた。



目の前の彼女は微動だにしていなかった。

いつもの、あのいつもの笑顔のままだった。ニッコリと微笑み、青年を見ていた。


薄れていく意識の中で、青年は思う。



"君は、こんな時にまで僕に微笑みかけてくれるんだね………。"



【END】







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生まれてこのかた40年間彼女ができたことない俺。原因は何かって?まぁ、この不細工だからかな。俺は自他共に認める、最強の醜男だった。


仕事帰りに駅前の大通りを抜け寂れた路地に入ると、そこは薄暗くまるで異世界のようだ。灯りと言っても、傾いた街灯が5本あるだけ。その三本目の街灯の下に、夕方6時になると決まって現れる一人の占い師のオヤジがいた。

俺はそのオヤジとくだらない世間話をして家路につく。気づいたらそれが、彼女もいない俺の日課になっていた。


お、今日もいるいる。
オヤジのヤツ、怪しい骨董品なんぞ始めたようだ。


占い師の周りに、年代物の家具や楽器などが無造作に置かれていた。


占い師は俺の顔を見るなり、迷わず右手を骨董品の方へ指した。

指した先にあったのは古びた三面鏡だった。興味本意で色々な場所を触ってみたが金具も錆び付いていていかにも古そうだった。


『おぬし、この鏡を持っていけ。』


その占い師の一言が、俺に重くのしかかる。

俺の顔の事に違いない―…。オヤジの奴まで俺の顔を不細工だと言いたいのか。できれば、こんな不細工な顔など極力見たくない。だが、この不細工な姿をどうにかしなければ恋愛すらままならない―…。

そうだ、毎日鏡を見ていれば自信がつくかもしれない―…!


よし、もらっていくか!


俺は三面鏡に手をかけようとした。
すると占い師がじっと俺を見据えながら喋り出した。


『ただし、この鏡は呪われとるぞ。キーヒッヒッヒッヒッヒッヒッ。』


心臓が激しく波打つ。
…が、あいにく俺は呪いだの幽霊だのといったジャンルの話には全く興味がない。オヤジ、悪ふざけはよしてくれ。怖いのは化け物ではない、【不細工】の方だ。


俺は三面鏡を担ぐと、占い師から逃げるように足早に去っていった。



―そして部屋へ。

三面鏡を部屋の中央に置くと、俺は深呼吸した。


あんな態度を取ってはみたものの、一人になるとやはり多少は怖いものだ。

呪い?そんなもんあるわけねぇ。

俺はやけくそになって、三面鏡を一気に開くことにした。ただし、怖いので目を閉じたまま。


ギギギッ


鈍い音が部屋に響き渡る。


ギィーーーーーーーーーーーーーー


鏡が完全に開ききったことを確認しようと、目を開けると…



なぁに、なんてこともない。
いつも見慣れた不細工が三人、同じ顔ぶらさげてこっちを見ているだけじゃないか。


ははは…
やっぱりなにも起こらない…か。現実の方が残酷で恐ろしいってわけか。目を開けたらイケメンになってた~!なんてのは所詮夢物語だよな。。。。。


俺は馬鹿らしくなってその場から立ち去ろうとした。


そのとき俺は大変なことに気付き、青ざめた。






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俺の親父は俺がまだ小さい頃、遠くへ行ってしまった。海外で仕事頑張ってるらしい。だから俺は母さんと妹と三人暮らし。寂しいかって?そんなことはないさ。毎日定刻に皆で食卓囲んでるし。

母さんは何事にも前向きで、明るい性格なので町内でも評判だ。妹の中学校のPTA会長も務めている。

妹も成績優秀で、おまけにフランス人形のように愛らしい顔立ちをしていた。

そんなわけで、俺はいたって平凡な男だが、周囲の人間から羨ましがられる存在だった。


そんなある日の夕方、俺が帰宅してエントランスの鍵を開け、更に玄関の鍵を開けてから居間に入ると、

母と妹が変わり果てた姿で床に倒れていた。 辺り一面が、血の海になっていた。



一体誰が―…。


そんな風に思うと同時に俺は後頭部に強い衝撃を受けた。

遠のく意識の最中、俺は力を振り絞って犯人を見てやろうと思った、が、俺の目は光を失っていた。



床に倒れるとき、最後に聞いたのは
救急車とパトカーのサイレンの音だった。



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