●麻生太郎の「強く明るく」


[ラクイラ・サミットにて]

 

 いま、サミットが開催されている、イタリア・ラクイラに来ています。こ

こ、ラクイラは、今年4月、地震に見舞われ、多数の尊い人命が失われ、地

域が甚大な被害を受けました。

 

 私も現場を目のあたりにして、あらためて被害の大きさを痛感しました。

日本は、有数の地震国です。被災地が1日も早い回復を遂げ、被災された方

々が通常の生活を取り戻せるよう、我々の経験とノウハウを活かした、さま

ざまな協力策を、ベルルスコーニ首相とチャレンテ市長にお伝えしました。

このサミットが、少しでも復興のきっかけになればと、思わずにはいられま

せん。

 

 今晩のワーキング・ディナーでは、国際政治の問題を議論する予定です。

わが国からは、北朝鮮によるミサイル発射や核開発について、G8として、

これを強く非難するとともに、北朝鮮に対し、解決に向けた具体的な行動を

求める、強いメッセージを出すよう、呼びかけるつもりです。

 

 先週の弾道ミサイルの発射は、国際社会の安全保障への重大な挑発行為で

す。安保理決議に明らかに違反する行為であり、断じて許されません。

 

 わが国は、国連安保理決議1874号をうけて、北朝鮮の武器の輸出入の

防止のための船舶検査を可能とするため、船舶検査法案を閣議決定し、国会

に提出したところです。引き続き、国際社会と一致協力して、北朝鮮に対す

る圧力、措置の強化を進めていきます。

 

 ところで、サミットに先立ち、バチカンを訪問し、法王ベネディクト16

世に謁見させていただきました。世界でカトリックの信者の方は11億人。

バチカンとの関係強化は、外交力につながります。

 

 日本の首相で、戦後、初めて法王に謁見したのが、私の祖父の吉田茂。私

自身もカトリックです。法王とお会いするのは、あらためて身の引き締まる

思いがしました。

 

 1975年、第1回サミットがフランスのランブイエで開催されたのは、

世界経済に深刻な影響を与えた、第一次オイルショックが契機でした。

 

 経済問題の重要性は、35回目となる今回のラクイラ・サミットでも、変

わりません。昨年後半からの世界金融・経済危機の克服が大きなテーマとな

りました。

 

 各国の懸命な努力、集中的な対策の実施により、世界経済にも、一部に持

ち直しの動きがでるなど、少しずつ明るい兆しが見えてきています。

 

 わが国でも、今年3月から、鉱工業生産が3カ月連続で大幅な伸びを示し

ています。定額給付金を始め、エコカー減税や、省エネ家電向けのエコポイ

ントの導入が、国内消費の下支え効果を発揮しはじめています。株価も、3

~4割くらい上がりました。

 

 しかし、雇用を始めとして、まだまだ深刻な状況です。G8として、引き

続き、景気対策に全力で取り組み、9月にピッツバーグで開催される金融サ

ミットで、その成果を報告することで合意しました。

 

 これからサミットは山場を迎えます。日本、ひいてはアジアを代表して、

国際社会が抱える諸課題の解決に向け、積極的に議論をリードしていきます。