ハンテリアン博物館
2013年11月にロンドンへ行ったときの旅行記です。
ジャンプSQ.に掲載されている『エンバーミング博物誌』の補足としてお楽しみください。
2013年11月9日。ハンテリアン博物館に行きました。
ジョン・ハンター(1728~1793)が集めた膨大な標本コレクションをもとに、王立外科医師会が公開している博物館です。
ジョン・ハンターは私も『エンバーミング博物誌』で取り上げましたが、その面白さはあんな短いコラムでは伝えきれません。
ぜひとも、まずは『解剖医ハンター 』を読んでみてください。
そして、さらに興味がわいたら『解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯 』を!
博物館の中は、外科の手術道具が歴史を追って展示してあったり、奇形のホルマリン漬けがわんさかと置いてあったり。気の弱い人には、おすすめできません。
でも、私はここ以上に不気味な博物館に行ったことがありました。
それは、ブラジルはサンパウロにある、ブタンタン毒蛇研究所です。
小学校のころはサンパウロに住んでいたので、そのとき社会科見学で行ったのですが、三つの首があるひよこや蛇の骨や、謎のぶよぶよしたもの(何かの胎児?)のホルマリン漬けなどが、これでもかというほど並んでいました。普通に触れる感じで。
いや~、マジでトラウマになりそうな感じの展示でした。
あんな不気味なのは、他にはプラスティネーション展くらいだと思います。
ハンテリアン博物館は石造りの重厚な建物で、照明が明るく、とても清潔な感じですが、私が行ったブタンタン毒蛇研究所は、薄暗く不気味で、木造のボロい建物でした。
そんなことを懐かしく思い出し、ざっと検索してみたのですが、なんと、私の知っているブタンタン毒蛇研究所は、2010年に焼失 してしまい、その100年以上にわたって集められてきたコレクションは、今はもう灰になってしまっていたのでした。
現在は、明るくモダンな建物になっているようです。
ほっと安心のような。
ちょっと残念なような。
もしまた、地球の裏側のサンパウロへ行く機会があったら、リニューアルしたブタンタン毒蛇研究所を訪問してみたいと思います。
さて。話をハンテリアン博物館に戻します。
この日のハンテリアン博物館は、創立200周年特別展の最終日でした。
博物館200年の歴史解説が、特別展の主な内容だったのですが、特によかったのは、昔のスタッフさんの写真でした。
私と村上さんが「おおっ、これはイイッ!」と満場一致で釘づけになったのが、この一枚 。
なんとも興味なさそうに髑髏を磨いています。
どんな不況でも、髑髏を磨く仕事に就きたいと思っている女性はいないはず。
きっと次々と担当者が辞めていくなか、彼女は何かの事情があって、この職をまっとうしたのかもしれない。
そう思うと、深いドラマを感じます。
とても良い写真です。
■ハンテリアン博物館(Hunterian Museum)
■住所 35-43 Lincoln's Inn Fields, London, WC2A 3PE
■開館時間 火~土 10時~17時
■行き方 地下鉄ホウボーン(Holborn)駅より徒歩6分、王立外科医協会(The Royal College of Surgeons of England)内。入り口を入った受付にてミュージアム見学希望を申し出る。入場無料。