9/16西日本新聞「西日本読者文芸」
★蜜豆や使い込んだる銀の匙 朝倉 深町 明
★バタフライして見せる子や夏休み 福岡早 出雲一夫
★熱き日やガザの瓦礫の小さき靴 八女 吉泉恒德
★忘れ物探す旅路や原爆忌 福岡西 重石活郎
★落日の欠片となりて鰡跳ねる 佐世保 牛飼瑞栄
★父母我を撫でし気配や霊迎 伊万里 萩原豊彦
◎俳句 星野椿選
★老いて直生きねばならぬほととぎす 伊万里 田中秋子
★あの人もこの人も逝き天の川 福岡東 堀江昭子
★送り火の消えたる闇にひとり佇つ 大野城 荒木信夫
★背筋伸ぶ糊のききたる浴衣かな 太宰府 福永惠美
★葭簾部屋のなかにも風の道 福岡中 西村英俊
★弟も父母のところへ盆の月 篠栗 久保田紀子
★輪も大き村の総出の盆踊 福岡南 鎌田秀徳
★穴子焼く反りを押さふる鍋の蓋 糸島 上野純子
★台風が近づき軋む舫綱 福津 藤吉靖信
★茜さす空の果てなる終戦日 飯塚 野見山洋子
◎短歌 伊藤一彦選
★壇ノ浦に沈みし平家の公達も目覚むるばかり花火の音は 八幡西 古賀恵美子
★ 「お先に」と声かけ夫の仏前に畳み直しし新聞を置く 糸島 瀬戸口真澄
★進化した洗たく機にも勝るのは小物を洗う私の手 福岡南 内田英子
★戦争で息子二人が空に散り祖母何思い暮らしていたか 朝倉 北原妙子
★ほどほどと言ふは難し草を取る背を伸ばして又しやがみ込む 小郡 中島俱子
★牧水の歌で一番は「白鳥は哀しからずや・・・」空見上ぐ 平戸 豊里ちえ子
★「遅咲き」の一手を持ちて古希過ぎぬ座右の銘はネバーギブアップ 福岡城 藤本きひろ
◎短歌 栗木京子選
★亡き夫と「愛の讃歌」聴きし夜のよみがへりたりパリオリンピック 福岡西 浦 淑子
【評より】パリ五輪の開幕式でセリーヌ・ディオンが「愛の讃歌」を唄った。
★友の友その友と友賑やかに月下美人の咲く夜の家 福岡早 佐々木謙介
★認知症千々に乱れゆくそのそばに寄りそうことも苦行なりけり 福岡城 秋好智恵子
★ふたり子にひとつの桃を切り分けて芯の周りを齧りし日あり 福岡早 市川登美榮
★早早と盆提灯に灯を点しこの地に不慣れな夫を迎える 大野城 荒木洋子
★何故浮くか地球の重さ聞いてみよう衛星が答えてくれるだろう 小倉南 添田 修
★新聞をひもでくくりて高く積み楽しくなりぬ廊下の隅に
諫早 藤林東容
◎川柳 森中惠美子選
★老老の親子で祝う敬老日 粕屋 案浦信子
★無事に起き無事に寝られる有り難さ 福岡早 出雲一夫
★人生のしずけき時間金魚飼う 筑紫野 横山美惠子