7/27西日本新聞「ながさき読者文芸」
◎歌壇 安田博行選
★限界の次は消滅に変わりてもふるさとは残るいつまでも残る 壱岐 下条憲廣
★古里の小高き丘の忠魂碑欠けゆく父の名前をなぞる 佐世保 松崎伸苑
【評】忠魂碑が建てられてから七十年以上経っているのでしょうか。若くして戦死なされたお父様を偲んでいます。
★命日の亡母は千の風となり墓所への径のおにゆり揺らす 諫早 平松 茂
★里芋の葉の夜露にて墨をすり願ひごと書く短冊十枚 壱岐 町田典子
★手をつなぎ歩く幼の影のびていつか離れてゆく日を思う 諫早 花岡壽子
★ご主人の研ぎ癖残す研ぎ石の梅雨寒に濡れ廃屋の庭 佐世保 鶴田竹一
◎俳句 籏先四十三選
★夏草の茂みの中の開墾碑 佐世保 小山雅義
★行商の女の背負う大夕焼 佐世保 松尾和子
【評より】売れ残りがあったのであろうか、背中への夕焼けが哀愁をさそう。
★夏至の空映して瀬戸の潮止まる 佐世保 相川正敏
★枝切りて心地よき風夏座敷 島原 野田耕起
★遠雷に海の彼方の人思ふ 南島原 田中よしみ
★卒寿にも見立てよきかな夏帽子 佐世保 川原田安子
★ニライカナイ海の彼方の日雷 佐世保 森 誠
※「ニライカナイ」=沖縄や奄美群島で,遠い海のかなたにあると信じられていた楽土。常世(とこよ)。現世と往来できる所とされ、火や稲をはじめ島人の祖先もここから渡来したとされていた。
★仕舞湯を済ませ暫しの端居かな 島原 坂本優美子
★陶工の声なき声の風鈴よ 松浦 舩原清洋
◎諧句 松下冨士子選
★祖父の蓑使って梅雨の農作業 南島原 板山良継
★雨上がり命輝く若葉たち 南島原 末吉貴浩
★夏休み孫の来日待ちわびる 島原 山口 洋
★傘寿過ぎ気は少年のクラス会 大村 野田昌治
★さえずりの鳥から拾う電子辞書 佐世保 松崎伸苑
★人生はドラマ笑って終わらねば 佐世保 鶴田竹一