給食を食べ終え、みんな続々と運動場に出ていく。
ぼくは一人、教室にいた。おかずやごはんツブが落ちて、汚れた給食机を拭いていた。

「あら、こうくん。いつもありがとう」

配り物を抱えて入ってきた先生が、にっこりとそう言った。ぼくは小さくうなずく。

教室を出て、水道に向かった。キュッと蛇口を回す。まだ秋なのに、水はとても冷たい。それでもぼくはふきんを力いっぱいしぼった。真っ赤になった手。このあと熱くなりそうだなぁ。

教室に戻り、ふきんを置くとすぐに図書室に向かった。

ぼくは本が好きだ。見たこともない動物が載っている図鑑や「スイミー」「ぐりとぐら」「ねずみくんのチョッキ」とかたくさん読んでる。
先生にもそれで褒められた。

今日は何を読もう。
「ぐりとぐら」の続きにしようかな。
そう思って、赤くなってきた手を伸ばした。

左から誰かの手が同じ本に伸びてくる。

「あ…」

その方を向くと、廊下で見たことがある女の子がいた。

「あ、先に借りていいよ」

女の子はそう言った。でもぼくは横に首を振る。名札をちらっと見た。

一ねん三くみ
きのしたあかね

ぼくと同じ一年生。
女の子はぼくが名札を見たことに気づいたのか、ぼくのを見た。

「かわはらこうすけ、くん?」

ぼくは小さくうなずく。あかねちゃんはほっぺを赤くしながら続けた。

「あのね、借りたい本がいつもないって言うとね、司書の先生はいつも言ってたの。わたしの前に借りていく男の子がいるんだよって。それって、こうすけくんのこと?」

ぼくにも覚えがあった。
前に「モチモチのき」を借りようとした時に、司書の先生から
「かわはらくんの借りていった本は、人気があるのよ」
と言われた。

ぼくはちょっと考えた。
あかねちゃんは噂のその人に会えたからか、ニコニコしている。

「じゃあ、今度はぼくがあとから借りるのは?」

眉を寄せ、何かを考えているあかねちゃん。
少しもしないうちに、首を振った。

「ううん。……一緒に読も?」

あかねちゃんはそう言うと、本棚から「ぐりとぐら」を取り出した。近くのイスに座って、ふたりで声を出しながら読む。
ぼくがぼそぼそと読むのに、あかねちゃんはハキハキと元気に読んだ。

「わたし、音読で先生に褒められたんだよ」

へぇ!すごいね!ぼくはそんなに元気よく読めないし、あいさつも小さい声になっちゃう。
あかねちゃんは恥ずかしくないの?
ぼくがそう言うと、あかねちゃんはこう言った。

「ぜーんぜん。でもそういうのいいなぁ。わたし、お母さんにあかねは男の子みたいってよく言われるから」

ぼくはちょっと信じられなかった。だって、ぼくの妹の方が男の子みたいだったから。

それからぼくの妹の話やあかねちゃんのお兄ちゃんの話をした。

気づけば、チャイムが鳴り、掃除の時間を知らせていた。

「じゃあ、明日の昼休みもここで」

あかねちゃんはそう言って、小指を出した。
ぼくもそれに小指を絡める。

ゆーびきりげんまん
うそついたらはりせんぼんのーます
ゆびきった

小さな約束をして、にっこりと満面の笑みを浮かべたあかねちゃんは掃除場所に走っていった。

ぼくは図書室にひとり。
さっきの小指を見つめる。

明日はどんな話をしよう。あの本、あかねちゃんは好きかな。

赤く熱を持っていた手からほっぺにのぼってきたそれは、本の一巻を読み終えた時のように、待ちきれない気持ちをつれていた。



(あとがき)

少年と少女の話。
これからを予感させるような話になっているはず←

葵ちゃんや真くんなど、そういう系統の話が多い感じもしますね(´-ω-`)

でも今回は中学生・高校生バージョンまで頭にあったり←

打ち込みたい(・∀・)w
……がんばります!←