7/1読売俳壇。

(矢島渚男選)

★くださいの会釈覚えし小鹿かな 木津川市 島野秀子

★神主も波に揺られる海開き 対馬市 神宮斉之

★地の底へ引き摺られそう牛蛙 洲本市 石谷晴彦 

★星野富弘逝く母の日の二週前 桐生市 志村 猛

 ※星野富弘さんが亡くなったんですね。4月28日。ご冥福をお祈り致します。星野富弘さんについては↓をどうぞ。

◎星野富弘さんの「花の詩画展」に行って来ました。

https://ameblo.jp/kawaokaameba/entry-12764077707.html

★国引きの風土記の浜の松露掻く 出雲市 石川寿樹

 ※松露(しょうろ)は傘や柄を持たない“球体”のきのこ。主に海岸沿いの砂地や山地のクロマツ林に発生する。「松露掻く」は春の季語。

★樹木医の厳しき断や五月闇 柏市 川浪 勉

★しゃぼん玉競ふベランダ同士かな 宝塚市 広田祝世

(高野ムツオ選)

★まくなぎの引つ張りあつて群れにけり 常総市 秋田 武

 【評より】ヌカカという小さい蚊が一かたまりになって飛んでいるのがまくなぎ。上下にひっきりなしに動くさまをエネルギッシュに表現した。

★桜島を眼下に征けり雲の峰 川越市 益子さとし 

 【評より】知覧から飛び立った特攻隊員の視点からの表現。

★プール出て灼くる地球に戻りけり 北本市 萩原行博 

★万緑と言へど覆へぬ地震の跡 町田市 谷川 治

(正木ゆう子選)

★さくらんぼ今日は一粒万倍日 山武市 川島 隆

    【評】一粒万倍日とは、一粒の籾が万倍の稲穂になるという、物事を始めるのに良い日。取り合わせた季語が愉快。高価なさくらんぼが万倍になると思うと、想像するだけで幸せ。

★手貸してと言はぬばかりの瓜のひげ 柏市 小畑昌司

★寝室にブラジル全図夏に入る 川崎市 竪山道助         

    【評より】寝室にブラ ジル全図とは意表を突く。何か縁があるのか、旅の予定でもあるのか。

★朝寝して妻に起こされこれも夢 高松市 島田章平

★幼子に夢見る力梅実る 横浜市 佐藤 満

★田一枚植えて故里後にせり 東大阪市 土屋鉄男

(小澤實選)

★バルト海列車を載せて船涼し 香芝市 山本合一

★野良猫に煮干しやってるあつぱつぱ 三重県 瀬川令子

★豚運ぶトラック行きて青嵐 相模原市 はやし 央 

★押されるも押すも白靴車椅子 八戸市 夏野あゆね

★誕生日さうだ干しあご焼いてくれ 川口市 高橋まさお


◎以下、歌壇。

(小池光選)

★おっかよりむすめの方が厳しくて鼻水垂らせば サッとティッシュが 福島市 富山貞治

(栗木京子選)

★玉ネギの皮を煮出してハンカチの絹のひかりへ色をみちびく 八王子市 小柳清治 

    【評より】天然の植物染料を用いる草木染め。玉ネギの皮に含まれるケルセチンによって絹の布が染まる。

★勧められ独り入りにし終の地の店の先づ消え駅も無人に 青森県 田口昭子

(俵万智選)

★火を止めず進路の話を聞く母が茹ですぎているスナップエンドウ 大阪市 小川美帆

(黒瀬珂瀾選)

★樺太の冬期必須の仕事なり凍てし便槽の解凍作業 船橋市 中村 誠 

    【評より】大戦時、樺太の軍務にいた作者。 

★おかえりと言う人のなきふるさとはどこもかし こも地震にひしゃげて 白山市 酒谷百合子

★スーパーで口喧嘩する老い夫婦を寡夫歴二年は羨(とも)しく見たり 足利市 茂呂田 誠 

★君の娘が頑固親父とやさしげに弔辞に述べてわれ頷きぬ 阿久根市 松永太一 

★ルーペ手に文字を読むとき亡き母の仕草のようなしずかな時空 日立市 佐川ヒサ