コンピレーション・アルバムの20曲目は「魔法使いサリー」です。

 「魔法使いサリー」は、「鉄人28号」や「仮面の忍者赤影」の横山光輝原作の漫画のアニメ化で、1966年から68年までNET(現・テレビ朝日)系列で放送されました。アメリカのホームドラマ「奥様は魔女」に着想を得て、日本で初めての少女向けアニメとして制作されました。この番組の後続番組として制作された「秘密のアッコちゃん」をはじめとして、後に日本のアニメでの一大ジャンルを形成する魔女っ子ものの最初の作品です。プロットがしっかりしており、男の子が見ても楽しめ、また大人の鑑賞にもたえうる内容でした。

 主題歌の作詞は、番組の企画に携わり、サリーの呪文「マハリクマハリタ」もこの人が発案した飯島啓が山本清のペンネームで担当しています。作曲は、「狼少年ケン」を担当した小林亜星が担当し、当時、テレビ番組の主題曲やCMソングで毎日のようにテレビから歌声が流れていたスリー・グレイセスが歌っています。 

 放映当初、ソノシートとシングル盤がそれぞれ朝日ソノラマとコロムビアから発売されましたが、スリー・グレイセスが当時キングレコードの専属だったため、コロムビアのシングル盤はダイヤモンド・シスターズによるカバー・バージョンで、テレビのオリジナル音源のスリー・グレイセス版は朝日ソノラマのみでした。コンピレーション・アルバムではスリー・グレイセス版を収録しています。

 ジャケットのアートワークも、朝日ソノラマ版はテレビ版のデザインが使われているのに対して、コロムビア版では横山光輝の原作漫画のデザインが使われています。

  

 小林亜星は主題歌だけでなく、音楽全般を担当しており、クラシック調からディキシーランド・ジャズ、ゴーゴー・ロック調まで多彩な曲調で非常に音楽性の高い作品になっています。

 サントラ・アルバム発売の要望はLP時代から多かったのですが、単独での発売はなく、CDの時代になってやっと企画されたものの、発売直前に著作権上の問題が発生したようで発売中止になりました。

 CDで聴けるのは、様々なオムニバス・アルバムに収録された主題歌と2003年に発売された小林亜星のアニメ・ソング・アンソロジーに収録された4曲の挿入歌だけでしたが、やっと2012年になって、ソリッド・レコードによってアニメ・ミュージック・カプセル・シリーズの一環として2枚組CDが発売されました。このCDは完全版CDと銘打たれているものの、番組で使用された音楽を完全に収録しているわけではなく、重要な曲がいくつも抜けていますが、なんとか音楽の全貌がつかめるようになっただけでもよしとしなければなりません。