酒樽を積んだ荷馬車が、川沿いの道を進んでいく。
荷を引く馬は年老いて、気怠げに鼻を鳴らす。
その手綱を引くのも、また年老いた爺だった。
荷車の車輪が悪路の小石を踏むたびに酒樽はぽこぽこと鳴る。
樫の木でできた古びた酒樽の蓋には所々穴が開いて、酒が時々中から飛び出してくる。
その香りに引き寄せられ、ブンブンと蜜蜂が寄っては離れを繰り返す。
爺は山の上の村に住む、養蜂を生業とする民の者だった。
ただこの爺は養蜂を行ってはおらず、その蜂蜜を使った酒をつくっていた。
爺は年に一度、山を下って王都へ酒を納めに行く。
昔は仲間内で飲めた酒だったが、村と村とがくっついては大きくなっていくうちに、どうにも偉い人に気に入られたらしい。
爺にはよくわからなかった。
愛馬のホシイモがこちらを向いた。
休憩せよと訴えている。
爺は荷馬車を道の脇へ止め、一旦荷車を外した。
ホシイモは川の水を飲みながら、しっぽをふり、ブルルと幸せそうに鳴いた。
その鼻っ柱を撫でながら、爺も水をすすった。
長年連れ添ってきたホシイモも、もう疲れやすくなってきていた。
今年が最後かもしれん。
爺はそう思った。
ホシイモと王都へ行くのも最後だろう。
「どれ、ホシイモ。今日もこれを納めたら干し芋買うて帰ろうか」
ホシイモは爺の方を向いて、目を輝かせる。
何しろ、年に一度しか食べられない好物だからなぁ。
元々名前のなかった馬だったが、あまりにも干し芋をうまそうに食べるのを見て、爺はホシイモと名付けたのだった。
「やれ、ホシイモや。王都までもう少し」
再び荷馬車を動かす爺とホシイモ。
蜂蜜酒もまたぽこぽこと鳴る。
そしてまた蜜蜂がブンブンと飛び回る。
「死んだ酒樽にゃ、蜂はこねえ」
爺の口癖。ホシイモは耳を払った。
まるでもう耳にタコができるほど聞いたと呆れているかのようだ。
悪路だからこそ、運びながらも酒が混ざって味も良くなる。
しかし、うまく混ざらない酒樽から酒が飛び出しても、蜜蜂は寄ってはこない。
うまい酒ができたかどうかは、酒樽にどれだけ蜂が寄ってくるかだ。
東の峠の上に、王都の巨大な外壁が見えた。
白壁が太陽に反射して眩しい。
爺のいる場所はその峠よりも高い場所。
恐れ多くもこの川沿いの道は、王都を見下ろすことができる。
輝く白壁と、緑豊かな庭園。屋根には最高級のベンガラ。
王宮の周りには街が広がり、貴族や平民が暮らしていた。
王都はいつ見ても巨大で騒々しい。
爺とホシイモは、ふうと鼻で息をついた。
あの騒々しさは年寄りには堪えるものだ。
若い衆は王都へ憧れる者もいるが、爺は生まれた村に骨を埋めたいと思っていた。
「ホシイモや、もう少しだ」
爺は手綱を握り直した。
お久しぶりでございました。
グルと迷ったんで、そのうちグルにも同じのあげます。
リハビリです。 うまいこと書けてるのかわかりません。
深夜のテンションで、1時間ほどで作製しました。
誤字脱字ありましたら、無視してください。
良い夢を。おやすみなさい。