根なし草 





昨日訪問させていただいたお客様、お歳は84歳の婦人です


応接間に通されるとすぐに


「わざわざ来ていただいたのにごめんなさいね」


とおしゃられるのです


「・・・・?」


何か不都合でもあったかと思いビクリとしましたが


「水曜日は定休日だってこと忘れてお約束してしまったのよ」


「・・・・?」


出前のメニューの定休日の文字を指差されています


「ここのお寿司がとっても美味しいの、一人で食べるのは淋しいし

それであなたに来ていただいたのよ」


「いえ、わたくし・・そんな・・」


お会いするのはこれで二度目

お茶やおやつならまだしも、お昼をご馳走になるには職務違反?になりそうな・・・


躊躇していると


「いいんですのよ、わたしが一緒に食べたいのに付き合っていただくだけなんですから

・・・でも、ごめんなさい・・来て頂いたのにお店がお休みだなんて、先程気づいたのよ

ほんと、ごめんなさいね」


「いえいえ・・・わたくしは・・そんな・・」


「あなた天丼はいかが?こちらのお蕎麦屋さんも美味しいって評判なのよ」


「あっ、いえ、はい、好物です

わたくし好き嫌いはございません、なんでもいただきます」


遠慮のないわたくしでした・・・


ということで、程なく届いた特上天丼を二人で美味しくいただきました


でも、とびっきり大きい海老天がのった天丼は婦人には重かったらしく


半分ほど召し上がって残されていました


本当はお寿司が召し上がりたかったんですものね・・・


「近くまでいらしたらお寄りになって

年寄りの話し相手になってくださいましな」




応接間のテーブルに牡丹の花が二輪飾ってありました


「お庭のお花ですか?」


「いえ、お隣からいただいたのよ」


「綺麗ですね、わたくしの母も庭いじりが大好きで牡丹の花も丹精しておりました

雨に弱いんですよね、雨が降りそうになると傘で雨除けしておりました」


淡いピンクの綺麗な牡丹に母の笑顔が重なってみえました


婦人は母とほぼ同い年


母も元気で生きていればこんな風におばあちゃんになっていたんだなって・・


たまには顔をだすことを約束してかえってきました