蛇ヶ谷(房総の民話)千葉県いすみ市岩船No1949 | 房総ENJOY-LIFE、

蛇ヶ谷(房総の民話)千葉県いすみ市岩船No1949

No1949


いすみ市の釣師海岸や岩船地蔵尊へ向う途中に


ひょうたん池(正式名称はひょうたん堰)と言われる池があります!



そこに『蛇ヶ谷』と呼ばれている所があります!


今回はその『蛇ヶ谷』のお話です!



『蛇ヶ谷』


昔むかしの話です!


ひょうたん池の辺りは山に囲まれて昼でも薄暗く淋しい場所です! 


日が当たらないせいか、この辺りは冷たくて

美味しい水が湧き出ていました!


その為いつの時代からかわかりませんが

井戸が掘られ、幾つもの古い井戸がありました!


井戸の水はいつも綺麗に澄んでいて、井戸の底が見える程でした!


これらの井戸の底はどれも全部つながっていて

やがて滝となって海に流れ込んでいました!


井戸は野良仕事のお百姓さんの喉を潤していました!



ことに夏の暑い時には、事のほか喜ばれていました!


しかしお盆の3日間はこの水は呑んではいけないと言われていました!


その為、人々はお盆の3日間は野良仕事を休むのが慣わしだったそうです!


何故なら、この3日間には銚子のゲンバと言う醤油屋から


大蛇が人間のすがたに返信して、この井戸に来ると言われているからなのです!


不思議な事に大蛇がこの地を訪れると

銚子の醤油の出来が良いと言われていました!


銚子の醤油は銚子の人達だけでなく千葉はもちろん全国の人達が世話になっていました!


その為 人は銚子の大蛇が今年も訪ねて来るようにと


この時期になると、米五合を古井戸に供えるならわしがありました!


大蛇もこれを喜んでたいらげていたそうです!



ある年の事です、与三郎と言う若者がこの谷に藤蔓(ふじつる)を取りにやって来ました!


夏の太陽がジリジリと照りつける暑い日の事でした!


歩くだけで額にも背中にも汗がダラダラ流れて来ました!


そんな暑い夏でも両側から山のせまった、この谷に入ると


太陽はさえぎられ涼しい心地良い風が吹いて来た!


『生き返ったようだ!』『気持ち良い事!』


腰の手抜きを取って額の汗を拭きながら藤蔓をさがしました!


あっちの山、こっちの山と辺りを見上げながら歩くのです!


『おお、藤蔓だ…あの藤蔓かいい!』


与三郎は独り言を言いながら草木をかき分けながら山の斜面を登っていきました!


山から下を見ると井戸がキラキラ光ってみえます!


耳をすますと小鳥の声にまじってコトコトと水の湧く音がしました!


与三郎は思わずゴクリと喉をならした!


山の上からしばらくの間キラキラ光る井戸に見とれていましたが


やがて腰から屶(ナタ)を抜いて、コーンコーンコーンと藤蔓を切りました!


切り終わるとクルクル巻いて、肩にかけて山の斜面を降りていった!


そしてコトコトと湧いている井戸に走った!



井戸は規則正しく階段が井戸の底に続いていました!


与三郎はひんやりする階段を降りていった!


『あゝうまいうまい 生きかえったようだ!』 


井戸の水はずっと奥まで続いていて、

所々 陽の光が差し込んでいた!


階段も続いていました!


誰がこんな階段を造ったのだろうと思いながら光る階段を登って地上に出てきた!


家に帰った与三郎はその話を家族にしました!


『お盆にひょうたん池の井戸水を呑んだが

病気なんかしないよ…

それに井戸には規則正しく階段があったよ…うまかった!』


『なに!水をのんだとな!?』(ノ゚0゚)ノ~


『光る会談もあったよ!』


『馬鹿、それは階段じゃない…蛇だ…大蛇のウロコだァ〜!』(/◎o◎)/


『へ、へ、蛇のウロコだと!?』(ʘᗩʘ’)



与三郎は怖くなってワナワナ震えだしました!


しかし一方『でも、なんともないよ、この通りなんともないよ!』…と 


ふるえながらも強がって平気な顔をしてみせた!


処が恐ろしいのは三日たった朝だった!


与三郎は高い熱に苦しめられ、吐気をもようし寝込んでしまった!


皆んな口々に

『お盆に蛇ヶ谷の水を飲んだからだ』


『大蛇のウロコを階段と間違え登ったからだ、バチがあたったんだ!』…と噂した


命を取り留めた与三郎はその後、すっかりおとなしくなってしまったと言う事でした!

終わり


齋藤弥四郎著


お付き合いいただき誠にありがとうございました!m(_ _)m