◎俳壇 吉岡乱水選
★ミッションの女子大の坂落し文 長崎 吉田志津子
(評)キリスト教に基づく女子大へ続く坂道に落とし文。何か意味ありげで楽しい雰囲気をはらむ。
★蘇る瓦礫の能登の鯉のぼり 南島原 松永文則
(評)地震・津波・雪の惨劇からの回復。それは作者の願いでもある。こいのぼりに希望が見えて。
★元寇船寄せ来し沖や烏賊火燃ゆ 佐世保 相川正敏
★茅の輪潜りて新しき風と会ふ 長崎 伊藤ひとみ
★尺蠖の測る仏の手の広さ 長崎 高谷忠昭
★学舎に朝のコーラス若葉風 長崎 辻 耕平
★戦争の爪痕深し慰霊の日 長与 清田俊二
※「慰霊の日」が季語、「沖縄忌」の傍題。「沖縄忌」は6月23日、沖縄の人民が多く亡くなり日本軍が壊滅した昭和20年のこの日を沖縄県は「慰霊の日」と定めた。
★スケジュール書いて忘れて夕涼み 佐世保 松山茂則
★五月雨や傘に埋もるる三歳児 諫早 安浪加余子
★浦ペーロン酒樽担ぐ女たち 長崎 成瀬至楽
★媼一人休み休みの袋掛 雲仙 西田豊子
★ミャンマーを愛せし父の籐寝椅子 大村 福谷健吉
★芽掻きする小さき枝にトマトの香 諫早 中島こゆき
※茎と葉の付け根から出てきたわき芽をそのままにしておくと一つひとつの実が大きく生長しない。そのために余分なわき芽を取り除く。この作業を「芽掻き」と言う。
【選者吟】ビル街を根城に磯鵯巣組む
◎歌壇 馬場昭徳選
★現状維持出来てる今の有難度し夫の形見の杖にて歩く 佐々 敦賀節子
★六月もXが続いた出席簿常時二人がいない教室 長崎 中小路和久
★とりあえず夏の灼熱見せておき明けて大地を叩く土砂降り 長崎 志方雅一
★小屋入りに揃いのシャツを孫は着て不安を背なに打つ大太鼓 時津 浦川敏子
★箪笥より出てきた手拭友の名の平成十九年八幡町根曳 雲仙 酒井良美
★オキナワはあまりに哀し六月二十三日今日は霰そして雨が降っている 佐世保 谷頭正仁
★姉らしき事してきしやと顧みる弟よりの茨城メロン 長崎 渡辺英子
★プランタのピーマン花付け実もたわわ「成績良し」と友は見て行く 諫早 野田明美
【選者詠】わがなししことなきボランティアをなす人らの頬に降る能登の雨
◎柳壇 瀬戸波紋選 題「仲直り」