時の流れとは無情なもので、永遠に続いてくれるのではと錯覚するほどに長かった夏休みもきっちりと終焉を迎えるようにできている。


 登校日。大学ラストシーズンの幕開けである。


 怠惰な生活に慣れきった僕の体が果たして学校に向かう事を許容してくれるだろうかという、前日の一抹の不安を一蹴するかのように僕の心の中は『学校に行く』。その明確な理由無き不思議な使命感に満ち満ちていた。


 そして意気揚々と家を出たその数分後。


 僕は事故った。


 急ブレーキをかけた前の車。追突を避ける為、僕もブレーキをかける。


 しかし雨天時の路面は濡れて摩擦力が著しく低下している最悪のコンディション。


 僕の原付のタイヤは地面を掴みきる事あたわず、そのまま左方に転倒。


 残念ながら自損である。


 前の車の人も降りてきて救急車を呼ぼうと声を掛けてきたが、絶対に救急車には乗りたくないという虚栄心の壁が立ち塞がる。


 立ち上がる僕。
 大丈夫、歩ける。

 原付を起こす。
 大丈夫、走れる。


 再び僕は原付に跨がり走りだした。病院へ向かって。


 血まみれになった原付で、肘辺りから止めどなく溢れ出る血液を撒き散らしながら病院を目指す姿はさながら、豆かなにかを落としてマーキングしながら山道を進む物語のようであった。


 病院に着くと、急な訪問にも関わらず看護師さん達が止血してくれ、診察室に案内してくれた。


 受付を血塗れにしてしまい申し訳ない気持ちになった。


 診察室のイケメンすぎる眼鏡医師曰く肘辺りの肉が抉れていたものの奇跡的に骨折はしていないらしく、数針縫うだけの軽傷で済んだ。


 最後のschool daysが始まると思いきや、とんだtuuin daysの幕開けである。


 神は僕が学校に行く事を許してはくれないのだろうか…


「ただの不注意だろ」と言われたらなんも言えねぇー笑


『廃人ロード』

廃人ロード
この道ー ずっとー
ゆけばー 引きニーにー
続いてるー 気がするー
廃人ロード♪


 この曲はポケモントレーナー界において知らぬ者はいない、廃人ロードこと※3番道路を左右し続ける者を描いたナンバーである。


 ※3番道路 ポケモン育て屋さんの前の道路。卵が産まれると、爺さんが呼び止めて教えてくれる。走り回れと言わんとばかりに直線に整備された道。


 かくいう僕もその道を何万往復した事であろうか?時に昼食を食みながら。時にニュースから伝えられる社会情勢に憂いを覚えながら。時にニコ動の対戦動画を視聴しながら。


 少しでも高個体値を目指す者にとって3番道路は避けては通れぬ修羅の道。個体値1の妥協が対戦において敗因になる事もあるからだ。


 とまぁ偉そうに語るほどの超厳選はしていない僕ではあるが、今年の夏は孵化工場と化していた。


 キュウコン、ジャローダ、ドータクン、ユキノオー、アギルダー、ポリゴンZ、コジョンド、ブラッキー、アバゴーラ、ゴルーグ、エルフーン、ハガネール、ウインディ、ロトム、グレイシア、ブルンゲル、リーフィア、ドレディア、オノノクス、バクフーン、シャンデラ、デンチュラ、ズルズキン、ドンカラス、エンペルト、ギャラドス、ナットレイ、エモンガ、ペンドラー…


 この夏彼らを一流の戦力にするために、3番道路を孵化走行した距離を現実換算したら、日本半周分くらいに値するのではないだろうか。


 そう考えたら意外とアグレッシブな夏休みであったような気がしないでもない。


 不覚にも萌えてしまった話を一つ。


 バイト先の女子との一幕。


「今度ポケモソ買う予定なんですけど、○○さん(僕)はどっち持ってるんですか?」


「ホワイトだよ」


「じゃあ私ブラック買いますねっ!」


 君に、胸キュン… キュン!!


 となってしまった僕の萌えのツボは案外浅いのかもしれない。


 ポケモンといえば少し前ピカチュウそっくりのゆるキャラのニュースをちらりと見たけど、あれは酷かった。


 体のフォルムもさることながら、顔面トリミングしたら完全にピカチュウのそれだったもの。