7/7NHK短歌。年間テーマ「“私”に出会おう」、今回のテーマは「省略という飛躍」。選者は川野里子さん、レギュラーは内藤秀一郎さんと深尾あむさん(2年目)、司会はヒコロヒーさん。

◎飛躍の扉  省略

例)文章➝短歌

   ↓

★アフリカに吸ひつきてゐし蛸の足噛みをりつひにアフリカを知らず  川野里子『ウォーターリリー』

例)短歌

★「それは灰」と誰かが言へば骨ひろふ箸の先にて祖母くづれたり  梅内美華子『夏羽』

    ※「祖母の遺灰がくづれたり」とすれば説明がつくが、歌としての飛躍、衝撃力に欠ける。


例)短歌

★そうですかきれいでしたかわたくしは小鳥を売ってくらしています  東 直子『春原さんのリコーダー』

    ※省略されたところに読者がいろんなイメージを広げることが出来る。


◎入選6首 テーマ「屋上」

★屋上に大の字に寝て君だけのヘリポートでいる好きに生きなよ  福岡県福岡市 つきこ

★屋上にゼラニウム咲くそのしたで数千億円が動くTOKYO  大阪府吹田市 だいだい

★屋上のつめたい柵を握るとき眠る悍馬の手綱を思う  大阪府豊中市 葉村 直

★屋上で唸る室外機のような不器用すぎる君の全力  神奈川県横浜市太田知那

★しょうもない幽霊のよう誰そ彼(たそがれ)の屋上と空のあいだにいつも  東京都武蔵野市 寺尾賢人

★一点を見上げ待つ医師屋上に赤き命のヘリが近づく  埼玉県さいたま市 間 由美

    ↑ 特選一席。


入選歌及び佳作は「NHK短歌テキスト」9月号に掲載されます。次回、川野里子さんへの投稿↓

◎秀一郎、あむの飛躍のカギ

★閉ざされたままの屋上閉ざされた私の心立入禁止  深尾あむ

    《「閉ざされた私の心立入禁止」のところ、わくわくポイン、いいところ》(川野さん) さらに添削するとしたら↓

▼閉ざされたままの屋上閉ざされて私の心は立入禁止

★屋上ドキドキするよねその頃の自分に言いたいたくさん浸りな  内藤秀一郎

    《パーフェクト》(川野さん)


◎どんな風に省略すれば物語が生まれるか。

★春風に揺れる橋越え行く人の背中に花の香りが残る

あむ)「背中に」↓

▲春風に揺れる橋越え行く人に花の香りが残る……


秀一郎)「越え」「行く」↓

▲春風に揺れている橋あの人の背中に花の香りが残る


◎「ことばのバトン」はこれまでの総ざらいでした。

何度でも「はじめまして」を言いたくて➝しばし眠って春を待ちます➝暖かな風とスカートたわむれて➝エグい花粉も聴こえない庭➝ほこり立つ突風に散る梅の花➝毒をはぐくむ桜木の陰➝舌のうえ炭酸の味うすれつつ➝胸が背中がどこまでも向く➝工場の煙が遠く立ち上る➝空のあなたはどうしてますか➝愛しぬく想いを継いで歌詞にする➝野原が花で満ちてくように

◎再放送は、7/11(木)午後2:10〜2:35。