独り楽しむ | 隠者の遠近見聞思録 Ⅱ

隠者の遠近見聞思録 Ⅱ

不動産業については見るべきほどのものは全て見たつもりでいた街の独り不動産屋だった男が、世の中の森羅万象を遠近見聞思録する。

ソングテーマの「ハッピー」を「楽しむ」として詠める歌、3首。


1

勤め帰り わりなき心地の 慰めに

価の高き 酒を購ふなり


つとめがえり わりなきここちの なぐさめに

あたいのたかき さけをかうなり



仕事にストレスは付きものですが、時々、どうにも割り切れない不本意さを引きずることがあります。


そのような時、私は、わざわざ帰り道を遠回りして、ウイスキーやブランデーなどの洋酒を数多く取り揃えている酒屋を訪ね、少し価格の高い酒を買い求めることで、自分を慰めることがあります。


酒を飲まなくなって7年めになりました。


「必ず、断酒するぞ!」とか、必死に頑張って禁酒しているわけではありません。ただ、今は酒を飲んで酔ってしまいたくないだけです。


酒を飲んで酔うのも楽しいものですが、今は、酒に酔うことよりも、酒に酔ってしまっては味わえない楽しみの方を優先させています。


酒は買っても、飲むわけではなく、それを見て楽しむ、そういう楽しみ方を知りました。




2

彫り深き 分厚き玻瑠の 酒器に入る

琥珀色濃き 酒を眼で愛づ


ほりふかき ぶあつきはりの しゅきにいる

こはくいろこき さけをめでめづ







厚みのあるガラスに、ほどよくクリスタルカットされた、そのカットの彫りの深い瓶に入っている、深い琥珀色の洋酒を手にして、重みを確かめながら眺めるのは、飲んで味わうことと同じぐらいに楽しめるものです。


洋酒の瓶の一つひとつには、やはり、それぞれに独特の雰囲気と表情があるものです。


書棚の本にも、やはり、それぞれに独特の雰囲気と表情があります。


書棚の本と、雰囲気と表情のマッチする洋酒を選んで置き並べて、そのコラボレーションを楽しむ至福の時を知りました。


音楽と照明が、独りの楽しみを増幅してくれます。




3

世に疎き ことも仕合わせ 野に在りて

我が事のみを 独り楽しむ


よにうとき こともしあわせ のにありて

わがことのみを ひとりたのしむ



スマホという文明の利器は便利なもので、キーワードを入力して検索すると、たちどころに様々な事柄を知ることができます。


しかも、片手の手のひら操作で、そんな魔法のような世界を手にすることができます。


「洪水のような情報」という言葉が使われて久しいですが、現代人はまさに情報という熱射光線を浴び続けているようなものです。


情報の熱射光線を浴びて、なんでも知っているように思いがちですが、しかし、実はほとんど何も知らないに等しいようにも思われるのです。


「知らない」ことは恥ずかしいことと思われがちですが、しかし、場合によっては、知らないことは幸せなことでもあると思う昨今です。


ウイルスのようにはびこる情報を思い切って遮断することが、独り楽しむことに通じます。


あえて、世にうとくなる状況をつくり、自分自身のみに、我と我が身のみに沈潜する…、そのように独りだけで自分自身を楽しむ楽しみを楽しみましょう。


余計な雑音を入れないでくれ!


ドントレットミーダウンです!