「年に20%増えると言われ3000万円を…」その5

 A氏は2015年の8月、銀座の貸し会議室での投資セミナーに講師として登場したX子とY子の様子をこう語るという。

「参加者は私を含めて5人で、このうち4人は同じ航空会社の関係者でした。X子は派手なビジネスカジュアル、Yは地味目のスカートスーツと対照的な出で立ちでしたが、雰囲気や所作はCAらしい洗練されたものでした。『早期退職でもらったお金を含めて2000~3000万円くらい投資すれば、年に20%の利回りがつく。退職金を減らすことなく生活できます』という夢のような説明を受けました」という。身なりも良くいかにも信頼できる様子で甘い話をするのが詐欺の基本だ。

3000万円を入金したが、1円も返ってきていないという。詐欺の場合、少し戻ってくることはないなあ。

 年に20%という利益は現実離れして聞こえるが、A氏は2人のことを信じてしまったという。1000万円預ければ、1年に200万円も配当があるわけである、破格の配当だ。非常に魅力的だがあまりに怪しい利益率だろう。

「恥ずかしながら、やはりY子の社内での知名度と信用度、そしてセミナーでの堂々とした立ち振る舞いを信じ切ってしまいました。まさか自分と同じ会社の元CAが投資詐欺をするなんて考えもしなかったのも事実です。Y子は『自分も投資している』とパソコンで自身の運用画面を見せてきたんです。800万円程度だったように記憶しています。ただ今思えば、本人たちも後ろめたいところがあったのか、紙の資料などは一切配付されませんでした」という。
 

 

 

 安全でないものを安全といったら詐欺になるのではないだろうか。それは、特殊詐欺より悪質な詐欺だろう。

 その一つに、腹腔鏡手術やカテーテル検査や手術がある。どちらも、先進的な手術の方法で画期的なものとされていることだ。

 大きく体を切り開く外科手術と違って体に負担が少なくて、費用も安く、危険性も少ない、、、そういうことを自慢にしている。

 だが、ドクターXが外科手術の方が安全と主張するように、それらはどうも怪しげだ。どちらも、患部を実際に見ることができず、遠隔操作のようになるからだ。熟練の必要があるということもあまり説明されていないで簡単な施術のように言われている。

 いずれも、同意書を求めるわけだが、そんなもの見ても患者や家族にはなんのことかまるで分からない。病気に詳しい人なんていないのだから。となれば、同意書は訳の分からない言葉ばかり並べていないで死亡率や後遺症の発現率を書けば良いと思う。さらに、実現は無理だろうけど、「今まで10人手術して5人亡くなりました」の方がよっぽどよく分かる。カテーテルならカテーテルでない火を破ったり傷つけたりするおそれがあると書けばよいのだ。まあ、そう書いてあっても受ける人は受けるだろうが、よく考える人は多いだろう。

 もてはやされていた腹腔鏡手術が危険なことは今はかなり知られているようだ。昔人気のあったドクターKでは画期的な手術法ということになっていたが。

 胸を開かずに検査や手術ができるカテーテル検査や手術も、細い血管の中を鋭い針のようなものが通っていくわけで、それが血管を傷つける可能性があるわけだ。安全などというものとはほど遠いものだ。途中の血管ならともかく、心臓の冠動脈を傷つけたり突き破ったら大変なことになる。同室の患者で冠動脈を突き破られた人は、私が入院中ICUから帰ってこなかった。

 冠動脈の内皮を傷つけるだけでも、重い心臓障害者になってしまう。自分ばかりか家族の人生も奪われてしまう。だが、そういう危険性は同意書には書かれていない。

 だから、慣れていても決して簡単な安全なものではなく、まして、地方都市の総合病院で未熟な若い医師が練習がてらやったこともない手術や検査をするというのは考えると恐ろしい話だ。若い医師がさらに若い医師と組んでやったこともない手術や検査を熟練した医師の指導もなく行う、それが当たり前に行われる病院もあるのだから、怖い話だ。さらに、外から見えないから隠蔽が簡単というのも怖い話だ。


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