県内お出かけ2020.4月 大井川鉄道の旅~不要不急の外出とは何か? | 透析なのにこんなの食っていいんかい?!

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人工透析を受ける不良中年の無謀な旅行記とグルメ日記

県内お出かけ2020.4月 

大井川鐵道の旅~不要不急の外出とは何か?

 

2020.4/5(日)、不要不急の外出自粛が強まる中、

大井川鐡道のSLに乗って、

川根の桜見物に出かけた。

目的地は、奥大井湖上駅である。

 

▼奥大井湖上駅

 

意外なことに、家人は「ゆるやかな鉄道ファン」である。

離れた土地に行くと、ふだんは見ないデザインの列車や

レトロな路面電車に異常な興味を示す。

 

彼女が乗ってみたいのは

ほんとうは「ななつぼし」とか「ロイヤルエキスプレス」などという列車らしいが、

わたしたちには分不相応だ。

遠くに出かけるのもはばかられる時期なので、

地元の「大井川鐡道」で、SLに乗って花見をする計画を立てた。

先週に続き、

安上がりに済ませようという魂胆である。

 

▼大井川鐡道ホームページ

http://oigawa-railway.co.jp/

 

「何ならトーマスでもいいのだが・・・。」

と尋ねたところ、

「子供じゃないんだから。」

だそうである。

しかし彼女の「乗り物好き」は

大人の趣味といえるレベルにはなく、

むしろ「うごくものがすき」という幼児の目線とほぼ同じである。

 

自宅からJR金谷駅まではおよそ40分、

金谷駅から大井川鐡道に乗り換える。 

 

大井川鐡道株式会社は

大正時代から森林輸送と電源開発のために運行されてきたが、

1976年、日本で初めてSLの動態保存を始め、

近年はトーマス号の運行なども行っていて

売り上げの9割が観光収入だという。

 

▼周辺地図。

大井川鐡道は金谷から井川までを結んでいる。

この辺りは以前は川根とか本川根と呼んでいたが、

自治体再編でさらにややこしくなった。

南の川根町は「島田市川根町」となり、

北部の本川根・中川根は合併して「川根本町」となった。

ちなみに、終点の井川は静岡市葵区である。

 

▼JR金谷駅に隣接する大井川鐡道の金谷駅

なお、駅舎の「大井川鉄道」は古い社名で、

今は「鐡道」の字を使っている。

 

ふつう、JRの駅に隣接する私鉄の駅は「新○○」と呼ばれることが多いが、

ここは単に「金谷駅」という。

「新金谷駅」はここから3分ほど離れた場所にある、

というのは初めて知った。

そして、大井川鐡道の売り物である「SL」や「トーマス」は

新金谷駅から出発する。

いずれも金谷駅乗り入れを模索していたらしいが、

資本が乏しくて実現しなかったらしい。

 

▼資本力が乏しそうな駅名表示

 

近年は名鉄グループの一員として経営改善を図って来たが、

2017年、「エクリプス日高」という北海道のホテル会社が買収した。

「日高」と聞いて私はラーメン屋が買収したのかと思ったが、

ホテルの再生などを手掛ける投資会社だそうだ。

その後、エクリプス日高は「天神屋」も買収した。

 

SLは、一応予約が必要だ。

普段なら花見の時期の日曜日には

なかなか予約が取れないらしい。

 

▼切符は今も硬券にハサミを入れて使う。

なお、切符はものすごーく高い。

金谷から千頭駅まで、39.5キロの区間が1,840円。

SL運賃は別途820円を要する。

JR東海であれば、静岡から金谷を越えて菊川までのキロ数が約42キロで

運賃が770円であることと比較すると、

目が回るほど高い。

身体障害者手帳さまさまなのだ。

 

▼金谷駅から新金谷駅までの一駅は

この電車で行く。

懐かしの近鉄特急用車両である。

 

▼この電車は千頭行きだから、

これに乗っていれば千頭まで行ける。

車内には、一眼レフを首から下げた20代の小太りの男性二人組が乗り合わせており、

彼らはこの電車で千頭まで行くらしい。

真のテッチャンとはそういうもので、

観光客用のSLなんぞには乗らないのだろうと推測する。

 

▼車内もいい感じに古い。

 

千頭駅では弁当を買う。

ところがここいらの駅弁は途方もなく高い。

作っているのは静岡の東海軒であるから

静岡駅と同じものを売ってくれればよいのに、

そうは問屋が卸さないようで、

大井川鐡道(株)存続のために

観光客は善意の出費が求められているのだ。

 

▼駅前の「プラザ・ロコ」は土産物などを売っている。

しかしこの界隈は悲しいかな、名物というものがない。

トーマスの玩具やらSL最中など、

そそらないモノたちが淋しそうに並んでいるだけである。

 

▼新金谷駅では現役のSLを何台か見ることができる。

転車台。

 

発車のしばらく前には入線するので、

多くの人が撮影する。

この日走るのは、C-10型という機関車だそうで、

日本に残るのはもうこの1台だけである。

 

接近してみると、かなりボロボロで、

こすると金属がはがれてきそうだ。

▼象の鼻と像の肌みたいな感じ。

 

機関室の中を見ることもできた。

石炭

 

▼車内は昔ながらの直立4人掛け。

大垣行きの夜行列車を思い出す。

 

▼この扇風機も懐かしい。

JNRとはJapanese National Railwaysの略で、

国鉄の英語称である。

 

 

▼高いけど、仕方なく買った「大井川ふるさと弁当」。

「SL絵葉書付き」だそうである。

絵葉書はいらないからその分値下げしてほしい。

コスパは極めてひどい。

また、弁当は概して塩分が高いので、

透析患者としては塩分表示が必要だ。

 

▼中身はこんなもの。

 

 

▼こちらは幕の内弁当だが、

同じくコスパは極めて低い。

 

 

こうした、さもないランチの場合、

家人の機嫌は悪くなるのが常であるが、

この日はずいぶんご機嫌だ。

その理由は、出発の際に

駅員さんをはじめ、多くの人々が手を振ってSLを見送ってくれることではないかと思われる。

家人は自分に手を振ってくれているのだと誤解しているようだ。

沿線は桜が満開で、

花見客らが私たちに手を振っている。

通りかかる駅のホームだけでなく、

公園にいる子供らや、

突如現れるスーパー銭湯の駐車場からも

私たちはにこやかに手を振ってもらった。

家人は、あたかも自分が皇室にでもなったかのような錯覚を覚えて

ご満悦の様子だ。

 

しかし、もちろん彼らは私たちに手を振っているのではなくて、

SLに手を振っているのである。

桜のトンネルを、煙を吐きながら

懐かしい蒸気機関車が走る姿は、

妄想するだけで美しい。

ところが乗っている私たちは

この姿を見ることができない。

なんとも無念である。

蒸気機関車というのは

乗るモノではなくて見るモノなのだろうと思われる。

 

ただ、

この列車は観光列車であるから

車内のアナウンスは一興だ。

特にこの車掌さんは、乗客と気兼ねなくお話しし、

観光ガイドも務めてくれる。

▼あっぱれな車掌さん。

 

▼千頭駅

 

▼C-10型機関車と、機関車やえもん

「機関車やえもん」は新しい電気機関車にバカにされて、

怒って走っていて火の粉を噴いたという。

右のやえもんさんも、似たようなものである。

 

千頭駅からはアプト式と呼ばれる電車の乗り換えて

奥大井湖上駅に向かう。

▼アプト式電車 開業60周年と生誕60年の図。

▼軌道が狭いので車内も狭い。

バスみたいだ。

 

アプト式はABT式と書く。

急な傾斜を走るために、

軌道のギザギザにギアをかませて走らせるものだ。

ドイツのアプトさんが考案したそうだ。

日本ではここだけだが、

スイスの山岳鉄道で、

私はむかーし、ブリークという町からツェルマットまで

自転車を積んで登ったことがある。

やはり、エラく高かった記憶がある。

 

全線でアプト式なのではなくて

ギアをかませるのはほんの一区間である。

▼アプト式機関車を連結する、いちしろ駅。

約100メートルの標高を

ガタゴト、ガタゴト登っていく。

 

▼長島ダムに向かう途中で。

 

長島ダムは、2001年に完成した国交省の新しいダムである。

てっきり電力会社の所有かと思っていたが、

治水用だそうだ。

 

▼奥大井湖上駅

ダムで水没した線路を復旧するため、

観光用に作ったのだそうだ。

 

展望台へは線路わきを渡っていく。

 

 

▼同じ電車で着いた人々が渡ってくる。

この日は極めて少ないが、

人が多いと渋滞するのだそうだ。

 

激しい階段が延々と続く。

この日は歩行者の渋滞なしで、登りきるのに25分ほどかかった。

途中で左右に道が分かれるが、

眺めのアングルが良いのは左方向である。

 

▼間違えて右方向に進んだ東屋からの眺め

 

▼疲れ果てた図

 

▼撮影ポイント

 

 

 

▼のどかな駅である。

 

▼1時間後、上りの電車がやって来た。さあ、帰ろう。

 

大井川鐡道のSLは

普段の日曜日は予約が取りづらく、

さらに花見や紅葉の時期などは、

団体客でほぼ満席で予約も取れないのだという。

いっぽうで、冬はサブいし、

夏にあの階段を上るのは御免だ。

というワケで、今しかない、つまり

不要不急でないと言い聞かせて遊びに出かけた。

 

だが山中伸弥教授はこう言う。

「桜は来年もまた咲くが、

人の命は帰らない。」

やっぱ、家にいるべきだったのだろうか?

 

何が不要不急かは自分で考え、自分で判断する。

その意味では興味深いウイルス騒動だと思う。

「勤め人は会社に行くものだ」

「子供は学校に行くものだ」

「営業は人に会うものだ」

そんな常識を疑えるのが面白い。

何が大切で、何は不要なのか、

何が優先され、どうでもいいことは何か?

極論すれば「命を守ろう」という呼びかけさえも疑ってみる価値はある。

 

もちろん他人に感染させてはいけないし、命を粗末に扱うべきではない。

しかし、長生きすることが美徳だなんて誰か決めたのだろうか。

 

この国がしていることだってあてにならない。

緊急事態だと言いながら、

自粛すべき業種を決められないでいたり、

人工呼吸器の増産要請を出す一方で、

参入障壁は残したままだ。

営業を自粛したら休業手当は支払うのか、支払わなくてよいのか

は、専門家も不明なのだという。

拡充した雇用調整助成金は

手続きに何十種類もの書類が必要で

給付までに二か月を要するという。

緊急事態・・・が聞いてあきれる。