7/7朝日俳壇・歌壇。

◎長谷川櫂選

★青々と氷河の動く夏来る(小城市)福地子道

★蟻地獄ちから渦巻くくにざかひ(福島県伊達市)佐藤 茂

 【評】国と国がぶつかり合う国境。蟻地獄ならぬ人間の地獄。

★空爆のなき空涼し星あそぶ(東京都杉並区)漆川 夕

★海中に真珠の寝息南吹く(千葉市)丸本雄三 

★大阪の河の匂ひに梅雨兆す(橿原市)上田義明

★幻の翼広げて昼寝の子(八王子市)額田浩文


◎大串章選

★祝白寿卒寿傘寿の昼ビール(川崎市)神村謙二 

★島の子の水着のままの行き帰り(大阪市)今井文雄 

★出会ふ人皆に会釈や花野行く(洲本市)高田菲路

★夏薊江戸へ十里の古道標(柏市)藤嶋 務

★緑風や未来へと押す乳母車(前橋市)山本和裕


◎高山れおな選

★周期ゼミ素数の門をいくつ過ぐ(越谷市)新井高四郎

 【評】2種の素数蝉が221年ぶりに同時発生。「素数の門」が自然の神秘を思わせる。

 ※周期ゼミとは、毎世代正確に17年または13年で成虫になり大量発生するセミ。

★炎帝の義足しずかに立ち上がる (東京都新宿区)各務雅憲

 【評より】炎天下に義足の人がいる事実。「炎帝の義足」という縮約表現。

★七夕や千々に乱るる東京都(東京都練馬区)吉竹 純 

 【評より】千々=知事の懸詞に一笑。

★頑丈なアキレス腱や山車廻す(匝瑳市)椎名貴寿 


◎小林貴子選

★父の日とことさら言わず娘来る(取手市)緑川 智 

◎馬場あき子選

★被災後のふるさとの海解禁日に二時間休まず栄螺採る海士(あま)(石川県)瀧上裕幸

★じゃが芋は捨てた皮から芽を出してぐんぐん育つ侮るなかれ(菊池市)神谷紀美子

☆ウクライナの平和を願ふメッセージカード受けたり無言館出口(鹿嶋市)大熊佳世子

 ※高野公彦共選。 

★一キロ先の宅地に熊の出没し二十年経つ柿の木を切る(五所川原市)戸沢大二郎 

★怪我せぬよう牛の角突き引き分けに山古志に残る知恵と慈悲かな(小金井市)神蔵 勇

★川面低くぶんぶんしてるトンボをはね上がり食う鯉梅雨来たりたり(埼玉県)濱島宗雄

★酔っぱらい電話をかけてくる人と宇宙旅行の約束をする(富山市)松田梨子

★授業中こそこそと読む小説に「狐鼠々々」とありて思わず感嘆(壱岐市)内山圭三 

★生傷の絶えない吾子の大切な蟷螂の卵が朝に孵化せし(海老名市)加藤雄三


◎佐佐木幸綱選

★物故者に私の名前挟まれて同窓会の名簿が届く(名古屋市)井上隆夫

 【評】感傷を排除して事実だけを表現してうまい。

★さみどりの嬉野新茶をこころこめ淹れてすすめる嬉野の友(嘉麻市)野見山弘子

★水張田におさんぽの園児ら映り行く大泣きの子も手を引かれつつ (藤枝市)永野紀子

★雨上がり大島利島うっすらと見え始めたり伊豆の湯の宿(東京都)村上ちえ子

★初夏に田靴を借りて子に持たす千枚田には水満ちており(高知県)原 真由美


◎高野公彦選

★SLの動態保存さながらにわれは歩いて健康維持す(横浜市)島巡陽一

★朝刊をたっぷり二時間読み尽くしコーヒーニ杯、定年万歳 (岡山市)伊藤次郎

★甘い物今日でやめると母が言う和菓子の鮎を2尾平らげて(富山市)松田わこ

★屋根裏に椋鳥の巣あれど雛の声聞こゆるうちは穴を塞がず(五所川原市)戸沢大二郎

★大谷のグローブを使い校長とキャッチボールしたと小二の孫いう(亀岡市)俣野右内

★ピンポンと鳴らして去りぬ隣人は手作り野菜無造作に置いて(福島県)北村ミヨ


◎永田和宏選

★見舞ひとは思ひ立つ時すべきこと友の遺影に遅きを詫びる(仙台市)堺 武男

★見えずとも月の形を知るようにあなたを見つめる母でありたい(大津市)萩原 愛

★要するに手玉に取られていたとしてもだ亡妻の代わりは居ないってこと(仙台市)二瓶 真

★教室の最後に電気消す役の「電気係」なる小一の孫(東京都)岡 純

★常連の顔を覚えて常連になってしまった高齢者カフェ(香芝市)新熊早苗


◎「うたをよむ」夏目漱石の俳句

※「うたをよむ」は後日、読みやすいようにしてまた投稿致します。


◎「風信」