それから春休みが明け、三年生になった。
あの悪童っぷりはさらに磨きがかかった。和樹は学校が終わるとランドセルも置かずに池へ行くようになっていた。
ランドセルにはあのぬいぐるみが入っている。
いつも池に行ってはぬいぐるみを取り出して、鈴子を探していた。
そんな和樹に夏休みがやってきた。
朝から夕方まで遊びほうけている和樹に、母親は怒号を飛ばす。しかしそれを気にせず飛び出していくのが和樹である。
*
今日も空振り。
夕日が落ち始めたから、和樹は家に帰ろうと立ち上がった。
りりー…りりー…
あ、聞いたことある音。
鈴の音。
「すずこ?」
「何よ」
音もなく現れたのは、仏頂面の鈴子。
「すずこー!」
確かめるように鈴子に抱きつく。でも鈴子は身をよじった。
「これ、母さんが直してくれたんだ」
後ろから出したぬいぐるみに、鈴子は両手を伸ばす。
「あ……」
それを抱きしめ、頬をすり寄せる。
「オカアサン……」
かすかな声で、鈴子はそう言った。
「すずこ、今日さ夏祭りがあるんだけど、一緒に行かない?」
「夏、祭り?」
「街のみたいに大きくないけど、それでもこのへんのみんなが集まるからにぎやかだよ」
「うん。行こうかな」
そうと決まれば。
和樹は鈴子の手をとり、家へかけていった。
*
「帰ってきたならただいまくらい言いなさい!」
はやくも母親の怒鳴り声が響くなか、和樹は押し入れを引っ掻き回していた。
「こら、和樹!」
和樹のいる部屋に母親が入ってきた。そして、見たのは可愛らしい女の子と押し入れからお尻が覗いているだけの息子。
「あら、こんにちは」
「こんにちは。あの、これありがとうございました」
「あなたのだったのね。いいのよ。また破れたら直してあげるわ」
「あったぞー!」
「和樹! アンタ姉ちゃんの浴衣なんか出してどうすんだい!」
「鈴子に着せて夏祭りに行くんだよ」
「……は?」
母さんはぴたっと固まった。そしてややもしないうちに怒鳴り声と変わらぬ大きさで笑い声をあげた。
「アンタが——こんな可愛い子と?——まさか」
「うっせえ。クソババア! すずこ行くぞ」
そこで母さんはぴたりと笑うのをやめた。
「和樹。アンタ、浴衣着せれるのかい」
「ぐっ」
母さんに襟首を掴まれた。
***
母さんが鈴子に浴衣を着せている間、和樹はまた家から出ていた。頭には大きなタンコブ。クソババアって言ったかららしい。
向こうからお寺の坊主が歩いてくる。同い年の息子がいて、その息子は和樹と同じクラスだった。
「……やあ和樹くん」
坊主は和樹を見て一瞬眉をひそめたが、にこやかに声をかけた。
「何だよ」
坊主は神妙な顔をして、和樹の前にしゃがんだ。目線をあわせる。
「君には死相が出ている。あいつが言っていたのは間違ってなかった」
あいつというのはたぶん坊主の息子のこと。
「だから何だってんだよ」
「このままだと死ぬってことだ」
「え?」
坊主が和樹の肩に手をおいた。その時。
「和樹ー!」
向こうから来たのは鈴子だった。片腕にぬいぐるみを抱えている。
それを見た坊主は声を低めて言った。
「彼女はもう、生きている人間ではない。彼女に関わるのをやめろ。さもなくば死ぬぞ」
「…………黙れ! クソ坊主!」
*
鈴子を連れて夏祭りに来た。けれど、さっきのクソ坊主の言葉が離れない。
「——樹、和樹ってば」
「あ、ああごめん」
気づけば、心配そうな顔をした鈴子が腕を引っ張っていた。
「あれ、ほしい」
指差したのは手のひらくらいの大きな鈴。
輪投げの景品だった。
「よし!」
意気込んでやってみたものの、手に入った景品は小さな鈴がふたつ。
「ごめん」
「ううん。二人でお揃いだから」
にこっと笑う鈴子。
*
祭りから少し離れた土手で二人は花火を待った。
「ねえ、私——」
にぎわいから離れた静寂の中、急に口を開いた鈴子。
それを妨げるように和樹は言った。
「鈴子は、オバケなのか?」
鈴子は答えない。
和樹は土手に寝そべった。
夜空には星が出ている。
祭りの明かりが邪魔をして、かすかにしか見えないけれど。
「……和樹。私ね、嬉しかったよ。ぬいぐるみ直してくれて。遊んでくれて。あの洞窟には誰も来てくれなかったから」
「鈴子は、嘘ついてたのか」
「オバケが怖いってわかって、言えなかったの」
「オバケは嫌だけど、鈴子なら怖くなかったのに!」
「……私ね、戦争の前に生まれたの。戦争が始まって、空襲があって」
「やめろ! 聞きたくない!」
「ある空襲の時、お母さんとはぐれたの。お母さんが作ってくれたこのぬいぐるみを抱きしめて泣いてるところを、誰かがあの洞窟、防空壕へ連れていって。でも、空襲が終わっても一人じゃ出れなくて——」
「……」
和樹はもう何も言わなかった。鈴子に背を向け、聞こえないように泣いていた。
「それであの場所で……」
「死んだの?」
鈴子は曖昧に返事をした。
「……好きだったよ。和樹のこと。だから一緒に来てほしいの」
「……どこに」
「空、かな」
「いいよ、すずことなら」
りりー…りりー…
遠くから聞こえる鈴の音。
「ありがとう」
りりー…りりー…
体から意識がふわりと浮かぶ。
りりー…リンッ
「和樹!」
母さんの声が聞こえる。
「アンタ、八時には帰ってこいって言っただろう! 何こんなところで寝てるんだい。早く起きなさい」
また怒鳴ってる。
鈴子はそんな母さんを見てる。
早く行こうと俺が言っても動かない。
「和樹? 和樹!?」
母さんが俺の体を揺すってる。でも俺は起きない。
泣き始めた母さん。
*
「和樹、ごめん。私、やっぱり一人で行く」
「何で。何言ってんだよ」
「お母さん、私と繋いでいた手が離れた時泣いてたの。防空壕で死んだ私を見つけた時も泣いてたの。和樹にも、和樹のお母さんにも、同じ思いはしてほしくない。だから——」
鈴子が消えたあの瞬間、空に大きな花が咲いた。
***
あれから和樹は単なる悪童に戻った。ある時はケンカをし、ある時はクラスの子が持ってきた花をちぎった。
あの池のほとりにひとつのぬいぐるみがある。
その横にはいつも綺麗な花が添えられている。
誰かの持ってきた花が。
(あとがき)
何か年齢と言動があってない感。それに悪童ってどんなことするんだ←
長くなってすみません。
あと田舎って言葉出てないですよねーw
わかってます。
ただ田舎に暮らしてるので、街の暮らしがどんなものかわかりませぬ( ゜∀゜)
書き急いでる感ハンパない(゜_゜)
何かすみませんでした。
ではでは(@^^)/
あの悪童っぷりはさらに磨きがかかった。和樹は学校が終わるとランドセルも置かずに池へ行くようになっていた。
ランドセルにはあのぬいぐるみが入っている。
いつも池に行ってはぬいぐるみを取り出して、鈴子を探していた。
そんな和樹に夏休みがやってきた。
朝から夕方まで遊びほうけている和樹に、母親は怒号を飛ばす。しかしそれを気にせず飛び出していくのが和樹である。
*
今日も空振り。
夕日が落ち始めたから、和樹は家に帰ろうと立ち上がった。
りりー…りりー…
あ、聞いたことある音。
鈴の音。
「すずこ?」
「何よ」
音もなく現れたのは、仏頂面の鈴子。
「すずこー!」
確かめるように鈴子に抱きつく。でも鈴子は身をよじった。
「これ、母さんが直してくれたんだ」
後ろから出したぬいぐるみに、鈴子は両手を伸ばす。
「あ……」
それを抱きしめ、頬をすり寄せる。
「オカアサン……」
かすかな声で、鈴子はそう言った。
「すずこ、今日さ夏祭りがあるんだけど、一緒に行かない?」
「夏、祭り?」
「街のみたいに大きくないけど、それでもこのへんのみんなが集まるからにぎやかだよ」
「うん。行こうかな」
そうと決まれば。
和樹は鈴子の手をとり、家へかけていった。
*
「帰ってきたならただいまくらい言いなさい!」
はやくも母親の怒鳴り声が響くなか、和樹は押し入れを引っ掻き回していた。
「こら、和樹!」
和樹のいる部屋に母親が入ってきた。そして、見たのは可愛らしい女の子と押し入れからお尻が覗いているだけの息子。
「あら、こんにちは」
「こんにちは。あの、これありがとうございました」
「あなたのだったのね。いいのよ。また破れたら直してあげるわ」
「あったぞー!」
「和樹! アンタ姉ちゃんの浴衣なんか出してどうすんだい!」
「鈴子に着せて夏祭りに行くんだよ」
「……は?」
母さんはぴたっと固まった。そしてややもしないうちに怒鳴り声と変わらぬ大きさで笑い声をあげた。
「アンタが——こんな可愛い子と?——まさか」
「うっせえ。クソババア! すずこ行くぞ」
そこで母さんはぴたりと笑うのをやめた。
「和樹。アンタ、浴衣着せれるのかい」
「ぐっ」
母さんに襟首を掴まれた。
***
母さんが鈴子に浴衣を着せている間、和樹はまた家から出ていた。頭には大きなタンコブ。クソババアって言ったかららしい。
向こうからお寺の坊主が歩いてくる。同い年の息子がいて、その息子は和樹と同じクラスだった。
「……やあ和樹くん」
坊主は和樹を見て一瞬眉をひそめたが、にこやかに声をかけた。
「何だよ」
坊主は神妙な顔をして、和樹の前にしゃがんだ。目線をあわせる。
「君には死相が出ている。あいつが言っていたのは間違ってなかった」
あいつというのはたぶん坊主の息子のこと。
「だから何だってんだよ」
「このままだと死ぬってことだ」
「え?」
坊主が和樹の肩に手をおいた。その時。
「和樹ー!」
向こうから来たのは鈴子だった。片腕にぬいぐるみを抱えている。
それを見た坊主は声を低めて言った。
「彼女はもう、生きている人間ではない。彼女に関わるのをやめろ。さもなくば死ぬぞ」
「…………黙れ! クソ坊主!」
*
鈴子を連れて夏祭りに来た。けれど、さっきのクソ坊主の言葉が離れない。
「——樹、和樹ってば」
「あ、ああごめん」
気づけば、心配そうな顔をした鈴子が腕を引っ張っていた。
「あれ、ほしい」
指差したのは手のひらくらいの大きな鈴。
輪投げの景品だった。
「よし!」
意気込んでやってみたものの、手に入った景品は小さな鈴がふたつ。
「ごめん」
「ううん。二人でお揃いだから」
にこっと笑う鈴子。
*
祭りから少し離れた土手で二人は花火を待った。
「ねえ、私——」
にぎわいから離れた静寂の中、急に口を開いた鈴子。
それを妨げるように和樹は言った。
「鈴子は、オバケなのか?」
鈴子は答えない。
和樹は土手に寝そべった。
夜空には星が出ている。
祭りの明かりが邪魔をして、かすかにしか見えないけれど。
「……和樹。私ね、嬉しかったよ。ぬいぐるみ直してくれて。遊んでくれて。あの洞窟には誰も来てくれなかったから」
「鈴子は、嘘ついてたのか」
「オバケが怖いってわかって、言えなかったの」
「オバケは嫌だけど、鈴子なら怖くなかったのに!」
「……私ね、戦争の前に生まれたの。戦争が始まって、空襲があって」
「やめろ! 聞きたくない!」
「ある空襲の時、お母さんとはぐれたの。お母さんが作ってくれたこのぬいぐるみを抱きしめて泣いてるところを、誰かがあの洞窟、防空壕へ連れていって。でも、空襲が終わっても一人じゃ出れなくて——」
「……」
和樹はもう何も言わなかった。鈴子に背を向け、聞こえないように泣いていた。
「それであの場所で……」
「死んだの?」
鈴子は曖昧に返事をした。
「……好きだったよ。和樹のこと。だから一緒に来てほしいの」
「……どこに」
「空、かな」
「いいよ、すずことなら」
りりー…りりー…
遠くから聞こえる鈴の音。
「ありがとう」
りりー…りりー…
体から意識がふわりと浮かぶ。
りりー…リンッ
「和樹!」
母さんの声が聞こえる。
「アンタ、八時には帰ってこいって言っただろう! 何こんなところで寝てるんだい。早く起きなさい」
また怒鳴ってる。
鈴子はそんな母さんを見てる。
早く行こうと俺が言っても動かない。
「和樹? 和樹!?」
母さんが俺の体を揺すってる。でも俺は起きない。
泣き始めた母さん。
*
「和樹、ごめん。私、やっぱり一人で行く」
「何で。何言ってんだよ」
「お母さん、私と繋いでいた手が離れた時泣いてたの。防空壕で死んだ私を見つけた時も泣いてたの。和樹にも、和樹のお母さんにも、同じ思いはしてほしくない。だから——」
鈴子が消えたあの瞬間、空に大きな花が咲いた。
***
あれから和樹は単なる悪童に戻った。ある時はケンカをし、ある時はクラスの子が持ってきた花をちぎった。
あの池のほとりにひとつのぬいぐるみがある。
その横にはいつも綺麗な花が添えられている。
誰かの持ってきた花が。
(あとがき)
何か年齢と言動があってない感。それに悪童ってどんなことするんだ←
長くなってすみません。
あと田舎って言葉出てないですよねーw
わかってます。
ただ田舎に暮らしてるので、街の暮らしがどんなものかわかりませぬ( ゜∀゜)
書き急いでる感ハンパない(゜_゜)
何かすみませんでした。
ではでは(@^^)/